アレを買う
文字数 2,037文字
「サトミさんはそちらのベッドを使用してください。こちらのベッドは僕が今まで使っているので。それで構いませんか?」
私たちがシェアすることになった部屋は、これまで私がひとりで宿泊していた部屋です。
ベッドはもともとふたつ設置されていました。
この部屋をシェアするに当たっては、宿の主人に「コロンボから妻が訪ねてきたので同室します」と嘘をつきました。
民家の一室を借りるペイアコモデーションの宿の場合、未婚の男女の同室はあまりよく思われないだろうと考えたからです。
「はい、ベッドはそちらで結構です。ありがとうございます」
彼女は丁寧に頭を下げました。
そう言う所作のひとつひとつがとてもかわいくてたまらないです。
こんなかわいい女性と今夜から同室なんて、絶対これは眠れなくなることでしょう。
しかし、私はだからといって、いきなり彼女を押し倒すようなケダモノではありません。
彼女との距離はこれから少しづつ詰めて行くつもりです。
すでに彼女は私の土俵に上がっているのですから、焦ることはありません。
「トミーさん、部屋に入って早々に申し訳ないんですけど、ふたつお願いしたいことがあるんですが、いいですか?」
ベッド脇に荷物を降ろしてすぐに彼女が言いました。
「あ、はい。なんでしょう」
「今日は一日歩いたのでかなり汗をかきました。すみませんがお先にシャワー使わせていただけませんか?」
「ああごめんなさい、気が付かなくて。ではしばらく部屋を出ます。ええともうひとつは?」
今回は私が質問を返しています。
しかし、少し彼女のペースに乗ってみてもいいかもしれないと思いました。
それほど彼女との会話は心地よいものでした。
彼女は少し恥ずかしそうに言いました。
「あの~・・ビールを買ってきてもらえませんか?スリランカでは女性が酒類を買うのってあまりよく思われないみたいで、私しばらく飲んでないんです」
「はい、お安い御用ですよ。ビール好きなんですか?」
「あまりお酒は強くはないんですけど、ビールだけはたまに飲みたくなるんです。スリランカはずっと暑いですし」
「了解です。1本でいいですか?」
「はい。それとトミーさんの分も買ってきてください。私奢りますよ」
「僕は下戸なので、じゃあコーラを奢ってください。ではごゆっくり」
宿を出ると、あたりはすっかり暗くなっていましたが、少し歩くと日用雑貨から簡単な食料品と酒類、薬なども売っているコンビニみたいなお店には、まだ灯が着いていました。
店の親父を呼んで、欲しい物を言います。
「ライオンビール1本とコカコーラ1本。それとアレあるか?」
親父がニヤリと笑いながら言います。
「アレは半ダースと1ダースあるがどっちだ?」
「とりあえず半ダースでいいよ」
親父は棚から小箱を手に取り私に差し出します。
「いい夜を過ごせよ」
ここでいうアレとは、男女が深い仲になるときに、男性はマナーとして持っておくべきアレのことです。
今夜いきなり使おうとは思っていませんでしたが、いざという時に後れを取らぬ備えは必要でしょう。
時間つぶしにしばらくブラブラしてから宿に戻り、部屋の扉をノックします。
「トミーです。入って大丈夫ですか?」
中から声が聞こえます。
「はーい、もう大丈夫です」
部屋に入ると、薄いグリーンのタンクトップとショートパンツに着替えた彼女が、窓際のスペースにロープを張って洗濯物を干しているところでした。
ロープには先ほどまで来ていたボーダー柄のTシャツが掛けられ、窓枠の桟には降りたたみのプラスチック製の物干しハンガー。
これは洗濯バサミがたくさん付いたもので、タオルなどが干されています。
「すみません、勝手に物干し場を作っちゃいました」
「ああ、別に構いませんよ」
「よかったらトミーさんも、ロープの向こう側を使ってください。でもこっちのハンガーは触らないでほしいです。あの~下着とか干してますので」
私は特にフェティシズムの趣味はありません。
しかし、下着という言葉を聞いて、ちょっとドキッとしたことを告白しても罪にはなりますまい。
なにしろこの時の私は、健康な20代の若者だったのですから。
・・・なるほど、タオルが干してあるのは目隠しなわけか・・・
と考えるとタオルまでなにか艶めかしく見えたり、見えなかったり。
彼女が今着ている部屋着にしても、さきほどまで着ていた服にしても、白い部分は真っ白でとても清潔そうです。
私もシャワーを浴びると同時に洗濯を済ませるということはやっておりましたが、私のは旅が長くなるほどに薄汚れてしまったのに、なぜ彼女の服は常に清潔そうなのか?
