生きる意味

文字数 478文字

 十一は考え込んでいた。戦になると両親は嬉々として戦っている。生まれてから戦と共に生きてきた彼には何のために戦うのか明確な理由がなかった。怪我で静養していても、銃の手入れぐらいしかすることがない。

「私は、芸を見てくれた人が笑顔になるのが励みかな。笑顔を奪うような戦は嫌い。」
 八らしい答えだ。芸人ではない十一には届かない目標だ。別に誰かと暮らしたいわけでもない。戦に身を置く彼は今は一人でいるほうが気が楽なのだ。それに、誰かの役に立ちたいという衝動もない。銃を撃つことしかできないから、ただそれをこなす。両親には何かやりたいことでもあるのだろうか?

「街へ、行こう。しばらく一座と一緒に旅をしないか。」
 八にいわれるまま、旅支度をした。けが人の十一には、まだ力仕事はできない。護衛兼、助手ということで一座に同行した。
 街に来るのはしばらくぶりだ。市や屋台が出ている。安土の城下を思い出す。
「八が男を連れてきた。」
 一座ではちょっとした騒動になっていた。
「色男だね。つばめかい。」
「そんなんじゃないよ。ほっとけない、弟みたいなものかな。」
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登場人物紹介

猪熊 四五六(しごろく)

組討の使い手

十一の父

二三(ふみ)

剣術の使い手

十一の母

長い細身の背負い刀、長柄草刈刃を使う

十一(じゅういち)

鉄砲使い

オリジナル改造の種子島を二丁持つ

八(やつ)

見世物小屋の芸人

吹き矢芸

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