第15話
文字数 2,105文字
あの事件からしばらく桃花は学校を休んでいた。体調自体はすぐに回復したのだろうけど彼女は理研特区の重要人物だ、また身の危険にさらされることがあってはならないと思い欠席しているのだろう。桃花のことも心配だが、それよりも私にはやることがたくさんある。
「さて、ジャスクロも新イベントが始まったからまた2人で作戦練らなきゃね。最近LAMBDAも積極的にチャットを送ってくれるし…」
しかし珍しくほむらは乗り気ではなかった。
「ごめん、有河先生!今日はおうちに帰らなきゃいけないんだ…」
「そうなの?珍しいね、ほむらの家って結構放任な感じだったのに…」
「そ、そうかなぁ?」
「いきなりうちに泊まった時とかも問題なかったし門限とか外泊には厳しくないのかなーって」
「う、うん…そうかも…」
どうにも歯切れが悪いというか、いつもの元気がないように思える。私が勉強を教えているからテストの点数は悪くなくなったはず。何か他の件についてのお説教でも待っているのだろうか。
「まあとにかく、そういうことなら仕方ないね。今日はゲーム出来なさそう?」
「うん、たぶん無理そう…。有河先生1人で進めてていいよ」
「わかった」
まあどこの家にだってたまには家族で真剣な話をすることもあるだろう。だが帰り際のほむらはやけに顔色が悪かったように思える。何か嫌な予感がするのは私の考え過ぎか…
”ミサキ”≫”LAMBDA”:LAMBDAさんは”白鯨”の噂をご存知ですか?
ミサキからこのようなチャットが送られてきた時には心底驚いた。何か目的があってボクに近付いてきているのだろうとは思っていたが、まさかボク以外に白鯨について知っているやつがいるとは…。いや以前謎の警告メールを送ってきたやつがいたな。もしかしてそいつが”ミサキ”としてゲームの方でも接触してきているのか?
”LAMBDA”≫”ミサキ”:まあ聞いたことあるよ。ボク、都市伝説とかそういうの好きだし
”ミサキ”≫”LAMBDA”:本当ですか!?私その”白鯨”について色々調べようとしているのですが、難航してまして…。LAMBDAさんそういうの詳しいのなら是非協力して頂きたいです!
「白鯨について調べている?あんなの素人が調べても何も手がかりは見つからないだろ。てかそもそも”白鯨”そのものの存在を知ることすら難しいのに…」
だが実際の理解度はさておき、ひとまずこいつは”白鯨”というワードにアクセスすることはできているようだ。その時点で只者ではないし、何よりボクの推測が正しければオンラインゲーム素人が白鯨についてボクの協力をあおぐためだけにここまでやったことになる。その執念と才能は半端ないものだし、それ以上にこの”ミサキ”という人物に対して単純に興味が湧いてきた。
”LAMBDA”≫”ミサキ”:いいよ、ボクが知っている範囲だったら協力する。と言ってもジャスクロ内のチャットでやり取りするには危険な情報だろうし他の連絡先を交換した方がいいな
”ミサキ”≫”LAMBDA”:ありがとうございます!確かにここでやり取りできる情報じゃなさそうですもんね…、私としてはリアルで会って話すのが一番安全だと思うのですが
「リアル…?」
正直オフ会はしたくない派だ。だがこの間の不審なメールの件でボクが構築したセキュリティも万全ではないとわかったため、電子メールより会って話す方が確実ではある。
”LAMBDA”≫”ミサキ”:オフか…、あまり好きじゃないけどあれこれ言ってられないもんな。どこで会う?
”ミサキ”≫”LAMBDA”:そうですね…一番わかりやすいのは私たちの学校でしょうか。実は私LAMBDAさんの学校の後輩なんです
「がっこう…まさか…」
そうだ、きっとあいつだ。”ミサキ”なんて名乗っているがあいつがボクを潰すためにネットの世界にまでやって来たに違いない。やめろ、ボクが何をしたって言うんだ。これ以上ボクの聖域を侵害するな…!
”LAMBDA”≫”ミサキ”:よくもボクを騙したな!今度こそ完全に息の根を止めるつもりか!?その手には乗らないぞ!
”ミサキ”≫”LAMBDA”:いきなりどうしたんですか!?何の話か全くわからないのですが
”LAMBDA”≫”ミサキ”:とぼけるな!ボクを不登校にした張本人のくせに!
”ミサキ”≫”LAMBDA”:待って下さい!誰かと勘違いしてませんか!?私化学研究科に来て1年も経ってないですし…
”LAMBDA”≫”ミサキ”:は…?
