褒賞

文字数 755文字

 信長は時に、相手を試すようなことをする。知恵者の藤吉郎が出世できたのもそのためだ。しかし、失敗すれば容赦はない。第二第三と追い込んでいく。知恵の無いものが上にいるほど不幸な事は無い。ましてや保身に走るものには、先は無い。光秀にきつく当たったように見えるが、これは光秀自身に臨機応変な才能がなかったともいえる。

 一つの出城で、玉不足が起きた。小石を変わりにする事はできるが、それではまっすぐ飛ばない。火薬があっても玉がなければ銃は役に立たない。さて、どうするかと見ていると、竹に火薬と小石をつめて、火をつけて相手に投げ始めた。爆竹や火炎瓶のようなものである。
 またある時は、竹やぶでの戦いを仕掛けてみた。銃も槍も利かない。密集した場合には刀さえも満足に振れない。このときは竹の根元に縄を張りめぐらせた。相手は引っかかるので走れない。そこを出口で待ち構えれて仕留める。
 さらにある戦では、堀の水が干上がっていた。敵は、幸いと堀の中に飛び込んでくる。そこで、城壁を壊した。相手はたやすく堀に埋まった。

 桶狭間での勝利に気をよくした信長は、四五六に褒美を与えることにした。
「藤吉郎。おぬしが聞いて参れ。」
 さずがに、信長が直に面会することはない。本当は、したかったのかもしれないが、周囲の武将たちが許すわけが無い。

 四五六たちは城下に道場をもらった。自分達の術を磨く事もあったが、足軽たちに戦いを教えるには、城内では不便だったのだ。戦術以上に健康が第一だった。食事や休息のとり方など、兵が疲弊しないように知識が必要だった。さらには女性達にも護身術を学ばせた。当時の出兵では、まかないのための農民や人足が最後尾についてくるのが通例だった。遠征時には、炊事など男だけでは手が足りず、女も加わっていた。
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登場人物紹介

猪熊 四五六(しごろく)

組討の使い手

十一の父

二三(ふみ)

剣術の使い手

十一の母

長い細身の背負い刀、長柄草刈刃を使う

十一(じゅういち)

鉄砲使い

オリジナル改造の種子島を二丁持つ

八(やつ)

見世物小屋の芸人

吹き矢芸

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