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文字数 1,084文字

 我慢は、誰でもしていることだ。生きているということは、いいことばかりでないからね。思い通りにならないことの方が、よっぽど多い。生まれて来たのだって、自分の思い通りでなかったかもしれないのだからね。

 きみは、自分が生きていると知って、初めて生まれたことを知った。知らなければ、ずっと、生きていることを知らなかったね。
 生きていくことは、我慢することかもしれない。でも、その我慢する場所を、きみは選ぶことができる。

 多くの大人たちは、不本意に生きていると僕は思う。自分の好きなことをしていないということだ。してこなかった、させられなかったのかもしれない。
 そうして、あきらめてしまったんだ。

 大人たちはみんな元気がないだろう? 下ばかり向いて、満員電車に乗って、ネクタイで自分の首を絞めて、ロボットみたいに生きているね。

「これが当然だ。こうしないで、どうやって生きていくんだ」なんてね。
 哀しいことだよ。何のために生まれたんだろうね。

 人間の集まる所を社会って呼ぶのだけど、社会、おかしなことになっているよ。地球全体が、おかしくなっている。世界中のことを、僕は知らないけれど、この国の中で生きてきて、それはひどく感じているよ。

 毎年この国の夏が暑くなっているし、ひどい雨も降るようになった。ほかの国もそうだ。北極の氷が溶けて、海の水も上がってくる。地面が暑くなれば、火山にだって影響する。遠く離れていても、世界はつながっているんだね。

 そして多くの大人が、知らんぷりしているよ。「知っているよ。でも、どうしろと?」と彼らは言う。恥ずかしいけれど、僕もそのひとりだ。「学校に行かなくてもいい」という小さな活動をして、僕はものを書くのが好きだから、いろんなことを書いてきたけれど、社会を変えるようなことはできなかったよ。

 社会は、みんなで変えて、つくっていくものなんだ。だからって、「みんな」と違う考えをする人を、仲間はずれになんかしてはいけないよ。ひとりひとり違うこと。これが、最初にあるんだから。

「こいつ、キライだ」って人がいても、どうして嫌いなのか考えるんだ。好きになろうなんてしなくていい。ただ、その相手が何かイヤなことを言ってきても、ああ、この人はこういう人なんだ、って確認するだけでいいよ。「好き/嫌い」は、きみ自身の問題だから、それがいちばん大切な問題だから、それ以外は考えなくていい。

 そうして、きみはきみ自身を確認する。いろんな人がいることによって、きみは自分のことを考えていく。自分は何だろう、自分とは何だろう、ってね。これは、ほんとうに大切なことだよ。
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