第15話 姉と父の確執

文字数 2,304文字

私はお姉ちゃんの部屋の前まで来ると、廊下の床にお盆をおいた。


コンコン


ドアをノックすると返事がない。ドアノブをガチャガチャまわすけど鍵がかかっている。


お姉ちゃん私だよ。お母さんが、妊婦さんなら、ちゃんと食べないと倒れるよだって。


残り持ってきたよ。


食べ終わったら、ドアの前に置いておいて、私下げるからさ。

そう言うとお姉ちゃんはドアを開けて受け取った。
ありがとう紗絵。ご飯食べてたのに迷惑かけてごめんね。


申し訳ないんだけど、下げるのお願い。

私は全然大丈夫だけど、お姉ちゃん大丈夫?


何かあったら呼んでね。

わかった。ありがとう。
その後お姉ちゃんが部屋で何をしていたのかはわからないけど、私は部屋に戻ると、もうすぐT.Kレコードアカデミースクールのオーディションが近づいてきたので、自分もそろそろスマホほしいなと思ったけど、今お父さんに言うと、機嫌悪くて、なんか駄目とか言われたら嫌だから、今度機嫌が戻ってる時に言おうと思った。


部屋でベッドにゴロゴロしてると、宿題してなかったことを思い出し、机に向かい宿題をしていると、勝手にドアが開きお母さんが入ってきた。

あら?紗絵が勉強してるなんて珍しいじゃない。


明日雨でも降るのかな。(笑)


絵里の様子どうだった?

お姉ちゃんなら、ご飯食べてると思うよ?


受け取ってくれたから。食べ終わったら、私下げるって言っておいたから、部屋の外においてあったの見つけたら、下に下げに行くね。


お母さんの伝言も伝えておいたよ。妊婦さんなんだから食べないと倒れちゃうよって。


何それ?

お母さんが手に古そうな雑誌持ってたから聞いた。
あ〜これね。絵里には昔見せたことがあるんだけど、紗絵も、もうすぐT.Kレコードアカデミースクールのオーディションでしょ?


これ私が大学生の頃のなんだけどね。

そう言ってページをめくり私に指さして見せてきた。
この人がどうしたの?お母さんのお姉ちゃんとか妹?
違うの。コレは私なの!(笑)
そう言われた雑誌の隅っこの方に小さくうつる人。


それは大学生時代の私達のお母さん。


お母さんは売れないモデルだったらしい。

私ね、この雑誌の表紙になりたかったの!!


でもね、現実はここが精一杯。


歌手とモデルは違うかもしれないけど、同じ芸能界でしょ?


だから、最初、絵里の歌手になりたいって言うのも反対気味だったのはね、私はこの世界の厳しさを知っているから。


たくさんの人が憧れて、たくさんの人が脚光を浴びれる場所じゃない。


ほんの一握りの人しか、脚光は浴びれないの。


でもね、絵里も紗絵もお母さんと違って、どんなことにもきっと才能があると思うようになったから、私。


だから、絵里も紗絵も歌手になるかもしれないし、歌手やりながら女優さんもするかもしれないし、もしモデルする時は、私の果たせなかった夢をお願いしたいな(笑)


娘が自分を越えていくなら、親なら嬉しいものだしね(笑)

へぇーお母さん凄いね!!


私、お姉ちゃんみたく歌手一本で頑張るのかと思ったけど、そうだよね、歌手しながら女優さんとか、歌手しながらモデルさんとかいるよね!!


ちょっと女優さんとかそういうのやってみたいかも。


お姉ちゃんか私がお母さんの夢叶えてあげるよ(笑)


この雑誌お母さんの宝物?私もらってもいい?


宝物だったら駄目?

宝物だけど紗絵にあげる。いつか、絵里や紗絵が表紙を飾って私に返してくれたら嬉しいな(笑)


お父さんは怒ってたけど、絵里が産みたいって気持ち私にはちょっとわかるな。


お母さんだってあなた達姉妹産んでるんだからさ。


でも、私が産んだのは大人になってからで、絵里はちょっと年齢的に早いなっていうだけだからね、


今は18歳ならないと男女共に結婚できなくなったけど、私の頃なんて女は16歳で親の同意があれば結婚できたんだから。


実際にその年齢で結婚するなんてのは稀だけどさ。


まぁ絵里は15歳なわけだから16 歳にも届いてないんだけどね。あんま15も16も私達からしたら、変わらないんだけどさ。


私も少しお父さん説得してみるからって絵里に伝えておいてくれる?


でもあの人は絵里に似て頑固だから時間はかかるだろうけどね。


紗絵は本当は絵里の妊娠知ってたんじゃないの?


絵里の話を聞いて1人だけ驚いてなさそうだったでしょ?

ありがとう!大事にするね! 


多分お姉ちゃんが表紙になってお母さんに返すから安心して(笑)


結婚とか出産とか、私には良くわかんないや。


わかったお姉ちゃんに伝えておくね。


え?お姉ちゃんの妊娠?さぁ〜私全然知らなかったよ。だってお姉ちゃん全然見た目変わらないんだもん。 


あ!私まだ勉強中なんだった〜(笑)  


じゃあお母さんはお父さんの説得頑張ってね〜。


ちなみに、私オーディション近いから迷子にならないようにお父さんにさり気なくスマホ持ちたいな〜って伝えてくれると助かるなぁ〜(笑)



私は絶対お母さんに知らないフリをしたけどバレたと思った…


私は昔から嘘をつくと目が泳ぐ。


だから噓をついてもいつも家族に見抜かれてた。 


自分じゃ目が泳いでるかなんていちいちわからない。


勉強中というか忘れてた宿題をしてるだけなんだけど、今宿題してるって言ったら怒られるから、勉強してたことにしてるだけ。



そう。じゃあ勉強頑張ってね。


毎日ちょっとずつでいいからするのよ。でないと紗絵はすぐ飽きるでしょ?


無理はしないでね。

は〜い。私が本気を出したら、お姉ちゃんみたく横学受験しちゃうかもな〜(笑)


天才姉妹なっちゃうかもな〜(笑)


じゃあ、私勉強したいから(笑)

そうなの?私紗絵は勉強あんまり好きじゃないと思ってたけど、天才姉妹悪くないわね。
そう言うと、お母さんはご満悦で部屋を出ていった。
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登場人物紹介

今作品の主人公 成瀬 紗絵(なるせ さえ)。


本編では主人公 成瀬 紬の叔母

成瀬 絵里(主人公 成瀬 紗絵の姉)。


本編では主人公 成瀬 紬の母親。


成瀬 健一(なるせ けんいち)。紗絵、絵里の父親。

成瀬 亜希子(なるせ あきこ)。紗絵、絵里の母親。

山本 登(やまもと のぼる)。


姉の絵里が通う道場の師範。後に紗絵も通う道場。

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