第15話 気遣いのできる女

文字数 529文字

 呼吸を整えた私がトイレから出ると、おしぼりを手渡すために待っていてくれた要はにっこり微笑んだが、私の青い顔に気づくと表情を変えた。
「テツさん、お顔が真っ青よ」
 私を気遣ってくれる要の手から温かいおしぼりを受けとると、私は要に頼んだ。
「ママにチェンジを頼んでもらえないかな? 要ちゃんがまだ来られないなら、他の女性でもいいから。とにかく朱美ちゃんだけはもう無理なんだ。気持ち悪くて吐いちゃったよ」
 要を心配させたくなくて、私は努めて笑顔を作って言った。
「まあ大変。ちょっとカウンターでご休憩なさったら?」
「うん、そうするよ」
 私は素直に従った。テーブルに戻れば朱美がいるからだ。
「おしぼり、冷たいほうがいいわね? チーフ、冷たいおしぼり(ツメシボ)と常温水を松山さまに。ちょっと具合悪くなっちゃったそうなんです。それからスポーツドリンクをぬるめにレンチンしてさしあげてくださいね」
 要はチーフにテキパキと指示を出し、私に優しく囁いた。
「ママにはすぐ伝えておきますから、しばしお待ちを」

 カウンター席で常温の水を飲み干し、冷たいおしぼりで顔や首を冷やし、ぬるめのスポーツドリンクを飲みながら休憩していると、ママがやって来て隣に座った。
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