第31話

文字数 626文字

ーーー脱衣所

なかに入った瞬間になにかおかしいことに気づいた幸子「(落ちていたバスタオルに目をやる)」そのとき、電気のついていないお風呂場から、屋根沿いの雨樋を流れる雨音が異様に大きく響いてきた。その音は、まるで隠れていた恐怖を目覚めさせるかのようだった。

閉まり切っていないお風呂場のドアを開けた瞬間、全身が凍りく。窓は鍵のところが割られ、蜘蛛の巣のようにひびが放射状に広がっていた。さらに、泥だらけの足跡がタイルについていた。

廊下になにかーーあるいは誰かーーいるのかドアの向こう側から、みしみしときしむ音が聞こえてくる。聞こえるといより気配を感じ、幸子はびくっとして背後の閉じたドアに目を向けた。心臓は激しく脈打ち、喉の奥がひりつき、呼吸が苦しくなる。

その瞬間、雷鳴が轟いて、お風呂場の方へ顔をむける幸子。窓の隙間から入り込む風が黒い髪を頬になびかせた。幸子は逃げ出したい衝動に駆られたが、彼女の足は床に釘付けになり、じっと突っ立っていることしかできなかった。恐怖が彼女を飲み込んでいたそのとき、背後のドアが開く音がして、電流のようなものが幸子の背筋を貫くのと同時に目をやると、そこには闇の中に冷たい視線の男が立っていた。悲鳴が喉元まで込み上げ、幸子は短い叫び声をあげたが、その声は雷鳴にかき消され、闇の中へと消えていった。顔を凍りつかせて目を大きく見開いた幸子は、手で口を塞がれたまま、何者かに寝室の中に引きずりこまれた。あっという間の出来事だった。



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登場人物紹介

昼ドラ、ブルー★ベルベッドの登場人物


ボス

昼ドラ、ブルー★ベルベッドの登場人物


アキオ

昼ドラ、ブルー★ベルベッドの登場人物


幸子

昼ドラ、ブルー★ベルベッドの登場人物


翼(幸子の息子)

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