求職活動 IN 霊界 -3- 

文字数 1,027文字

「なんでしょっぱなが悪霊の影武者なんだよ。ツッコミどころ多すぎて頭痛え」

「あなたのご先祖様をお守りする立派なお仕事じゃないですか」

「遠い祖先すぎて親族感ねえよ! てか悪霊に影武者つけんなよ。しかも封印されてんのに自由に出てきて好き勝手してる感じじゃんかよ、この悪霊。守る必要ねえじゃん。てか誰だよ、この悪名名高い武士って」

「個人情報にうるさいご時世ですので、恐縮ですがここでは申し上げられないんですよ」

「そういうとこだけ現世っぽい常識持ち込むな」

 遠藤が、うーむ、と唸って一枚目の書類を空間に投げると、念紙はペラペラと地面に向かっていったが、次第に薄くなって、地面に落ちるころには消えてしまった。

「現世に降りられるし、拘束時間も短いし、福利厚生もしっかりしているのでオススメだったんですけどねえ。でも、強制もできませんからね、他はどうですか?」

 俺の期待はすでにゼロに近いが、遠藤に勧められて他の求人も見てみた。
 二枚目、お笑い芸人。

「いかがですか? 霊魂を笑いで癒す、高尚なお仕事ですよ。しかも、所属先は、あの『凶本興行(きょうもと こうぎょう)』!」

 しかもってなんだよ。ほぼパクリじゃねえか。
 三枚目、タレント・役者。

「霊能人になれる、またとないチャンスですよ! 所属事務所は『HORROR PRO(ホラ・プロ)』ですし、すぐに有名になってしまうかもしれないですねえ」

 ツッコミ入れたほうがいいんだろうか。
 四枚目、歌手。

「こちらはつい最近掲載されたもので、次世代を担うような、霊魂揺さぶるシンガーを発掘すべく、大々的に募集しているそうですよ! 狭き門ではありますが、歌手になれば霊界のアイドルですよ! まずは集団面接からになりますね」

 それって、ただのオーディションじゃねえか? 求人募集じゃねえだろ。

「ちなみに所属事務所は『霊VEX(レイベックス)』です」

 ここが現世だったら訴えられんぞ。

「普通の求人ないわけ?」

「お気に召しませんか。もったいないですねえ。タイミングが悪ければ、紹介することすら叶わないレア求人ですのに」

 うさんくささ満開だわ。

「それでは、接客業などはいかがですか?」

「接客業か……。スーパーでバイトしたくらいの経験しかないけど、できるかな……」

 やっと出てきたまともな求人に、多少なりとも期待が高まる。

「『霊国(れいこく)ホテルでの接客業務』でございますね」

「パスで」

 期待が秒で裏切られた。なんでどこもかしこも、どこかで聞いたことあるような会社ばっかりなんだよ。現世の影響受けすぎだろうが。
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