耀子の兄・鉄男の幻影(4)
文字数 1,215文字
叔母に相談した3日後、僕はネットで意外な画像を目にすることになる。
なんで、ネットを見ていたかって?
僕だって、これでもミステリー愛好会の端くれだ。耀子先輩のことも、確かに気掛かりではあったが、怪しい噂に関しては、矢張り、常にアンテナを張っていなければならないと思っている。
ま、そう云う訳で、僕は何時もの様に、ネットの確認だけは行っていたのである。
その画像自身は、特に怪しいと云う物ではなかった。普通に東京、神田駿河台の街並みが写っている写真で、別段、変わった部分は何処にも無い。僕が驚いたのは、そこに写っていた人物だった。
絶対の自信は無い……。
僕も彼のことは、写真でしか見たことが無いのだ。でも、この背格好、すこし神経質そうな立ち方、そして、こちらを向いた表情、それはどれも写真で見た彼そのもの……。
そう、その人物は、耀子先輩の兄、要鉄男さんとしか僕には思えなかった……。
それを見た僕は、居ても立ってもいられなくなり、ネットで画像を確認した翌日、生理学と生化学の講義をさぼって、その場所、駿河台下へと確かめに行った。
あの写真が撮られたのは、その何日も前のこと、彼がそこで待っていてくれる保証など何処にも無い。それでも、彼を目にした人が、何処かにいるのではなかろうか?
それに、もしかすると彼は、駿河台近辺の学校に在籍しているのかも知れない。だとすると、彼を探し出すのは、左程難しい話ではなかろう……。
そう考えた僕は、プリントアウトした画像を手に、彼が入りそうな店を、そうやって何軒か当たって見る心算だった。
手始めに写真の撮られた場所を見て回ろうと、僕は駿河台の交差点へと先ず向かった。
さて、どの店で訊き込もうか? やはり食事の出来る場所だろう。そう思ったものの、その時は昼時であった為か、多くの店は行列が出来る程混んでいた。ここも大学のある学生の街なのだ。ちょっと質問できそうな雰囲気では無い。
僕は時間潰しに、駿河台近辺を散策することにした。
だが、偶然とは恐ろしいものだ(その時、僕はそう思った)。服装こそ変わっていたが、僕は駿河台から錦華公園と云う公園へと抜ける道で、鉄男さんを目にしたのである。
「要、鉄男さん!」
僕は彼の名を呼んで、歩いて近付こうとした。すると、彼はこちらを振り返ったかと思うと、あろうことか、水道橋方面、つまり僕のいる方向とは逆の方向へと、走って逃げだしたのである。
当然、僕は鉄男さんを追い駆けようと、重心を前に傾けた。だが、誰かが僕の腕を掴んだ為、僕は走り出すことが出来ず、危うく転びそうなってしまったのである。
僕は、僕の追跡を邪魔した人物を見上げ、それが誰であるかを確かめた。
「あ、あなたは?」
それは、以前新幹線で一度だけ見かけた、サングラスと帽子の、女優の様な雰囲気を醸し出していた美しい女性。
耀子先輩は彼女のことをこう呼んでいた。
「先代の耀公主、月宮 盈 」と……。
なんで、ネットを見ていたかって?
僕だって、これでもミステリー愛好会の端くれだ。耀子先輩のことも、確かに気掛かりではあったが、怪しい噂に関しては、矢張り、常にアンテナを張っていなければならないと思っている。
ま、そう云う訳で、僕は何時もの様に、ネットの確認だけは行っていたのである。
その画像自身は、特に怪しいと云う物ではなかった。普通に東京、神田駿河台の街並みが写っている写真で、別段、変わった部分は何処にも無い。僕が驚いたのは、そこに写っていた人物だった。
絶対の自信は無い……。
僕も彼のことは、写真でしか見たことが無いのだ。でも、この背格好、すこし神経質そうな立ち方、そして、こちらを向いた表情、それはどれも写真で見た彼そのもの……。
そう、その人物は、耀子先輩の兄、要鉄男さんとしか僕には思えなかった……。
それを見た僕は、居ても立ってもいられなくなり、ネットで画像を確認した翌日、生理学と生化学の講義をさぼって、その場所、駿河台下へと確かめに行った。
あの写真が撮られたのは、その何日も前のこと、彼がそこで待っていてくれる保証など何処にも無い。それでも、彼を目にした人が、何処かにいるのではなかろうか?
それに、もしかすると彼は、駿河台近辺の学校に在籍しているのかも知れない。だとすると、彼を探し出すのは、左程難しい話ではなかろう……。
そう考えた僕は、プリントアウトした画像を手に、彼が入りそうな店を、そうやって何軒か当たって見る心算だった。
手始めに写真の撮られた場所を見て回ろうと、僕は駿河台の交差点へと先ず向かった。
さて、どの店で訊き込もうか? やはり食事の出来る場所だろう。そう思ったものの、その時は昼時であった為か、多くの店は行列が出来る程混んでいた。ここも大学のある学生の街なのだ。ちょっと質問できそうな雰囲気では無い。
僕は時間潰しに、駿河台近辺を散策することにした。
だが、偶然とは恐ろしいものだ(その時、僕はそう思った)。服装こそ変わっていたが、僕は駿河台から錦華公園と云う公園へと抜ける道で、鉄男さんを目にしたのである。
「要、鉄男さん!」
僕は彼の名を呼んで、歩いて近付こうとした。すると、彼はこちらを振り返ったかと思うと、あろうことか、水道橋方面、つまり僕のいる方向とは逆の方向へと、走って逃げだしたのである。
当然、僕は鉄男さんを追い駆けようと、重心を前に傾けた。だが、誰かが僕の腕を掴んだ為、僕は走り出すことが出来ず、危うく転びそうなってしまったのである。
僕は、僕の追跡を邪魔した人物を見上げ、それが誰であるかを確かめた。
「あ、あなたは?」
それは、以前新幹線で一度だけ見かけた、サングラスと帽子の、女優の様な雰囲気を醸し出していた美しい女性。
耀子先輩は彼女のことをこう呼んでいた。
「先代の耀公主、