”ミサキ”≫”LAMBDA”:私はあなたの過去については何も知りません。それでももし不安なようでしたら私がいる場所だけ教えておくので、遠くからみて”その人”じゃないと確認できたら声をかけて下さい
「…」
あの狡猾な魔女のことだ、そんなこと言って周囲に取り巻きを配置しておきボクを無理やり取り押さえるつもりだろう。…だがもし本当に勘違いだったら…?”ミサキ”はボクを追い詰めた魔女じゃなくて白鯨と戦おうとする同志であるかもしれない…。
「そうだ、これを使えば…!」
”LAMBDA”≫”ミサキ”:わかった、じゃあ指定の時間に指定の場所で立っててくれないかな。確認した後向かう
「さて、ジャスクロも新イベントが始まったからまた2人で作戦練らなきゃね。最近LAMBDAも積極的にチャットを送ってくれるし…」
しかし珍しくほむらは乗り気ではなかった。
「ごめん、有河先生!今日はおうちに帰らなきゃいけないんだ…」
「そうなの?珍しいね、ほむらの家って結構放任な感じだったのに…」
「そ、そうかなぁ?」
「いきなりうちに泊まった時とかも問題なかったし門限とか外泊には厳しくないのかなーって」
「う、うん…そうかも…」
どうにも歯切れが悪いというか、いつもの元気がないように思える。私が勉強を教えているからテストの点数は悪くなくなったはず。何か他の件についてのお説教でも待っているのだろうか。
「まあとにかく、そういうことなら仕方ないね。今日はゲーム出来なさそう?」
「うん、たぶん無理そう…。有河先生1人で進めてていいよ」
「わかった」
まあどこの家にだってたまには家族で真剣な話をすることもあるだろう。だが帰り際のほむらはやけに顔色が悪かったように思える。何か嫌な予感がするのは私の考え過ぎか…
”ミサキ”≫”LAMBDA”:LAMBDAさんは”白鯨”の噂をご存知ですか?
ミサキからこのようなチャットが送られてきた時には心底驚いた。何か目的があってボクに近付いてきているのだろうとは思っていたが、まさかボク以外に白鯨について知っているやつがいるとは…。いや以前謎の警告メールを送ってきたやつがいたな。もしかしてそいつが”ミサキ”としてゲームの方でも接触してきているのか?
”LAMBDA”≫”ミサキ”:まあ聞いたことあるよ。ボク、都市伝説とかそういうの好きだし
”ミサキ”≫”LAMBDA”:本当ですか!?私その”白鯨”について色々調べようとしているのですが、難航してまして…。LAMBDAさんそういうの詳しいのなら是非協力して頂きたいです!
「白鯨について調べている?あんなの素人が調べても何も手がかりは見つからないだろ。てかそもそも”白鯨”そのものの存在を知ることすら難しいのに…」
だが実際の理解度はさておき、ひとまずこいつは”白鯨”というワードにアクセスすることはできているようだ。その時点で只者ではないし、何よりボクの推測が正しければオンラインゲーム素人が白鯨についてボクの協力をあおぐためだけにここまでやったことになる。その執念と才能は半端ないものだし、それ以上にこの”ミサキ”という人物に対して単純に興味が湧いてきた。
”LAMBDA”≫”ミサキ”:いいよ、ボクが知っている範囲だったら協力する。と言ってもジャスクロ内のチャットでやり取りするには危険な情報だろうし他の連絡先を交換した方がいいな
”ミサキ”≫”LAMBDA”:ありがとうございます!確かにここでやり取りできる情報じゃなさそうですもんね…、私としてはリアルで会って話すのが一番安全だと思うのですが
「リアル…?」
正直オフ会はしたくない派だ。だがこの間の不審なメールの件でボクが構築したセキュリティも万全ではないとわかったため、電子メールより会って話す方が確実ではある。
”LAMBDA”≫”ミサキ”:オフか…、あまり好きじゃないけどあれこれ言ってられないもんな。どこで会う?
”ミサキ”≫”LAMBDA”:そうですね…一番わかりやすいのは私たちの学校でしょうか。実は私LAMBDAさんの学校の後輩なんです
「がっこう…まさか…」
そうだ、きっとあいつだ。”ミサキ”なんて名乗っているがあいつがボクを潰すためにネットの世界にまでやって来たに違いない。やめろ、ボクが何をしたって言うんだ。これ以上ボクの聖域を侵害するな…!
”LAMBDA”≫”ミサキ”:よくもボクを騙したな!今度こそ完全に息の根を止めるつもりか!?その手には乗らないぞ!
”ミサキ”≫”LAMBDA”:いきなりどうしたんですか!?何の話か全くわからないのですが
”LAMBDA”≫”ミサキ”:とぼけるな!ボクを不登校にした張本人のくせに!
”ミサキ”≫”LAMBDA”:待って下さい!誰かと勘違いしてませんか!?私化学研究科に来て1年も経ってないですし…
”LAMBDA”≫”ミサキ”:は…?
”ミサキ”≫”LAMBDA”:私はあなたの過去については何も知りません。それでももし不安なようでしたら私がいる場所だけ教えておくので、遠くからみて”その人”じゃないと確認できたら声をかけて下さい
「…」
あの狡猾な魔女のことだ、そんなこと言って周囲に取り巻きを配置しておきボクを無理やり取り押さえるつもりだろう。…だがもし本当に勘違いだったら…?”ミサキ”はボクを追い詰めた魔女じゃなくて白鯨と戦おうとする同志であるかもしれない…。
「そうだ、これを使えば…!」
”LAMBDA”≫”ミサキ”:わかった、じゃあ指定の時間に指定の場所で立っててくれないかな。確認した後向かう