第11話

文字数 841文字

障害者の支援の仕事は、楽しく、辛い。馬鹿でも出来る仕事ではないので、人を選ぶ。また、そこがいい。

世のアルバイト広告とやらは、良く、「誰でもできる」を謳う。初めのうちはそれでもいいかもしれないが、「誰でもできる」を一生続けたいにんげんなどいるだろうか?

本当にしんどいのだ、利用者様をうまく乗せて風呂に入っていただくことなど。さまざまな利用者様がいる。そして一人一人にまがうことなき個性があり、なめてかかれば必ず手痛いしっぺい返しを食らう。

一日ぼーっとして動かないように見える利用者様の心の中に強い『自分』の芯を感じたり。

ぼくも障害者だが、自由は保障されている。手厚い福祉で、一般の人以上に保障されている部分もある。けれど、自由が制限されている方々もあられる。自閉で軽く知的が入っている方の一生を想像できるだろうか?そういう人々は大概、人並みにいろんなことを考えられるし、人の話す言葉も分かり、伝わるのだ。だが衝動がある場合もあり、そこに『自らは言葉を発することが出来ない』というハンデが加わると、暴力的で自分を抑えられない存在とみなされたり、あからさまに馬鹿にしたような言葉を言われたり(言葉はわかるのだ)、自分の意思とは違うことを強いられたりもする。好きなものを好きなように買える自由がこの人たちに来る未来を、ぼくも望む。

馬鹿で無能でやる気のない成年後見人がついてしまったために、糞みたいなグループホームに入れられて、服もろくに面倒を見てもらえず、後見人が馬鹿なので新しい服を買うことも出来ず、サイズの合わないぴちぴちのスウェットでお腹を出して一日過ごされる利用者様もおられる。

そういう人たちの間で、やさしい気持ちになったり辛い気持ちになったり、スタッフと議論したり叱られたり教えられたりしながら、一日一日、半年また半年、と過ぎていく。今の通勤路には、ゴール付近に桜並木がある。今年初めて見るその並木桜の開花は間近。

あと何年、その桜をぼくが見るか、それはたぶん神様ですらご存知ない。
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