今もって不思議なのです。
その後、私もシャワーを浴びて今着ている物を洗濯して、彼女のTシャツと並べて干しました。
私たちは洗濯物を眺めながら(?)ビールとコーラで乾杯しました。
私たちがシェアすることになった部屋は、これまで私がひとりで宿泊していた部屋です。
ベッドはもともとふたつ設置されていました。
この部屋をシェアするに当たっては、宿の主人に「コロンボから妻が訪ねてきたので同室します」と嘘をつきました。
民家の一室を借りるペイアコモデーションの宿の場合、未婚の男女の同室はあまりよく思われないだろうと考えたからです。
「はい、ベッドはそちらで結構です。ありがとうございます」
彼女は丁寧に頭を下げました。
そう言う所作のひとつひとつがとてもかわいくてたまらないです。
こんなかわいい女性と今夜から同室なんて、絶対これは眠れなくなることでしょう。
しかし、私はだからといって、いきなり彼女を押し倒すようなケダモノではありません。
彼女との距離はこれから少しづつ詰めて行くつもりです。
すでに彼女は私の土俵に上がっているのですから、焦ることはありません。
「トミーさん、部屋に入って早々に申し訳ないんですけど、ふたつお願いしたいことがあるんですが、いいですか?」
ベッド脇に荷物を降ろしてすぐに彼女が言いました。
「あ、はい。なんでしょう」
「今日は一日歩いたのでかなり汗をかきました。すみませんがお先にシャワー使わせていただけませんか?」
「ああごめんなさい、気が付かなくて。ではしばらく部屋を出ます。ええともうひとつは?」
今回は私が質問を返しています。
しかし、少し彼女のペースに乗ってみてもいいかもしれないと思いました。
それほど彼女との会話は心地よいものでした。
彼女は少し恥ずかしそうに言いました。
「あの~・・ビールを買ってきてもらえませんか?スリランカでは女性が酒類を買うのってあまりよく思われないみたいで、私しばらく飲んでないんです」
「はい、お安い御用ですよ。ビール好きなんですか?」
「あまりお酒は強くはないんですけど、ビールだけはたまに飲みたくなるんです。スリランカはずっと暑いですし」
「了解です。1本でいいですか?」
「はい。それとトミーさんの分も買ってきてください。私奢りますよ」
「僕は下戸なので、じゃあコーラを奢ってください。ではごゆっくり」
宿を出ると、あたりはすっかり暗くなっていましたが、少し歩くと日用雑貨から簡単な食料品と酒類、薬なども売っているコンビニみたいなお店には、まだ灯が着いていました。
店の親父を呼んで、欲しい物を言います。
「ライオンビール1本とコカコーラ1本。それとアレあるか?」
親父がニヤリと笑いながら言います。
「アレは半ダースと1ダースあるがどっちだ?」
「とりあえず半ダースでいいよ」
親父は棚から小箱を手に取り私に差し出します。
「いい夜を過ごせよ」
ここでいうアレとは、男女が深い仲になるときに、男性はマナーとして持っておくべきアレのことです。
今夜いきなり使おうとは思っていませんでしたが、いざという時に後れを取らぬ備えは必要でしょう。
時間つぶしにしばらくブラブラしてから宿に戻り、部屋の扉をノックします。
「トミーです。入って大丈夫ですか?」
中から声が聞こえます。
「はーい、もう大丈夫です」
部屋に入ると、薄いグリーンのタンクトップとショートパンツに着替えた彼女が、窓際のスペースにロープを張って洗濯物を干しているところでした。
ロープには先ほどまで来ていたボーダー柄のTシャツが掛けられ、窓枠の桟には降りたたみのプラスチック製の物干しハンガー。
これは洗濯バサミがたくさん付いたもので、タオルなどが干されています。
「すみません、勝手に物干し場を作っちゃいました」
「ああ、別に構いませんよ」
「よかったらトミーさんも、ロープの向こう側を使ってください。でもこっちのハンガーは触らないでほしいです。あの~下着とか干してますので」
私は特にフェティシズムの趣味はありません。
しかし、下着という言葉を聞いて、ちょっとドキッとしたことを告白しても罪にはなりますまい。
なにしろこの時の私は、健康な20代の若者だったのですから。
・・・なるほど、タオルが干してあるのは目隠しなわけか・・・
と考えるとタオルまでなにか艶めかしく見えたり、見えなかったり。
彼女が今着ている部屋着にしても、さきほどまで着ていた服にしても、白い部分は真っ白でとても清潔そうです。
私もシャワーを浴びると同時に洗濯を済ませるということはやっておりましたが、私のは旅が長くなるほどに薄汚れてしまったのに、なぜ彼女の服は常に清潔そうなのか?
今もって不思議なのです。
その後、私もシャワーを浴びて今着ている物を洗濯して、彼女のTシャツと並べて干しました。
私たちは洗濯物を眺めながら(?)ビールとコーラで乾杯しました。