真実 -8-
文字数 1,262文字
俺は現実に戻ってきた。相変わらず嗚咽を漏らす大戸から慌てて手を離す。今見た映像を整理する。俺は西村に仕事を丸投げしただけに見えたが、一応は上司として最低限のフォローはしていた。そして、俺の死因……。転落死は事故ではなく、西村の手によるものだったのだ。それを知ったうえで、俺は西村を恨む気持ちがあるか考えてみた。不思議なことに、恨む気持ちは全くなかった。最初に西村を追い詰めたのは俺だ。その事実は変わらない。自分のやったことが、自分に返ってきただけのことだ。
「ごめんなさい。私があの時見つけていれば、助かったかもしれないのに……」
彼女もまた、罪の意識に苛まれた一人だった。彼女はこうやって、ずっと自分を責めてきたのだ。罪の意識から毎月墓掃除をしてくれていた。だが、誰も許しの言葉をかけてはくれない。許しの言葉をかけるべき俺は、死んでしまっているから。このまま彼女がつらい思いをし続ける必要なんてない。悩んだが、俺は声だけを彼女に届けることにした。
「大戸さん」
慌てて顔を上げ、キョロキョロと周りを見渡す彼女。
「気のせい……?」
「違う。気のせいじゃない」
「ひっ……!?」
まあ驚くよな……。墓地で死んだ人間の声が聞こえたら。いつもの仕事と違って驚かせたいわけじゃないので、一方的に喋って終わりにしよう。
「毎月掃除に来てくれてありがとう。でも、もういいよ。俺は大戸さんのことを怒ったりしてないから。それに、西村のこと、ありがとう。面倒かけるけど、しばらく支えてやってほしい。それだけだ」
大戸は目を丸くして座り込んだ。何だか悪いことをした気になってくるな……。だが、俺のせいで一生を台無しにしてほしくない。彼女の人生を縛るつもりはないから。少しでも思いが届けばそれでいい。俺は今度こそ霊界に帰ろうと、宙に浮かんだ。
「きゃっ……!?」
近くの『辻』に向かおうとした俺に、彼女の小さな悲鳴が聞こえた。振り返ると、彼女はバイブが鳴る携帯を取り出した。何だ、電話が来てビビっただけか。声かけたのまずかったかな。俺が自分の行動を反省していると。
「もしもし、西村君……?」
電話の相手は西村だったようだ。俺は気になって、彼女のもとに戻った。
「えっ……? どうしたの、ちょっと。西村君!?」
そこで電話は切れてしまったようだ。彼女の顔を見るまでもなく、不穏な空気だ。
「磐田さん! 聞こえますか!?」
大戸が叫んだ。
「幻聴じゃないって信じます! 磐田さん近くにいるんですよね!? お願いします、西村さんを、助けてください!」
俺は少し迷ったが、意を決して『念』を込めた。突然姿を現した俺に一瞬驚いた顔をするも、大戸は涙をたたえた目で俺に訴えた。
「西村君、さっき電話かけてきて……。今までありがとうって言ってきたんです。彼、死ぬ気かもしれません!」
「なんだって!?」
「私、もう誰かが死ぬのは嫌です! お願いします……助けて……」
「西村……。分かった、西村は俺が助ける。今度こそ守って見せる」
俺は彼女のもとを去り、大急ぎで西村の自宅へ向かった。
「ごめんなさい。私があの時見つけていれば、助かったかもしれないのに……」
彼女もまた、罪の意識に苛まれた一人だった。彼女はこうやって、ずっと自分を責めてきたのだ。罪の意識から毎月墓掃除をしてくれていた。だが、誰も許しの言葉をかけてはくれない。許しの言葉をかけるべき俺は、死んでしまっているから。このまま彼女がつらい思いをし続ける必要なんてない。悩んだが、俺は声だけを彼女に届けることにした。
「大戸さん」
慌てて顔を上げ、キョロキョロと周りを見渡す彼女。
「気のせい……?」
「違う。気のせいじゃない」
「ひっ……!?」
まあ驚くよな……。墓地で死んだ人間の声が聞こえたら。いつもの仕事と違って驚かせたいわけじゃないので、一方的に喋って終わりにしよう。
「毎月掃除に来てくれてありがとう。でも、もういいよ。俺は大戸さんのことを怒ったりしてないから。それに、西村のこと、ありがとう。面倒かけるけど、しばらく支えてやってほしい。それだけだ」
大戸は目を丸くして座り込んだ。何だか悪いことをした気になってくるな……。だが、俺のせいで一生を台無しにしてほしくない。彼女の人生を縛るつもりはないから。少しでも思いが届けばそれでいい。俺は今度こそ霊界に帰ろうと、宙に浮かんだ。
「きゃっ……!?」
近くの『辻』に向かおうとした俺に、彼女の小さな悲鳴が聞こえた。振り返ると、彼女はバイブが鳴る携帯を取り出した。何だ、電話が来てビビっただけか。声かけたのまずかったかな。俺が自分の行動を反省していると。
「もしもし、西村君……?」
電話の相手は西村だったようだ。俺は気になって、彼女のもとに戻った。
「えっ……? どうしたの、ちょっと。西村君!?」
そこで電話は切れてしまったようだ。彼女の顔を見るまでもなく、不穏な空気だ。
「磐田さん! 聞こえますか!?」
大戸が叫んだ。
「幻聴じゃないって信じます! 磐田さん近くにいるんですよね!? お願いします、西村さんを、助けてください!」
俺は少し迷ったが、意を決して『念』を込めた。突然姿を現した俺に一瞬驚いた顔をするも、大戸は涙をたたえた目で俺に訴えた。
「西村君、さっき電話かけてきて……。今までありがとうって言ってきたんです。彼、死ぬ気かもしれません!」
「なんだって!?」
「私、もう誰かが死ぬのは嫌です! お願いします……助けて……」
「西村……。分かった、西村は俺が助ける。今度こそ守って見せる」
俺は彼女のもとを去り、大急ぎで西村の自宅へ向かった。