カラスくんのすきなもの第5話

文字数 741文字

 第5話

その日はとても天気のいい日でね、

ボクが気持ち良く空を飛んでいると、突然いい匂いがしてきたんだ。


すぐさま周りを見渡したよ。

するとね、一ヶ所だけピンク色に広がっている場所があったんだ。匂いはきっとあそこに違いないと思ったね。

だって見事な花畑だから。


その場所へと降り立つと、ボクは甘い香りに包まれたんだ。周りは一面のレンゲの花。


かわいい、それにいい匂い。

こんな近くに花畑があるなんて、気付かなかったな。

そうだ!この匂いの中で眠りたいから、お花を巣に持って帰ろう!


ボクはくちばしと足を使って花を摘み取った。

何本くらいくわえられるかな?

ボクは花摘みに夢中になって、ついつい忘れていたんだ。


たたたたた………


聞き覚えのある音がしてボクは気付いた。


「!!」


しまった!人間の子供が通る時間だ。

僕は摘んだ花を口にくわえると、空へと飛び立った。

いつもの場所で、いつものタイミングで、今だ!


「あ」


これはくるみじゃなかった!


そう思ってももう遅い、レンゲの花はパラパラと子供の頭の上へと落ちていく。


あわてふためくボクを、人間の子供は笑いながら見ている。なんでだ?

それに、ボクが落としたレンゲを拾い集めて、また叫んでいるぞ。


だから人の言葉はわからないのに。

何度も何度もなんなんだ?


そして子供は、拾った花を大きく振り上げていつものように走っていった。


あれ?あれ?あれ?

ちょっと待って。


いつもはくるみを置いていくのに、レンゲの花は持っていったぞ。


「なんでだ?お花は食べれないのに……あ!」


言った後でおかしくなった。

だってこれ、ボクがみんなに言われてることじゃないか。おかしくて声に出して笑ったよ。


「そっか、あの子もお花が好きなんだ」


嬉しいな。胸の辺りがぽかぽかする。

ボクに好きなものがまたひとつ増えちゃった。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み