第4話 そんな簡単に…

文字数 2,502文字

私が1年生の秋、お姉ちゃんはU12空手世界大会、U12テコンドー世界大会で優勝し2種目での世界王者となった。


U12テコンドー世界大会は前年から2連覇となり、天才少女や未来のオリンピック選手や美少女アスリートなどとして、テレビに取り上げられた。

お姉ちゃんには、芸能事務所からもオファーが何件か来たらしい。


夕飯を食べながら、お母さんとお姉ちゃんがその話をしている。

結局、絵里はどうするの?


中学生になったら、部活とかじゃなくて、空手とテコンドーは代表の施設で練習するの?


芸能事務所からの誘いはどうしたいの?

え〜っとね。私、丸山台中学校ではね、中学校の部活には入らない。


学校もそれでも良いって言ってくれてるよね?


空手もテコンドーも辞める。芸能事務所は誘い全部断わって(笑)


私、歌手になる!

お姉ちゃんの発言に、両親と私はビックリした…
ちょっと、絵里、何言ってるの?!


空手もテコンドーも辞めるってあなた本気なの?!


オリンピック目指したり、そういうのじゃないの?!


芸能事務所の誘い断るのに歌手目指すってどうするつもりなの?

だって誘いのある芸能事務所って有名な歌手いないでしょ?


アーティストに強くない事務所に所属したらさ、違うことばっかりさせられて、歌手させてもらえないかもしれないじゃん。


だから、私T.Kレコードに入るの。入って日本で1番の歌手になるの。

絵里がお医者さんになりたいとか、弁護士になりたいとか、学校の先生になりたいとかだったら、空手もテコンドーも辞めるってもったいないけど、しょうがないかってわかるけど、歌手ってあなた、歌ってるの聞いたことないし、本当に1握りの人しか、表舞台には立てないのよ!わかる?


T.Kレコードから誘い受けたわけじゃないでしょ?そんな話は私聞いてないわよ?

私、もったいないなんて思わないよ。だって、人生一度きりでしょ。空手にテコンドー嫌いになったわけじゃないよ。


でも、私が今好きなのは音楽なの。だから、空手もテコンドーもU12でしかないけど、世界一になったら、辞めるって自分で決めてたの。


みんなの期待する私はオリンピック選手とか世界王者とかでしょ?


私別にみんなの期待に応えるために生きてるわけじゃない。今自分がしたいこと、諦めたくない。結果が出るかはわからないよ。


でも、私は歌手で日本一にまずはなるの。


T.Kレコードから、誘い来てないよ。


だから、オーディション受けに行くの!


でも、それで落ちても私は歌手になる夢を諦めたりしない。


他のとこにオーディション受けに行く。

お姉ちゃんの意思は固そうだった。変に頑固な所が昔からある。


そして、お姉ちゃんは0からのスタートでも気にしない人だ…


空手やテコンドーも0からスタートしてその世代の世界王者となったのだから。


そしてお姉ちゃんが音楽に興味があることを私は知っていた。


両親にバレないように夜遅くまで聞いていたのを目の前で見てきたのだから。

ちょっと、黙ってないで、あなたからも何か言ってよ!
困ったお母さんがお父さんに助けを求める。
お父さんは少し考えると話し始めた。
絵里、頑張れよ。俺は応援する。お母さんの気持ちは、俺もわかる。でも、絵里の人生だもんな。周りにはきっともったいないとか、なんでとかたくさん言われると思うけど、日本一の歌手になって、私は間違ってなかったって、証明して、見せてやれ(笑)
お父さんまで変なことを言い出すから、お母さんはため息をついていた。


自分を応援してくれた、お父さんに甘えるお姉ちゃん。

ありがとうパパ。私絶対日本一の歌手になって、みんなのこと、私のライブに呼んであげる!(笑)

サインだって書いてあげるからね(笑)

お母さんは反対気味だったけど、お父さんを味方につけて、結果は、お母さんの根負けだ。


辞めたって言って、捨てちゃうくらいなら、その才能私にくれたらいいのに…


ことわざだとよく、「二兎追うものは一頭も得ず」なんて言うが、


お姉ちゃんは二兎を追って二兎とも得てしまう人なのだろう。


歌手になることも日本一の歌手になることも、お姉ちゃんなら出来るのかもしれないとこのときの私は本気で思った。

秋も終わり、冬の中頃、お姉ちゃんはT.Kレコードのオーディションを受けに行く日となった。



オーディションすっごいたのしみだなぁ〜♪
朝ご飯を食べながらウキウキのお姉ちゃん。
お姉ちゃん緊張しないの?
え?何で?いっつもお風呂場で歌ってるから緊張しないよ!(笑)
お風呂とオーディション同じじゃないでしょ(汗)

空手とテコンドーのジュニア世界王者になっただけあって強心臓な人だと思った。

が、頑張ってね。
そう言うので精一杯だった。
朝ご飯を食べ終えると、お姉ちゃんは楽しそうにお父さんとオーディション会場となるT.Kレコード本社へ向け出発していった。
オーディション開始時刻は15時からの予定。会場でお姉ちゃんをおろしたら、お父さんは、お姉ちゃんから連絡があるまで、近くのどこかで車をとめて時間を潰していると言っていた。T.Kレコード本社があるのは東京都港区お台場。同じお台場にはフジテレビもある。


幼稚園の頃、フジテレビに両親に連れて行ってもらったから、少しだけ覚えてる。

私はスマホを持っていない。小学1年生だから、特に必要としていないが、お姉ちゃんは4年生くらいから、持っていたらしい。


たまにお姉ちゃんが使ってるのを見ると楽しそうだなぁ〜なんても思う。

私とお母さんはお留守番だ。お母さんは家事でせかせかと動いているが、私は休日な上に今日は道場での稽古もない。


一人で退屈していた。


テレビを見ながら、ウトウトしていると、私はいつの間にか寝てしまっていたらしい。


どれくらい寝てたのだろう。お母さんにゆすられて起きる私。

ちょっと!紗絵起きて!絵里がね、オーディション受かったんだって!


紗絵!お姉ちゃん受かったんだって!

ゆすられて、ちょっと興奮気味で、大きい声でお母さんに起こされた私は、その言葉を聞いて、すぐに目が覚めた。
ホントに?!お姉ちゃん凄いね!良かったね!
※成瀬 絵里 12歳 小学6年生


U12空手世界大会 チャンピオン

U12テコンドー世界大会 2連覇

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登場人物紹介

今作品の主人公 成瀬 紗絵(なるせ さえ)。


本編では主人公 成瀬 紬の叔母

成瀬 絵里(主人公 成瀬 紗絵の姉)。


本編では主人公 成瀬 紬の母親。


成瀬 健一(なるせ けんいち)。紗絵、絵里の父親。

成瀬 亜希子(なるせ あきこ)。紗絵、絵里の母親。

山本 登(やまもと のぼる)。


姉の絵里が通う道場の師範。後に紗絵も通う道場。

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