第12話
文字数 2,046文字
最近昼食の時間を共にするのは桃花よりもほむらになった気がする。クラスは違えどほむらは勉強でもゲームでも関わりのある友達なので一緒にいる時間が増えるのは当然のことかもしれない。でもそれに比例して桃花と話す機会が減ってしまった。彼女は財閥の令嬢で忙しいし、常に人に囲まれているから正直話せる時間なんてお昼のひと時だけだった。あんなことがあったから心配ではあるけれども、相変わらず家のために頑張っているのだろう。…今は彼女が遠くの存在に見えて少し寂しい。
「ミサキちゃ~ん、今日こそお昼を…」
「有河先生!おひるいこ!」
「…」
「あら、名取さんだったかしら?最近ミサキちゃんがお昼になると姿を消してしまうのはあなたのせいだったのね?…悪いけど今日は私がミサキちゃんとお昼を食べる日なの。自分のクラスに帰ってくれないかしら?」
「あ、あう…。いや例え金ヶ崎しゃんが相手だとしても…あ、あたしは有河先生とご飯を…」
…まるで獅子と鼠だ。片や理研特区の権力者、片や落ちこぼれの一般生徒…可哀想なくらいほむらにとっては不利過ぎる局面である。
「いいじゃない、ずっと独り占めしてたんだから。私にも分けて欲しいわ」
「あ、あの…えっと…金ヶ崎さんには他にもたくさんおともだちがいるんだし…」
「でもミサキちゃんは1人しかいないのよ?」
「あうう…」
待って、これどちらが私とお昼を食べるかを巡って喧嘩してる?いや喧嘩と言うか一方的な脅迫にも見えるけど。
「ね、ねえ2人とも…3人一緒に食べるんじゃだめ?」
「え、金ヶ崎さんも一緒にってこと…!?無理無理、周りから何言われるかわかんないよ!」
「私も出来ればミサキちゃんと2人がいいわ。他の人に聞かれたくない話もあるし」
「えー…なんでそこは2人とも強情なのかな…。うーん、ならこうしよう!当番制!」
「「当番制?」」
「今日桃花と食べたら明日はほむら…みたいな。日替わりにする」
「確かにそれなら平等ね…。まあ私が譲歩しなければならないのは少々不満だけど」
「まああたしは放課後も有河先生と一緒だから?お昼くらいいいけどね!」
「あら、だったら全部譲ってくれてもいいのに…」
「それはだって…他にお昼を食べる友達もいないし…」
「消去法じゃない。私は自らミサキちゃんを選んでいるというのに…」
「ね、ねえ2人とも…あんまりやってると昼休み終わっちゃうから…」
…相変わらずクラスで浮いている私だけど、局所的に人気はあるらしい。
ジャスクロ界の新星、”Hom&ミサキ”…あれからさらに彼女たちはランキングを上げ、今ではトップ10常連にまで成長した。2人を真似てマルチで攻略する輩も増えているようだが大体は失敗しているようだ。それもそのはず、プレイスキルがあって野心的なやつらには気軽に対面で遊べる友達がおらず、一方で友達同士で成り上がりを目指すやつらは普通に実力不足で上手くいかない。あの2人には類まれなるセンスとコンビネーション、そして色々と会話をしていて感じたことだが、何か強い意志がある。やたらとボクと話したがるから最初はトッププレイヤーと交流することを目的にプレイしているミーハーかと思ったが、どうやらそうでもないらしい。あれから何度かチャットを交わしたが、特に”ミサキ”の方…さりげなくだがボクをリアルに引きずり出そうとしているように感じる。
「これだけ頭が良くてゲームが上手いやつ、ジャスクロ以外でも知名度が高くてもおかしくないはず…なのに全くヒットしない…。HNをゲームごとに変えているのか、それとも界隈慣れしていなさそうなチャットからして”目的”のためにわざわざジャスクロを…!?」
やつの目的は一体何なんだ。ボクがLAMBDAだと知ったうえでジャスクロをプレイしているのか。
「~!何故ボクが悩まなきゃいけないんだ!もういい、今日はゲームの気分じゃなくなった!」
PCを閉じてふて寝でもしようと思った時、一通のメールが届いた。
「メール?ゲーム運営からのお知らせ以外滅多に来ないのに…。うげっ、知らないアドレスだ。迷惑メールかよ!」
…いや迷惑メールなんて来るはずがない。このPCだけでなくボクが使っている通信端末や電子機器はどれもセキュリティ面で手を加えている。そんじょそこらの迷惑メールなど通すわけがないのだ。
「…一応、開いてみるか」
若きハッカーよ 鯨を追ってはいけない
枯草の老人より
「…これだけ?鯨ってのは白鯨のことだよな…。でも”枯草の老人”って一体なんなんだよ」
…だがメールの送り主はボクがやっていることを知っている。向こう側の人間か?上手くやっているつもりだったけどボクの足取りがバレていた!?
