グリーンランド ヌーク(1)

文字数 602文字

2015年3月13日

 ヌークに到着したのは翌日夜九時頃だった。環境管理局は当然業務終了しており、ライチョウとレミンはヌークで一泊することにした。
 ライチョウは管理局に提出する資料を見直し、最後にコイド島の港建設について、ズリから聞いた話を加えた。“海氷荒らし” については極地村調査資料とは別にまとめて報告しようと考えていたが、データが少ない。昨日オウガンからの報告にあった二月七日セツド村近海で熱波が発生したことと、不自然な海氷割れが起きていたことは、“海氷荒らし” の現象を説明するのに「良い例」ではあるがこれだけだ。他の事例で言えば去年三月、サイガが海水調査用ラジオゾンデでとらえた海面水温上昇のデータと、ノルウェーのメルゲセイルフィヨルドの湾奥に流れて詰まったギザギザの流氷、この二件は観測時期が一致している。
 そしてライチョウが最も決定的だと思っているのは昨日。『コイド島で実際に体感した』それ以上に “海氷荒らし” の存在を証明できることなんてない。
「環号の隊長に会いに行かないんですか?」
 作業している向かいでテレビを観ながらレミンが言った。
「マックスか?」
「ええ」
「行くよ。ヌークにいればな」
「ジュライさんには?ヌークに住んでるんですよね?」
 ライチョウは少し考えた。ジュライはヌークで生活し、クレバスの地底にある “細長い村” へ週二回、生活物資を配達している。
「ああ・・・そのうちね」
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