第39話

文字数 542文字

目を覚ました時、僕は病院に入院していた。翔が死んだと聞かされたとき、喉に苦いものが込み上げてきた。だって僕のせいで翔は死んだんだもの。

翔がいなくなるなんて……。

もう二度と会えないなんて。

翔の姿は心に映し出されるホログラムのようなものでしかないのか。

僕は肋骨と脚の骨折ですんだが、心は粉々に砕け散った。

完全にひとりぼっちだと気づいて、しばらくの間、何もする気になれなくて、なんとなく本をめくっているうちに読み始めたんだ。今まで本なんて読んだことがなかったのに。そして、ある時、ふと、小説を書こうと思い立ち、こんなふうに書き始めた。

翔に出会ったのは、深夜のマクドナルドだった。金がなくて、コーヒーだけで粘っていたら……。

と同時に、ここで松田聖子の『あなたに逢いたくて』が流れ始める。

なぜって、だってこれはすべてショーパブのショーだから。

ライトに照らされた僕の姿をみんなが見ている。出番を終えた翔も舞台袖で最後の僕のソロのダンスを見守っている。

翔の目が優しく僕に言う。「坊や、下手でもいいんだ、心の中にある大切な人のことを思って踊るんだ」

だから、僕は、僕を置いていなくなったお母さん、めぐみを心に思い描きながら踊ったんだ。

たまらなく君のことが恋しくて。



                おわり
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登場人物紹介

昼ドラ、ブルー★ベルベッドの登場人物


ボス

昼ドラ、ブルー★ベルベッドの登場人物


アキオ

昼ドラ、ブルー★ベルベッドの登場人物


幸子

昼ドラ、ブルー★ベルベッドの登場人物


翼(幸子の息子)

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