第3話 負けるもんか
文字数 2,225文字
そして、その愛想笑いが良くなかったのか、女子の集団グループからパブかれた…
女子はめんどくさい…陰口や集団での精神的攻撃が得意な人の集まり…
私も女子だが…女子特有のそういうのは嫌いだった。
私は初日にして教室で1人ぼっちの時間が増えた…
友達たくさん作るねって言ってたのにこのザマだ…
せっかく紫色のランドセル買ってもらったのに、かわいいお洋服を買ってもらって着てきたのに…
両親にも申し訳なくて、ずっと悔しさと申し訳なさで泣きながら歩いていると、お姉ちゃんの通っている空手の道場の師範が前から歩いてきた。
私は我慢していた分、師範の前で大声で泣いた。
周りの通行人に師範はじろじろ見られ、困っている。
師範は道場の入口の階段に座ると、持っていた袋からお茶のペットボトルを出して私にくれた。
お茶を飲み、少し落ち着くと、今日の出来事を師範に話した。
すると師範は
時と場合によっては俺は武力が必要なこともあるとは思う。
でも強くなりたいなら、喧嘩の腕っぷしを鍛えるんじゃなくて、心を鍛えろ。
そんなくだらん奴らと同じ土俵に立つことはない。
お前は身体も心も鍛えればいい。
まぁ良くないことだが、そいつ等が武力で来たときは武力で返してやればいい。
ただし、強くなった時には大切な何かを守る時以外にはむやみに人を傷つけるのは駄目だからな!
お母さんに言って明日から学校帰りにでも、ここに寄れ。月謝はいらん。強くなれ紗絵。
ついでなので、テコンドーも習いたいと言った。
お姉ちゃんが習っているものとまったく同じ競技なので、私がまたお姉ちゃんの真似事をしていると思ったのか、
お母さんは少し呆れていたが、承諾してくれた。
山本道場はちょっと特殊で、空手とテコンドーと柔道が習えた。曜日によって習う種目が変わるため、空手とテコンドーの私は週の半分くらいは山本道場に通った。
自分で言うのもなんだが、お姉ちゃんばかりが美人だとか可愛いとか言われるが、私も生まれつき顔は整っている方だ。
クラスで目立つような女子の集団からハブられたが、集団に属さないおとなしい子とは、お話したり、一緒に教室を移動したりしたので、初日みたくずっとボッチっていうわけではなかった。
空手ではU12世界大会では入賞で終わったが、将来のオリンピック強化指定選手みたいなのに選ばれていて、山本道場にも通っているが、日本代表の人が使える施設でお姉ちゃんは練習することも出来、そちらに行くことも多い為、山本道場でお姉ちゃんと顔を合わせない日もあった。
山本道場で稽古中
初日は体力的についていけなかった…
1ヶ月も経つ頃には1年生ながら、体力が持つようになってきた。
周りの大人の習っている人達には小さいのに偉いねとか凄いねとか、褒めてもらえるようになったが、お姉ちゃんは国の強化指定選手なのは道場でも有名らしく、さすが絵里の妹っていう言葉が必ずつきまとった。
精神的に少しは強くなったとはいえ、この頃の私は、まだ、劣等感には勝てなかった。
若き頃の千鶴さんだ。
すでに交際していたのかは、わからないが、千鶴さんに話しかけられるとデレデレしていた師範のことを今でも覚えている。
強面な顔の師範だが、見た目とは違い紳士的で、根本的に優しいのは今も昔も変わらない。
若き頃の千鶴さんは、大人の優しいお姉さんな感じで、小さくて、弱々しい当時の私をいつも気にかけてくれ、お姉ちゃんのことは知っているはずなのに、他の人と違い、私にお姉ちゃんの話をしてきたことはなかった。
私が道場での初稽古の日も名前を聞かれると成瀬 紗絵と答えたが、妹さんだねって言われなかった。
紗絵ちゃん一緒に頑張ろうねってそう言ってくれた。
千鶴さんは当時、会社員でOLだった。
当時の山本道場は会社帰りに汗を流しに来る人も多く、今より遅くまでやっていた。