第52話 偶然なのか運命なのか。

文字数 2,196文字

季節は過ぎ夏がやってきた…


私はドラマの撮影で泊まりで横浜を離れ、栃木へ来ていた。


未成年の私は親の了承を得て沢田さんも帯同してくれて、撮影に来ている。


今回のドラマでは私は助演役。エキストラに近いような役とは違うし、脇役よりもセリフも多いし、主演と絡むシーンも多い。


このドラマは「青春ピンク・ブルー」という青春アニメが実写ドラマ化された作品。

私の役は主演のヒロインの友達、ミッキーこと、橘 美希(たちばな みき)という高校1年生の役。


結構、制服が可愛いので気に入っている。

今日の撮影が無事に終わった。
私は帯同して現場で撮影の様子を見ていた沢田さんに駆け寄った。
沢田さん!どうですか?


この制服めっちゃ可愛くないですか?

えぇ。よく似合ってますよ。可愛い制服を着たいとか可愛い服を着たいとか私にもそういう時期がありました(笑)
そういえば沢田さんはアイドルだったんですよね?


普通の高校生活送れたんですか?

私ですか?普通の高校生活というか、私はデビューが14歳の頃だったので、中学校にはほとんど行けなくなって、学校行事には参加できず、中学校を卒業して、高校生活なんてほとんど記憶にないくらいですよ(笑)
凄いですね!学校行事とか出れないのは残念かもですけど、それだけ忙しかったってことじゃないですか!


彼氏とか当時いたんですか?

恋愛をする時間もなければ、忙しいのはグループの中心メンバーのおかげですよ。


私は前にも言った通り、端っこの人間ですから(笑)


彼氏なんてそんな時間ないですよ。アイドルに彼氏はご法度ですしね(笑)


紗絵はその、聞いていいのか分からないですけど、大丈夫なんですか?

聞いてもいいですよ(笑)


でも、私が言わなくても、沢田さんが察してる通りですよ。


あの日は雨でしたよね…

そうですか…あの日のことがあったから、今の紗絵がいるってことですか?


そこまでしないと駄目なものですか…?


すいません。私はその、紗絵みたく女優をしながら、歌手活動をなんてそんな事できないような人間でしたので…


沢田さんはあの雨の降る日…私が無理矢理彼氏を振ったのをたまたま迎えに来てくれていきさつを見たから、気を使っているのだろう…


青春…恋をした私だからきっと、演じれているんじゃないかなと思う…

そうですね…


恋も仕事も手に入れられるほど、私は器用じゃないってことですね…


沢田さんさっき言ったじゃないですか。そんな時間なかったんですよね?


私はもうすぐ歌手活動も開始です。そしたら女優に歌手、時間ないと思うんです。


これで良かったんだと思います。


最後は最悪な形に私がしちゃいましたけど、他は素敵ないい思い出になったらいいなと思います。


沢田さん…事務所に怪文書届いてるの知ってますよね?


私は怪文書に書かれているような女なんです。


最低なやつなんです…

そうですか。紗絵の中でけじめがついているなら、それでいいです。


怪文書知ってますよ。でも、私はそんなの気にしてません。


誰だって一度や二度間違いはありますよ。


それに、私が見ている紗絵はそんな紗絵じゃないですから。


そんなの有名になれば、なるほど色々言われるでしょうから。


紗絵自身もそんなこと気にしないで、突っ走ってください。


もうすぐ、紗絵の時代が来ますよ。

いやいや沢田さん、何言ってるんですか(笑) 


私の時代って何ですか?

私は紗絵の主演も脇役も、そして今日は助演も見ました。


主演の紗絵は輝いていました。


でも、今日の助演を見て、主演をしっかりと引き立てることも出来るんだなと知りました。


やはり、紗絵は天才です。色々な役になりきれる。


表現力がある。このことはきっと今後の歌手活動にも活かされますよ。


そしたら、きっと紗絵の時代が間違いなくやってきます。


私は人を見る目は結構あるんですよ。


紗絵のお姉さん。絵里を見つけたのは私なんですから。

(え?!どういうこと?沢田さんはお姉さんを見つけたって?)
その、すいません…お姉ちゃんを見つけたってどういうことですか?
紗絵には話したことがありませんでしたね…


私は今のマネージャー業務の前は新人発掘の部署にいて、アカデミーのオーディション時、私は審査員だったんですよ。


初めて絵里を目の前で見た時、こんな子が一般組でなんて注目されず、埋もれてしまうと思ったんです。


私はすぐに上にかけ合いました。周りの審査員も説得して、絵里をすぐに合格、特待生組として招いたんです。

え?!じゃあ、お姉ちゃんを特待生にしたのって沢田さんなんですか?!
そうなんですよ。でも、私はその後、新人発掘の部署を離れ、マネージャー業務に移動したので、絵里がやめた後に紗絵が入ってきた時、会うことなかったので、姉妹だって気づかなかったんですよ(笑)


偶然なのか、運命なのか不思議なものですね。

じゃあ、沢田さんはお姉ちゃんも私も知ってるので、比べられてそうでなんか嫌ですね(笑)


冗談ですけど(笑)

そうですね。でも人それぞれいいところも悪いところもありますからね。


絵里には絵里の良いところ。紗絵には紗絵の良いところ。私は比べたりしないですね。


それにどちらにも才能があったということですね。

私にも才能があったということを言われるとなんだか少し恥ずかしかったけれど、沢田さんに出会えたことは、きっと私にとって、かけがいのないことになると思えた。
※成瀬 紗絵 17歳 高校2年生


ドラマ「青春ピンク・ブルー」


橘 美希役

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登場人物紹介

今作品の主人公 成瀬 紗絵(なるせ さえ)。


本編では主人公 成瀬 紬の叔母

成瀬 絵里(主人公 成瀬 紗絵の姉)。


本編では主人公 成瀬 紬の母親。


成瀬 健一(なるせ けんいち)。紗絵、絵里の父親。

成瀬 亜希子(なるせ あきこ)。紗絵、絵里の母親。

山本 登(やまもと のぼる)。


姉の絵里が通う道場の師範。後に紗絵も通う道場。

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