第18話 変なやつ(一次選考)
文字数 2,473文字
お姉ちゃんはかつてこの一次選考で、ずば抜けた歌唱力で審査員の目に止まり飛び級で特待生に昇格合格した。
そんなお姉ちゃんに昨日のうちに服装はチェックしてもらった。
可愛い洋服はお父さんに無理やり買わせた(笑)
お姉ちゃんとお父さんは少しずつ前みたいな、仲の良い関係に戻りつつあった。
なんだかんだ言って最初は姉妹で日本一の歌手になるということにそんなに乗り気ではなかった私なのに、単純なのか、可愛い洋服を買ってもらってオーディションを受けに行くとなると、やる気が出ていた。
そう言えば、絵里とお母さんでずいぶん言ってることが違ってたけど、結果はどうであれ頑張れよ。
俺は紗絵は少し手抜きな所があるけど、本気を出せば、絵里よりも紗絵の方が凄い才能を持っていると思う。
器用か不器用なのかの差なだけなんじゃないかと思う。
車を降りると、私はT.Kレコードへむかうたくさんの若い子達を見て、
当時お姉ちゃんはこの中で選ばれたんだ。凄いなぁ。
と改めてお姉ちゃんの凄さを痛感した。
丸山台小では、私は可愛いと言われる部類、自分の容姿にはそれなりに自信があった。
でも、所詮狭い地方での話…
今、この場には私より容姿がすぐれている人なんて、溢れかえっている。
(こんな人達と私は今から争わなきゃないのかよ…)
不安になりながら歩く私。年齢は大人っぽく見える子もいるわけだから、実年齢なんてわからないけど、私くらいの歳の子はそんなにいないように見える…
(もしかして、私が子供っぽいだけ?(汗))
更に不安になり、会場となる本社の入口の列に並ぶと、私の前に並んでいた子は、私と同じくらいの年齢なのかなと思うような感じの子だった。
そう、この子はのちに私と同じグループで活動することになるだけでなく、苦楽を共にする親友、戦友となる茅ヶ崎 恵美。でも、この時はお互いにそんなことは知らない、会話もしたことのない人同士。
会話が途切れた…
(え?話しかけてきておいて、名前だけ聞いて終わり?せっかく同い年とあえたのに、なんか、変なやつなのかな?(汗))
T.Kレコード本社内