「…ふん、脅しのつもりだろうけどボクはその程度じゃ退かないよ。こんなメール無視だ、無視!」
そう、ゲームの中の主人公はこんなことで引き下がったりはしない。リアルの世界は駄目だったけど電脳空間ではボクはまだまだ戦える。”白鯨プラン”の全てを暴くのは電子世界の勇者であるボクの使命なのだから!
「ミサキちゃ~ん、今日こそお昼を…」
「有河先生!おひるいこ!」
「…」
「あら、名取さんだったかしら?最近ミサキちゃんがお昼になると姿を消してしまうのはあなたのせいだったのね?…悪いけど今日は私がミサキちゃんとお昼を食べる日なの。自分のクラスに帰ってくれないかしら?」
「あ、あう…。いや例え金ヶ崎しゃんが相手だとしても…あ、あたしは有河先生とご飯を…」
…まるで獅子と鼠だ。片や理研特区の権力者、片や落ちこぼれの一般生徒…可哀想なくらいほむらにとっては不利過ぎる局面である。
「いいじゃない、ずっと独り占めしてたんだから。私にも分けて欲しいわ」
「あ、あの…えっと…金ヶ崎さんには他にもたくさんおともだちがいるんだし…」
「でもミサキちゃんは1人しかいないのよ?」
「あうう…」
待って、これどちらが私とお昼を食べるかを巡って喧嘩してる?いや喧嘩と言うか一方的な脅迫にも見えるけど。
「ね、ねえ2人とも…3人一緒に食べるんじゃだめ?」
「え、金ヶ崎さんも一緒にってこと…!?無理無理、周りから何言われるかわかんないよ!」
「私も出来ればミサキちゃんと2人がいいわ。他の人に聞かれたくない話もあるし」
「えー…なんでそこは2人とも強情なのかな…。うーん、ならこうしよう!当番制!」
「「当番制?」」
「今日桃花と食べたら明日はほむら…みたいな。日替わりにする」
「確かにそれなら平等ね…。まあ私が譲歩しなければならないのは少々不満だけど」
「まああたしは放課後も有河先生と一緒だから?お昼くらいいいけどね!」
「あら、だったら全部譲ってくれてもいいのに…」
「それはだって…他にお昼を食べる友達もいないし…」
「消去法じゃない。私は自らミサキちゃんを選んでいるというのに…」
「ね、ねえ2人とも…あんまりやってると昼休み終わっちゃうから…」
…相変わらずクラスで浮いている私だけど、局所的に人気はあるらしい。
ジャスクロ界の新星、”Hom&ミサキ”…あれからさらに彼女たちはランキングを上げ、今ではトップ10常連にまで成長した。2人を真似てマルチで攻略する輩も増えているようだが大体は失敗しているようだ。それもそのはず、プレイスキルがあって野心的なやつらには気軽に対面で遊べる友達がおらず、一方で友達同士で成り上がりを目指すやつらは普通に実力不足で上手くいかない。あの2人には類まれなるセンスとコンビネーション、そして色々と会話をしていて感じたことだが、何か強い意志がある。やたらとボクと話したがるから最初はトッププレイヤーと交流することを目的にプレイしているミーハーかと思ったが、どうやらそうでもないらしい。あれから何度かチャットを交わしたが、特に”ミサキ”の方…さりげなくだがボクをリアルに引きずり出そうとしているように感じる。
「これだけ頭が良くてゲームが上手いやつ、ジャスクロ以外でも知名度が高くてもおかしくないはず…なのに全くヒットしない…。HNをゲームごとに変えているのか、それとも界隈慣れしていなさそうなチャットからして”目的”のためにわざわざジャスクロを…!?」
やつの目的は一体何なんだ。ボクがLAMBDAだと知ったうえでジャスクロをプレイしているのか。
「~!何故ボクが悩まなきゃいけないんだ!もういい、今日はゲームの気分じゃなくなった!」
PCを閉じてふて寝でもしようと思った時、一通のメールが届いた。
「メール?ゲーム運営からのお知らせ以外滅多に来ないのに…。うげっ、知らないアドレスだ。迷惑メールかよ!」
…いや迷惑メールなんて来るはずがない。このPCだけでなくボクが使っている通信端末や電子機器はどれもセキュリティ面で手を加えている。そんじょそこらの迷惑メールなど通すわけがないのだ。
「…一応、開いてみるか」
若きハッカーよ 鯨を追ってはいけない
枯草の老人より
「…これだけ?鯨ってのは白鯨のことだよな…。でも”枯草の老人”って一体なんなんだよ」
…だがメールの送り主はボクがやっていることを知っている。向こう側の人間か?上手くやっているつもりだったけどボクの足取りがバレていた!?
「…ふん、脅しのつもりだろうけどボクはその程度じゃ退かないよ。こんなメール無視だ、無視!」
そう、ゲームの中の主人公はこんなことで引き下がったりはしない。リアルの世界は駄目だったけど電脳空間ではボクはまだまだ戦える。”白鯨プラン”の全てを暴くのは電子世界の勇者であるボクの使命なのだから!