耀子の罠(1)
文字数 1,144文字
月宮盈は、突然、大笑いを始めた。
そして、それが何とか治まると、僕に笑いを堪えながら話を続ける。
「本当、貴方って可愛いわね……。
食べないわよ。別の意味なら食べてもいいけどね……。耀子に飽きたら私の所にいらっしゃいな。幾らでも食べてあげるから……」
別の意味で食べるって、どう云う意味だ?
僕は疑問には思ったが、敢えてそれを口にはしなかった。
兎に角、完全に彼女のペースに嵌ってしまい、僕は何も上手く話すことが出来ない。
「餌って言ってもね、釣り餌って意味よ。貴方を囮にして、耀子って云う馬鹿な悪魔を1匹誘 き寄せるの!」
耀子先輩を? その囮として僕を使う?
「冗談よ……。あんな外道が釣れても、面白くも何とも無いもん。釣りをするなら、獲物はもっと大物じゃないとね……」
「はぁ……」
「取り敢えず、この2つの錠剤と珠を渡しておくわね」
月宮盈は、まだ混乱している僕の右手を取って、掌の上に宝石箱の様なピルケースを置いた。そして、その箱を僕に開くように目で促す。
僕がそれを開くと、その中には、直径1センチ程の金と銀の、飴の様な丸い球が納められていた。
「銀色の錠剤は貴方の命を奪う薬。これを飲めば貴方は苦しまずに死ねる。直ぐに仮死状態になって30分も経たないうちにお陀仏よ。逆に金色の錠剤は、どんな病気も直す薬。沼藺 ちゃんの特製品よ。彼女の涎と、特別な所を弄って出てきた体液を、じっくり煮込んで固めてあるの……。あ、これは嘘。でも、これを飲めば銀の錠剤で仮死状態になっても、直ぐに生き返れるわ……」
耀子先輩が言っていた様に、この人と話すと確かに頭の中が混沌としてくる。
そのピルケースを、取り敢えず、言われるままに僕は鞄の中に納めた。
「それから、この珠は琰と云ってね、悪魔の命を奪う珠よ……。悪魔の額にあてがえば、その悪魔は全ての力を奪われる。だから、万能の大悪魔でも、人間の力で倒すことが出来るって代物なのよ」
月宮盈はそう言うと、今度は10センチ程の水晶玉の様な、赤みがかった透明の珠を僕に手渡した。
「こんな珠、何に使うんです……?
ま、まさか? 近い内に、悪魔が襲来すると言うのですか?」
「違うわよ。安心なさい」
「じゃ、何に?」
「勿論、耀子に使うのよ。要耀子って大悪魔を殺す為にね……」
耀子先輩を殺す為? この人は何を考えているんだ? 僕はもう何が何だか訳が分からなくなっていった。
「こんな物! 僕は受け取れません!」
僕はその水晶玉を地面に投げつけて、粉々に砕こうとした。だが、月宮盈の言葉に僕の手が止まる。
「あら、いいのかしら……? それを砕いたら、耀子の命も、一緒に砕けちゃうかも知れないわよ……。
もし、耀子のことが大切なら、その2つの錠剤と琰は、肌身離さず持って置くことね」
そして、それが何とか治まると、僕に笑いを堪えながら話を続ける。
「本当、貴方って可愛いわね……。
食べないわよ。別の意味なら食べてもいいけどね……。耀子に飽きたら私の所にいらっしゃいな。幾らでも食べてあげるから……」
別の意味で食べるって、どう云う意味だ?
僕は疑問には思ったが、敢えてそれを口にはしなかった。
兎に角、完全に彼女のペースに嵌ってしまい、僕は何も上手く話すことが出来ない。
「餌って言ってもね、釣り餌って意味よ。貴方を囮にして、耀子って云う馬鹿な悪魔を1匹
耀子先輩を? その囮として僕を使う?
「冗談よ……。あんな外道が釣れても、面白くも何とも無いもん。釣りをするなら、獲物はもっと大物じゃないとね……」
「はぁ……」
「取り敢えず、この2つの錠剤と珠を渡しておくわね」
月宮盈は、まだ混乱している僕の右手を取って、掌の上に宝石箱の様なピルケースを置いた。そして、その箱を僕に開くように目で促す。
僕がそれを開くと、その中には、直径1センチ程の金と銀の、飴の様な丸い球が納められていた。
「銀色の錠剤は貴方の命を奪う薬。これを飲めば貴方は苦しまずに死ねる。直ぐに仮死状態になって30分も経たないうちにお陀仏よ。逆に金色の錠剤は、どんな病気も直す薬。
耀子先輩が言っていた様に、この人と話すと確かに頭の中が混沌としてくる。
そのピルケースを、取り敢えず、言われるままに僕は鞄の中に納めた。
「それから、この珠は琰と云ってね、悪魔の命を奪う珠よ……。悪魔の額にあてがえば、その悪魔は全ての力を奪われる。だから、万能の大悪魔でも、人間の力で倒すことが出来るって代物なのよ」
月宮盈はそう言うと、今度は10センチ程の水晶玉の様な、赤みがかった透明の珠を僕に手渡した。
「こんな珠、何に使うんです……?
ま、まさか? 近い内に、悪魔が襲来すると言うのですか?」
「違うわよ。安心なさい」
「じゃ、何に?」
「勿論、耀子に使うのよ。要耀子って大悪魔を殺す為にね……」
耀子先輩を殺す為? この人は何を考えているんだ? 僕はもう何が何だか訳が分からなくなっていった。
「こんな物! 僕は受け取れません!」
僕はその水晶玉を地面に投げつけて、粉々に砕こうとした。だが、月宮盈の言葉に僕の手が止まる。
「あら、いいのかしら……? それを砕いたら、耀子の命も、一緒に砕けちゃうかも知れないわよ……。
もし、耀子のことが大切なら、その2つの錠剤と琰は、肌身離さず持って置くことね」