朝鮮出兵

文字数 589文字

 本能寺の変の後、獣の名が表舞台に出てくるのは、朝鮮出兵の折である。朝鮮についた兵士らを出迎え、案内をしたのが毛者と呼ばれた集団だった。日本が統一され、大きな戦乱がなくなると感じたかれらは早々に大陸へと移って行った。大陸は寒い。そのため毛皮は必需品である。大陸の小国を転々と移動していた彼らは、秀吉が出兵したと聞いて、合流したのだ。十一も答えが出ぬまま。八たちと別れて加わっていた。

 異国での戦いは、困難を極めた。風習の違いは、戦いのスタイルに現れた。日本勢が隊列を組んで進軍するのに対し、朝鮮兵はゲリラ戦を展開。国内での争いは領主の争いであったため、下っ端の兵士にとっては負けても生活が大きく変わるわけではなかった。そのため、少しでも有利にしようと、敵の一部をいかに裏切らせるかが勝敗の決め手となっていた。しかし、異国となれば負けは死もしくは奴隷しかなかった。裏切りはありえない。

 毛者もゲリラ戦を得意とした。しかし、日本から来た兵は土地勘もなく、平地での戦しか経験がない。武器の調達もままならないまま、戦況は膠着していた。
「四五六。どうにかならんのか。」
「ここは異国の地。日の本と違い、やせた土地を守るのに農民までもが必死に抵抗いたします。いままでのように引き抜きによって敵を混乱させるようなやり方は適いません。」
 秀吉の得意とする情報戦は全く通用しなかった。
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登場人物紹介

猪熊 四五六(しごろく)

組討の使い手

十一の父

二三(ふみ)

剣術の使い手

十一の母

長い細身の背負い刀、長柄草刈刃を使う

十一(じゅういち)

鉄砲使い

オリジナル改造の種子島を二丁持つ

八(やつ)

見世物小屋の芸人

吹き矢芸

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