インターン実習 ー9-

文字数 714文字

「霊の方が悪い場合もあるけど、だいたいは生きてる人の方からちょっかい出してるんです。悪霊だったら現世の人を守るけど、そうじゃなかったら霊の方を守るんです。桃香ちゃんみたいに心が不安定な時に人の悪意に触れたら、本当に悪霊になっちゃうかもしれないし。現世に心を縛られている霊に考える時間をあげて、タイミングを見て霊界に戻ってもらいます。霊界で仕事をして暮らすもよし、転生するもよし。私は、現世だけに囚われないで、前に進んで欲しいんです。現世でできなかったことも、霊界でやり直せるから。余計なお世話かもしれないけど、背中を押してあげたいんです」

 空に光が戻ってきた。闇が終わる。

「なんて、偉そうなこと言っちゃいました」

 そう言って、背伸びをする。過去の闇に呑まれず、場所と形を変えて夢を叶え、信念を持って突き進む。それが彼女の強さの所以。俺には、この小さな先輩の後ろ姿が大きく見えた。

「じゃ、私達も戻りましょうか」

「はい。でもどうやって戻るんです? 桃香さんは空に飛んで行ってましたけど、俺はできませんし……」

「大丈夫。霊界に繋がるポイントはいくつかあるから。空にたくさんあるってだけで、地上にもあるから」

 ほっとした俺だったが、俺たちが最初に降り立った場所はどこだったか。

「あの……まさか、今からスタート地点まで戻るんでしょうか?」

「そうですよ? 反対方向の山の中からも戻れるから、そっちが良ければそっちにしますけど。田舎道は長いと飽きますよ~? 私、途中で飽きて、自分一人で空飛んで先に戻っちゃうかも」

「戻りましょう。何なら、またウィンドウショッピングしていいですよ」

 強き華がくすくすと笑う。朝陽に向かって、俺たちは歩き出した。
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