第11話 いい女たち

文字数 760文字

「いらっしゃいませ、松山さん」
 ホステスの香織が艶然と微笑む。彼女は貧乳を気にしているがコケティッシュな魅力がある。
「やあ、こんばんは、香織ちゃん」
 香織は猫のようにしなやかな身のこなしで着席し、「私もいただきますね?」と自分のグラスにブランデーの水割りを作る。その所作は無駄がなく美しい。
 香織は美しい流れと動きのある髪型にセットしている。白い肌にプルシアンブルーのロングドレスがよく映えている。彼女にはこういう深みのある色がよく似合う。彼女は自分を客観視できるのだろう、いつも自分に似合うヘアメイクとドレスで接客している。
 香織は公認会計士を目指している女子大生だ。公認会計士試験と言えば医師国家試験、司法試験と並ぶ三大国家資格だ。やはり頭の良い人間は自分を客観視できるのだろう。
 香織は私と乾杯すると、唇にグラスを寄せた。そんな何気ないしぐさでもグラスにキスをするように見えてしまう色気がある。
「今日も寒かったですね。要さんからのお誕生日プレゼントのマフラー、もうお使いですか?」
 先週、要から贈られたマフラーに香織は言及した。
「もちろん。肌触りが良くてあったかくて最高だよ」
「良いですね。カシミアは『繊維の宝石』ですからね……」

 香織と軽口を叩いているうちに客も五組ほど来店し、店内も次第に賑やかになってきた。出勤してきた要が、私のテーブルから少し離れたテーブルに同伴客と共に着いた。
 今日は秘色(ひそく)のエレガントなスーツを着ている。髪を華やかなアップに結っているのでまっ白なうなじに綺麗な襟足がよく映え、膝上ぎりぎりのスカートからは足首にかけて絶妙な曲線からなるすんなりとした脚が伸びている。客が中座すると、要は笑顔で私に手を振って合図してくれた。私は嬉しくなって手を振り返す。
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