第12話
文字数 661文字
ブルー★ベルベットが終わるころ、翔は目覚めて部屋から出てきた。好きだねとでも言いたげな顔で、何また見てるの?と聞く。
うん。僕は翔より1時間も前に目覚めて、煎れたてのコーヒーを味わっていた。
カップにコーヒーを注いで、革張りのソファーに腰をおろすと、翔は僕からドラマのあらましを聞いた。
そして昼ドラの最後の解説のナレーションーー『時効が迫る10月半ばになると、東京の各新聞が突然、三億円事件の捜査を報道し始めた。事件では、さまざまな手がかりや遺留品が残されており、捜査員は寄せられる膨大な情報を確認するのに忙殺された。その中には「ホモ」とか「ゲイボーイ」という言葉もたびたび登場した。さらに、立川グループや横田基地、犯人単独説や複数犯説も話題となっていた。日本の警察は犯人に迫る一歩手前まで来ていたが、何か巨大な力が捜査を妨げているように思われた。警察関係者も事件への断ち切れない思いを抱えていた』
ブルー★ベルベットが終わると、なぜか不思議な安堵感を覚える。時代は昭和から今の時代に変わり、タイムスリップしたような気分になる。
そして、午後2時、僕と翔はランチを食べに外に出て行く。
住宅街を抜けると、昼間から東中野の商店街は賑わいをみせていた。その中を僕が闊歩して歩き、消火栓標識の赤いポールに手をかけて、ぐるっと身体をまわして歩いた。翔は財布を手に静かに見守るようについてきた。
翔と歩いていると、僕は本当にいい気分になってしまうんだ。自分が自分以上のものに思えてくる。それはまるで神が与えてくれた幸福な日々といった感じだった。
うん。僕は翔より1時間も前に目覚めて、煎れたてのコーヒーを味わっていた。
カップにコーヒーを注いで、革張りのソファーに腰をおろすと、翔は僕からドラマのあらましを聞いた。
そして昼ドラの最後の解説のナレーションーー『時効が迫る10月半ばになると、東京の各新聞が突然、三億円事件の捜査を報道し始めた。事件では、さまざまな手がかりや遺留品が残されており、捜査員は寄せられる膨大な情報を確認するのに忙殺された。その中には「ホモ」とか「ゲイボーイ」という言葉もたびたび登場した。さらに、立川グループや横田基地、犯人単独説や複数犯説も話題となっていた。日本の警察は犯人に迫る一歩手前まで来ていたが、何か巨大な力が捜査を妨げているように思われた。警察関係者も事件への断ち切れない思いを抱えていた』
ブルー★ベルベットが終わると、なぜか不思議な安堵感を覚える。時代は昭和から今の時代に変わり、タイムスリップしたような気分になる。
そして、午後2時、僕と翔はランチを食べに外に出て行く。
住宅街を抜けると、昼間から東中野の商店街は賑わいをみせていた。その中を僕が闊歩して歩き、消火栓標識の赤いポールに手をかけて、ぐるっと身体をまわして歩いた。翔は財布を手に静かに見守るようについてきた。
翔と歩いていると、僕は本当にいい気分になってしまうんだ。自分が自分以上のものに思えてくる。それはまるで神が与えてくれた幸福な日々といった感じだった。