第17話 女神のような女

文字数 682文字

 テーブルに戻った私を要は極上の笑顔で迎えてくれた。
「テツさん、お待たせしました」
「今夜も素敵だね、女神のようだよ」
 すると要はきりりとした顔で、右手に持った見えないソフトクリームを真上ではなく十一時の角度に掲げ、なぜかカタコトの日本語で、「ジッユウノタメニィ、タァタカゥノデース!」と宣言した。
「え、何それ?」
「自由の女神ごっこ♪」
 私は破顔した。要のおかげでさっきまでの暗い気分は一瞬で吹き飛んだ。私が着席すると要も着席する。
「とりあえず氷抜きのお水をどうぞ。ご気分は? もうすっきり?」
「うん、もう大丈夫」
 気分はすっきりしたが、吐いてしまったので空腹だった。
「良かった。この後のお飲み物どうなさる? ブランデーなら、まず何か軽い物を召し上がってからのほうがいいでしょう?」
 要はこういうところまで気が回る。
「そうだね、何かおすすめある?」
 和風の温かくてあっさりした物が食べたいところだ。
「京風煮麺(にゅうめん)はどうかしら? あっさりしてるし、胃に優しく収まってくれると思うの」
「お、それいいねぇ」
 やっぱり要は私が何も言わなくてもちゃんとわかってくれている。

「京風煮麺とほうじ茶、ピアノの先生に『ラヴィアンローズ』のリクエストお願いします」
 要が黒服にオーダーしてくれるのを待ち、私はちょっと得意気に大事な報告をした。
「あれからすぐ、ダイエット始めたよ」
「おお、素晴らしい! さすがは社長さんね、決断力があって仕事が早いわ」
 要は瞳を輝かせて賞賛してくれた。私はこの頃、腹の出具合が少し気になっていたのだ。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み