天才女高生「光より速きモノは神光」と定義する

文字数 1,238文字

第七話 天才女高生、神の光を指摘する 
 境内に蝉しぐれが降り注ぐ頃に津島彩花はやって来た。この日、清人は神社本庁に出掛けて陽菜が独り社務所に残っていた。
「先生、来ちゃいました」
 彩花は屈託のない笑顔を見せた。白いハーフパンツにピンクの半袖Tシャツ。柳髪は流行の切りっ放しボブに替わっていた。陽菜は紺のキャミソールワンピに白の長袖ロングシャツ。手土産に狭山茶の新茶を受け取った。   
 陽菜はひと通り境内と隣接する不老川を見せて歩いた。祀られている神さんの説明もし最後に本殿前に。二礼二拍手の拝礼作法を教える。最後におみくじも引いてもらう。
 厳しい陽射し避けて不老川沿いの木陰のベンチに座った。
「あれぇ、小吉だぁ~」
 彩花は残念がった。
「どれどれ、恋愛運は(北に出会いあり)だってさ」
「北かぁ、北海道には素敵な出逢いがあるのかなぁ」
 彩花は満更でもなさそう。白く透き通るようなうなじが妙に艶めかしい。
「学業は(精進してやがて華開く)だって。全国高校科学アカデミーは来週だよね。準備は順調かな?」
「はい、パワポ論文は完成しています。ここにあります。そのことでちょっと相談があるんですが……」
 彩花はノーパソの入ったバッグにおみくじを小さくたたんで仕舞った。
「実は{rayα}のことなんですが…(神光)と定義してしてしまって良いでしょうか? 」
「え、ジンコウ? 」
 陽菜はすぐには呑み込めず言葉を繰り返した。
「あ、(神の光)のことです」
 彩花は本殿を指さした。
「どうせ信じて貰えないなら曖昧な{rayα}よりは仮説定義で押し通そうと思って」
 陽菜は彩花の意図が理解できない。
「でもどうして神光が出てきたの? 」
「はい、光より早いモノはこの世には存在しません。だったら神の世界のモノかなと」

 陽菜は愕然とした。今まで一度も考えても見なかった。神主の妻なのに。と同時に若者の発想の柔軟性に舌を巻いた。
「ウン、いいと思う。まだ高校生だし。若い人の考えだと甘く見て貰える。先生ぐらいの歳の人の論文だとアッサリ切り捨てられちゃうけど。証明のしようがない事柄だからね」
「アレ? 先生は神を信じないんですか? 」
 直球が来た。
「微妙な質問だね。神主の妻としては信じるで科学者としては否、かな」
「こんなにソバに住んでいて一度も見たことないんですか? 」
 剛速球となった。
「うん、ない」
 彩花は立ち上がり、陽菜を祀ってある神さんの謂れを記してある看板の前に誘った。
「饒速日命(ニギハヤヒノミコト)。先生、速日(ハヤヒ=速>陽?)ですよ? 」
 キョトンとしている陽菜に、
「これって光に纏わるものじゃないんですか? この神様はきっと光より速い」
 どちらが教師か分からない。考えても見なかった。指摘されて初めて疑問が沸いた。
「う~ん、分かった。ちょっと調べてみよう」
 科学者の魂が動いた。二人は社務所に入り「饒速日命」に関しての文献をあさりはじめた。

第七話 光より速きモノはマジ神光なの? に続きます
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