第2話 私ばっかり

文字数 2,159文字

お姉ちゃんの部屋で寝たことによりぐっすり眠れ、朝も早起き出来たので、お姉ちゃんにお礼を言って、自分の部屋に戻り、着替えて下に降りると、お母さんが朝ご飯を作っていた。
お父さんは、コーヒーを飲みながら、ニュースを見ている。朝ご飯は食べ終わっているみたい。


私は普通よりは比較的裕福な家庭で育った。


お父さんはこの時、不動産会社の部長、お母さんは専業主婦。


共働きが当たり前の時代に専業主婦ということはお父さんはそれなりのお給料をもらっていたのだろう。


家だって戸建てに車も所有している。

じゃあ、パパはそろそろ仕事行ってくるから、紗絵、今日から学校頑張ってな。友達たくさん出来るといいな。


それじゃあ行ってきます。

お父さんいってらっしゃーい。学校友達たくさん作ってくるね!
お父さんは仕事に行った。私はお母さんが用意してくれた朝ご飯を食べているが、お姉ちゃんがまだ来ない。


お姉ちゃんとは朝早くに会話したはず。まさか2度寝?!

そろそろ絵里起きてこないと朝ご飯食べれないわね。私起こしてくるから、紗絵は食べててね。
お母さんがそう言って、上に行きそうになったので、私が引き止める。
お姉ちゃん、私が呼んでくるから大丈夫!
そう言って私は勢いよく、階段を駆け上がった。
お姉ちゃ〜ん!朝ご飯だよ!学校だよ!
お姉ちゃんがちょうど部屋からあくびをしながら出て来た。
ありがとう、紗絵。はぁー眠い。私朝着替えたのに2度寝してたみたい(笑)
お姉ちゃんは才色兼備ということは間違いない。


でも、完璧じゃない所もあるっていう姿を時々見せる。


ただ、お姉ちゃんはズルい。大人達や友達の前では完璧な姿しか見せない。


私にだけは、ちょっと抜けているお姉ちゃんの姿をたまに見せる。


朝ご飯を食べ終え、ランドセルを背負い、玄関で靴を履く。
行ってきま〜す!!
行ってきま〜す。
二人とも気をつけてね。いってらっしゃーい!!
お姉ちゃんと玄関を出ると、ちょっと遠くにゆきちゃんが歩いているのが見えた。


ゆきちゃんはお姉ちゃんの友達だけど、私も公園でたまにいっしよまに遊んだことがあるから知っている。


ゆきちゃんは私達の家の前を通っていつも学校に行くので、ちょうど私達の家は通り道。


お姉ちゃんと私の姿を見ると走ってきた。

おはよ〜っ!絵里っ!今日から妹も小学生か〜。紗絵ちゃんだよね?


学校行くと自分達のクラスがわかるからね!


楽しみだね!

おはよ〜。そうそう、今日から紗絵も1年生。朝一緒に行くんだけど、よろしくね。
お姉ちゃんとゆきちゃんと私は話をしながら歩き出す。
そう言えば、聞いたんだけどさ、絵里また告白されたの?モテすぎじゃない?さすが丸山台小いちの美少女(笑)


あ〜うん。この間ね(笑)断ったけど。


え〜何その変なあだ名みたいなの?


お姉ちゃんは6年生、恋バナみたいなのが増えてくる年頃だ。


1年生の私には良くわからない話だ。


でも、ゆきちゃんの話を聞く限りお姉ちゃんはやっぱりモテるらしい。


お姉ちゃんは、今では親達の間でも噂になっている。


この間、お姉ちゃんの空手の稽古をお母さんと見に行った時、お姉ちゃんと同じ学年の子も同じ道場で習っているから、そのお母さんに娘さんは丸山台小いちの美少女って言われてますよって、お母さんがいわれてるのを聞いた。

二人の恋バナを聞きながら、この間のことを思い出していた私は、やはり1年生で、6年生の2人とは足の長さが違うため、少し置いてけぼりになりそうで、歩くのに必死になり始める。


お姉ちゃんは、気づき、歩くスピードを落として、私に合わせてゆっくり歩く。 


お姉ちゃんのモテる要素は美少女なだけではないのだろう。


美少女なうえにこうやってさり気ない優しさを見せるから、男子は惚れてしまうんだろう。


もしくはさり気ない優しさで勘違いさせてしまっているのか?


お姉ちゃんのおかげで、私は汗だくにならずに済み、平和に学校についた。

クラス分けを見て、友達と喜び合っているお姉ちゃん。


私も自分のクラスを探して自分の教室に向かおうとする。

紗絵は、2組なんだね。私が1年生の頃は4組だったなぁ〜。学校終わる時間違うから、帰りは一緒に、帰れないけど、気をつけて帰るんだよ。
お姉ちゃん、私のクラス見てくれてたんだ。


ちょっと嬉しかった。

うん!また後でね!
私は自分のクラスの1年2組に入る。


まだ、みんな仲良しグループもなく、ちょっとみんながみんな遠慮した感じだ。

私が席に着くと、いろんな子から話しかけられた。


でも、みんな決まって言うセリフがある。


それは、「お姉ちゃん本当に美人だよね。」もしくは「お姉ちゃん本当に可愛いよね。」

朝の登校の時、お姉ちゃんと来ていたのをみんな見ていたのだろう。


お姉ちゃんは美少女と呼ばれるだけあって目立つ。


ランドセルを背負ってなければ、中学生にも見えるし、オシャレをすれば高校生でもいけるかもしれない。足が長く、身長も158センチと大人の女性とあまり変わらない。

お姉ちゃんは丸山台小いちの美少女。マドンナ。学校のアイドル。光のような存在。


じゃあ私は?美少女のおまけキャラ?もしくは美少女の妹。影の存在…


お姉ちゃんが輝けば輝くほど、私は影になるの?


お姉ちゃんのことは大好きだ。


だけど、影に埋もれていく自分が許せない…


いつも私ばっかり…


小学生となった私の姉への劣等感は増していく…

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登場人物紹介

今作品の主人公 成瀬 紗絵(なるせ さえ)。


本編では主人公 成瀬 紬の叔母

成瀬 絵里(主人公 成瀬 紗絵の姉)。


本編では主人公 成瀬 紬の母親。


成瀬 健一(なるせ けんいち)。紗絵、絵里の父親。

成瀬 亜希子(なるせ あきこ)。紗絵、絵里の母親。

山本 登(やまもと のぼる)。


姉の絵里が通う道場の師範。後に紗絵も通う道場。

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