第4話

文字数 868文字

仕事が好きだなどとは、口が裂けても言えまい。朝は眠たいし、昼は面倒くさい。職場での人間関係に悩むときもあるし、体力的にも、一日終わるとどっぷりと疲れる日も多い。

それでも、仕事をしていると余計なことを考えずに済む。日本で生きていくうえで、『仕事をしている』ということは大切な免罪符みたいなものだ。

だが、ふと思う。仕事さえしていれば、それで良いのか、と。人生本当に、それでいいのか?

職場の、人間的に大好きな先輩に、「年の瀬ってワクワクしますよね」と言ったら、しばらく無言で、「するか?」と返ってきた。先輩は、ぼくよりも少し年が上なのだが、「一年たったという恐怖感がある」「年の瀬がなかったら、そこまで気にならない」とおっしゃるのであった。

それでぼくは翻って考えてみたのだが、歳をとることは怖いことか?

確かに老後の不安はある。しかしその先の、死への恐怖みたいなものはぼくにはそこまでないような気もした。

一つには、生が『重荷だ』という事がある。生きる事はどうで苦労の連続なのだ。面倒くさいことの連続なのだ。それを一つ一つ解消していく先に、喜びや楽しみがあるのも事実だけれど、そうすると今度は、喜びや楽しみをいちいち探し出すという『重荷』が、もういい加減辛いってっ事にも気づく。

それでも、「生きている」というこの状態は貴重なことのように思えはする。自分の命を、大事にしたいという気持ちがある。

ぐちゃぐちゃと悩む。意味について悩む。仕事と意味との関わりについても悩む。

ぼんやりとした不安、と芥川龍之介は書いた。けれどもうすぐ来る来年のお正月は、ぼんやりとはしているけれど、ぼんやり明るい初日の出を拝めるような気がする。

ロシアのウクライナ侵攻は続き、人々はマスクをして外出し、北朝鮮から『飛翔体』が頻繁に飛んでくるけれども、仕事が出来て、コンビニでも美味しいものが食べれて、猫は長生きし布団の中に入ってくる。あまり意味など考えなくとも、ぼんやりと、幸せだ。

その、幸せが何なのかがわからない。ただ『創造』をほとんどやらない罪悪感だけが今のぼくにはある。

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