再会

文字数 624文字

 そのころ八は大阪にいた。安土の自由な城下と違い、見世物は制限されていた。働く術のない彼女は、大阪の米問屋の七九に囲われていた。隠居の身の七九は、店にいるわけにもいかず、日がな一日芝居を観たりしてのんびりと過ごす。八はそのお供をしたり、身の回りの世話をして暮らしていた。

 その八が大阪城に密かに入っていった。大阪城で家康が秀吉に謁見している間、控えの間に何人かの徳川の侍と共にいた。
 小屋のなくなった八は、その芸を買われ徳川の密偵となっていた。刀と異なり、吹き矢は隠し持つことができる。家康に万一のことがあれば、吹き矢を駆使して助け出すために城内についてきたのだった。
 七九も大阪の情報集めの徳川の間者であった。

 秀吉が大陸への進出をもくろんでいることを嗅ぎつけると、八は芸人仲間と共に大陸へとその内情を探るために渡った。大陸にいる日本人のもとに身を寄せながら各地を転々とした。大陸では仲間と共に芸を見せながら暮らした。

 十一が負傷により静養していることを知り、会いに出かけた。十一には日本では見世物ができないため一座は大陸で仕事をしていると説明をした。再会をよろこぶかと思ったが、十一はふさぎ込んでいた。
「にいー、怖い顔して。」
 八は十一の顔をのぞき込む。
「化粧の臭いがする。」
「薬の臭いがする。」

 八たちの報告により、家康は朝鮮に渡れば当分帰ってくることはできないと判断。出兵の命があっても、国内に留まることにした。
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登場人物紹介

猪熊 四五六(しごろく)

組討の使い手

十一の父

二三(ふみ)

剣術の使い手

十一の母

長い細身の背負い刀、長柄草刈刃を使う

十一(じゅういち)

鉄砲使い

オリジナル改造の種子島を二丁持つ

八(やつ)

見世物小屋の芸人

吹き矢芸

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