第7話 常識にとらわれないで

文字数 2,114文字

その後は、何事もなく夕飯を食べ終え、私達家族は本家の屋敷の一室に布団を敷いて寝る。お父さんと、お母さんは親戚達の宴会にまだ参加中で、お姉ちゃんと私だけが布団に入っていた。
紗絵、さっきはありがとね。私のこと、助けようとしてくれたんでしょ。
うん。でも、毎年お姉ちゃんは私のことかばってくれてたのに、なんか、達也叔父さんにけっきょ私いい負けたし、ちゃんと助けれてないよ…ごめんね…役立たずで…
そんなことないよ。紗絵は小さいのに凄いよ!


私が紗絵くらいの年齢だったら、きっと立ち向かえないよ。


私別に、達也叔父さんの考えが全部間違いだとも思わないんだ…


良い学校を出て、良い所に就職して、それはやっぱり、苦労してほしくなかったり、後ろ指刺されたくなかったり、それはどちらかと言うと世の中では正しいのかもしれないよね。


それが正解なら、じゃあ私は間違ってるのかな?って言ったら、私は自分も間違ってないと思うんだ。


達也叔父さんの言うことが大人の常識なんだったら、私は子供だから、常識がないとかそんなんじゃないと思ってる。


きっと、大人になると夢や理想では生きれなくなる。今の私にはそれすらわからない。

周りからは空手もテコンドーももったいないってしか言われないし、歌手になりたいって言うと何でって聞かれる。横浜女子学院を受けなかったのも、何でって言われる、模試の判定はAで合格率90%以上なのにね。


でもね、私は世の中の常識にとらわれたくない。


私が進む道は間違いか正解かは絶対今の段階では、誰にもわからないはず。


私は間違いの道を進んでいたとしても、自分の人生に悔いがなければ、それが正解だと思う。だから、私は進むよ自分の道を。


例え応援してくれる人が一人もいなくても。


そして、間違いすら正解に変えてみせる。


紗絵もこの先、周りにいろいろ言われても負けないで。


周りや大人、世の中の常識にとらわれないで。

お姉ちゃんは凄い。12歳で自分の信念を持っている。


小学1年生の私はお姉ちゃんの言葉がこの頃はちゃんと理解できていなかった。

うん!お姉ちゃんみたくなる!
良くわからないで返事をする私。お姉ちゃんもきっと私が良くわかっていないのを理解していただろう。


それでもきっと何かを伝えたかったんだと思う。

冬の季節が終わり。春が訪れる。お姉ちゃんは丸山台小学校を卒業する。


今日は卒業式だ。


お姉ちゃんが卒業生代表で挨拶をする日だ。


名前を呼ばれ登壇するお姉ちゃん。

今日はわたしたちのために卒業式を開いていただき、ありがとうございます。


来賓のみなさま、PTAのお父さんお母さん、お忙しい中、わたしたちの卒業式にご参列いただき、温かいお言葉もいただきありがとうございます。


思えば6年前、この体育館で入学式に出席した時のことが懐かしく感じられます。あっという間の小学校生活でした。


土砂降りの中をみんなで歩いた遠足。汗をかきながら走った運動会。どれも今となってはいい思い出です。


そんなたくさんの思い出を胸に抱いて、本日私達は卒業します。


期待と不安があるなかで、この丸山台小学校で学んだことを忘れずに成長していきたいと思います。


まだまだ未熟者ですので、今後ともご指導のほどよろしくお願いいたします。


卒業生を代表してもう一度心からの感謝を申し上げ、答辞とさせていただきます。


本当にありがとうございました。

登壇し、原稿を開きはしたお姉ちゃんだが、すべて暗記していたのだろう。


原稿を見ることなく、スラスラと話し、頭を下げた。

先生や親達、在校生からたくさんの拍手を受け、卒業生代表の答辞は終わる。
卒業生代表の答辞をおえたのにも関わらず、マイクを持ってきながら、降りてくるお姉ちゃん。


体育館には音楽がかかり、持っていたマイクで袴姿で歌い出すお姉ちゃん。


お姉ちゃんの歌は来賓や親達、在校生、先生達を魅了した。



校長先生と教頭先生を除いては…


校長先生や教頭先生は音楽を止めろとわめいていたが、他の先生達は指示に従わなかった。



お姉ちゃんの声は美声で聴いている者を引き付ける。12歳とは思えない歌唱力だった…


卒業式の体育館をジャックした、お姉ちゃんの歌が終わると、たくさんの拍手で包まれた。

5年後、私の妹の紗絵がここで、この場所で卒業式を迎える頃までに、歌手になって、今度は自分の曲で、妹の卒業式、歌わせてほしいと思ってます!


私は、また成長して戻ってきたいと思います。


ご静聴ありがとうございました。

そう言って頭を下げたお姉ちゃんに周りからは再度大きな拍手がおくられた。


この年の卒業式は丸山台小前代未聞の卒業式として、私が卒業するまで語り継がれた…


協力してくれた先生達やお姉ちゃん、そして両親は、あとで校長と教頭先生にめちゃくちゃ怒られたらしいけど…

※成瀬 絵里 12歳


丸山台小学校卒業式ジャック

校長も教頭先生も、卒業生代表のお姉ちゃんがまさか、卒業式ジャックするとは思ってなかっただろう…


お姉ちゃんはいい意味でも、悪い意味でも常識にとらわれていないのだろう…


お姉ちゃんがマイクで歌う姿は美しく歌声もボイトレなんてしたことないのに、凄く美しかった。


T.Kレコードアカデミーに特待生として選ばれたのにも納得だった。

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登場人物紹介

今作品の主人公 成瀬 紗絵(なるせ さえ)。


本編では主人公 成瀬 紬の叔母

成瀬 絵里(主人公 成瀬 紗絵の姉)。


本編では主人公 成瀬 紬の母親。


成瀬 健一(なるせ けんいち)。紗絵、絵里の父親。

成瀬 亜希子(なるせ あきこ)。紗絵、絵里の母親。

山本 登(やまもと のぼる)。


姉の絵里が通う道場の師範。後に紗絵も通う道場。

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