幸せな子どもたちへ(1)

文字数 1,073文字

 いいかね、よくお聞き。
 きみたち、生きているんだよ。

 どうしたわけかね。ここにいる── ここに、いる。
 ここにいることは分かるね?

 ここにいるって、きみは知る。それが、生きている、ってことなんだ。
 どうしているのか、分からないね。

 お母さんのお腹の中で、きみは大きくなって、お母さんが痛い痛い思いをして、きみを産んでくれた。
 きみは、生まれて── 今、ここにいるんだ。

 どうしてお母さんのお腹にいたのか。きみは、どこから来たのか。
 お父さんとお母さんが愛し合ったからだ。愛っていうのは、抱きしめ合うこと… 好きになった相手の身体を抱きしめて、相手からも抱きしめられてね…

 生き物、この世にあるもの、アリやチョウチョ、鳥やミミズ、みんな生き物は、いのちを育むために生きているんだよ。傷つけ合うために、まして戦争なんかするために生きているんじゃない。

 おとなは、ずるいところがある。きみたちを、こどもだからって、見下すようなところがある。でもきみたちも、おとなも、人間っていうものなんだ。

 自分だけが人間なんじゃない。ひとりひとり、背格好、考え方、言うこと、違うけれども、みんな人間っていうものなんだ。

 いいかい、人間も、ほかの生き物と同じ様に、いのちを育むために生まれてきたんだ。きみは、大きくなっていくよ。それが育むということ、育つということだ。

 大きくなることは、身体だけが大きくなることじゃない。自分と違う考え方をする人間を、受け入れていくこと。花を見て、「これはゴミだ」と言う人もあるだろう。

 どうしてその人は、花がゴミに見えたのか。それを考えることが、「受け入れる」ってことだ。「ばっかじゃない」と相手をばかにすることは、受け入れることにならない。受け入れて、受け止めて、その人と一緒に考えよう。それから、自分には花に見える、と言ってみよう。

 自分と違う人を、人間は攻撃したり、虐めようとする。でも、そんなことをするために生まれてきたわけではないんだよ。そんなことのために、生きているのではないのだよ。

 人間は、考えることができる。虫や鳥も、考えているかもしれない。それは想像するしかない。想像すること、考えること。鳥や虫はわからないけど、人間はそうすることはわかるね?

 それはきみひとりがそうしているのではない。きみも、きみも、きみも、そうしているんだ。それが「自分」というもので、ひとりひとりに「自分」というものがあるんだね。

 きみはひとりだけれども、ひとりで生きているわけじゃない。
 そのことを、どんな時も、忘れないでいてほしい。
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