145 洞窟探検①

文字数 1,401文字

 ラクトを先頭に、3人は、鉱山の中階層あたりの位置にある、鉱山の中でおそらく一番大きいであろう洞窟の穴の前までやって来ていた。

 「よし、ここから入るか」
 「そうだね」
 「うん」

 ……あっ、なんだろう?この感じ。

 洞窟、ほら穴、ダンジョン……そういったものを探検するというのは、やはり、男のロマンなのか。

 少し怖い気もするが、改めて洞窟を目の前にすると、ワクワクする気持ちもマナトの中に沸いてきた。

 洞窟のその先にある世界に、ついつい、無限の可能性を感じてしまう。

 各々、マナのランプを持つ。

 洞窟の穴の入り口は大きい。3人横一列になっても余裕があるくらいだ。

 「行くぜ」

 ラクトを先頭、次列にミトとマナト2人で、洞窟内に入っていった。

 中も十分、掘削が行き届いていて、別にしゃがむこともなく、進める。

 「おっ、リートさんお手製の、火のマナ石じゃん」
 「あっ、ホントだ」

 また、道の両端、一定の距離を起きながら、赤く着色された火のマナ石の入ったランプが灯り、奥へと行く道を指し示していた。

 ――キランッ。

 ラクトの持つマナのランプに、なにかが反射した。

 「んっ?」

 反射したほうに、ラクトがランプを向けた。

 「あっ、それ、鉱脈ってヤツじゃない?」
 ミトが言った。

 見ると、土や岩に混じって、青く光る水晶のような筋が、洞窟の壁に斜めに通っていた。

 ラクトの向けるランプに反射し、キラキラと輝く。

 「うわぁ、ホントだ。すごい……!」
 「これ、いわゆる宝石の原石じゃねえの!?」
 「へぇ~!」

 こういった発見が、たまらない。

 3人は、さらに奥へと歩を進めた。

 「ちなみにさ、2人は、はじまりの草原の先にある洞窟にも入ったことあるの?」
 ゆっくり歩を進めながら、マナトは2人に聞いた。

 ちなみに3人の中で、キャラバンの村の、マナトが倒れていた小高い丘の草原のことを、はじまりの草原と呼んでいた。

 「もち」
 ラクトが即答した。

 「ホントは、長老から、入るなって、止められてるんだけど……」
 ミトも、苦笑しながら、うなずいた。

 「そんなこと言われたら、逆に入るしかないよな」
 「あはは……」

 ……仕方ない。ラクトはそういう性格だ。

 「でも、何もないじゃん、あの洞窟」
 「うん。行き止まりだよね」

 ……なるほど。

 ラクトもミトも、どうやら洞窟の奥までは、たどり着いてはいないらしい。

 「あそこで儀式するっつっても、正直、俺たちはよく分かってねえんだよ」
 「……」

 ……今度、長老にお願いしたら、みんなでマナの洞窟の奥、行かせてもらえないかなぁ。

 親友に、隠し事はあまりしたくない。あの最高の景色を、共有したいとマナトは思った。

 「おっと、暗くなってきたぜ……」

 ラクトが足を止めた。

 両端のマナのランプが、途絶えた。

 暗闇が、先に広がっている。

 「ここからが、本番だな」

 3人は、それぞれ持ったマナのランプで、頭上と足下を確認しながら、ゆっくりと、さらに奥へと進んだ。

 「少し、天井が低くなってきたか?……おっと!あぶねえ!」
 「ラクト、しゃがんだほうがいいんじゃない?」
 「あっと!足下がツルツル!」
 「おっと!」
 「わっと!」

 四苦八苦しながらも、3人はとにかく前へ進んだ。

 「……」

 先頭のラクトが背筋を伸ばした。

 「ミト、マナト、どうやら抜けたよう……」

 ――ア~。

 ラクトでもミトでもマナトでもない声がした。
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登場人物紹介

※名前 / 年齢 / 簡単な人物紹介 / 異能力や使用武器 / 「作中のセリフや一言」


 マナト / 23歳 / 元不動産系ブラック会社勤務。異世界転移し、キャラバンの村へ。不思議な力、マナを取り込み能力者となり、キャラバンとしての日々をおくる。 / 水を操る能力 / 「もし、出来るなら……。もう、弱いのは、嫌です!」

※設定とアイコンに多少相違がございますが、ご了承くださいませ。


 ミト / 20歳 / ウシュム地方の村出身。幼い頃にジンに連れ去られ、家族とは生き別れてしまっており、キャラバンの村で育つ。穏やかな性格。少し天然。村の女性に人気。 / ダガーによる剣術 / 「まだ、間に合うって、ことだよ……!」

※設定とアイコンに多少相違がございますが、ご了承くださいませ。


 ラクト / 20歳 / 生まれも育ちもキャラバンの村。幼い頃から憧れていたキャラバンとなり、ミト、マナトとともに交易を経験。好奇心が仇するときもあり、多感なところもあり。 / ダガーによる剣術 / 「俺、ラクト。名前は?どこから来たんだ?」

 ケント / 23歳 / キャラバンの隊長。かつてムハド大商隊に所属していた。冷静で、状況に応じて的確に分析、判断し、またここぞという時に決断力もある。後輩に優しい。おっさん顔。 / 大剣使い / 「これからが大変だぜ。死なないようにな」

 長老 / とにかく高齢 / キャラバンの村の村長。村全体の運営、管理を行う。また、交易会議を主催し、キャラバン達へ指示を飛ばす。マナトのいた世界に興味を持っており、度々マナトに聞いたりしている。 / 杖 / 「だって、最終試験で密林の奥深くまで行くの、めんどくさいんじゃもん」

※名前 / 生息場所・区域など / 簡単な生物紹介 / 作中における顛末や活躍など / 「作中の鳴き声、セリフなど」


 グリズリー / クルール地方はじめ、ヤスリブ全体の密林などに生息 / 鋭い牙と爪の、巨大な熊 / マナトが異世界転移した日にキャラバンの村を襲った。ミトと一対一で戦い、倒される。 / ――グオォォォ!!

 ドレイク / ウシュム地方 / 巨大な翼の生えた竜 /ウシュムの守り神の末裔と呼ばれ、マナトが異世界転移した日、上空を飛び去っていった。

※設定とアイコンに多少相違がございますが、ご了承くださいませ。


 人魚の主 / クルール地方。キャラバンの村、マナの洞窟の奥 / 巨大な魚に巨大な人間の腕と足の生えた生物 / クルールの守り神の末裔と呼ばれ、人間の言葉を話す。マナトにマナの泉を注ぎ、能力者にした。 / 「オマエハ、十ノ生命の扉ヲ開クカ……」

 ラクダ / ヤスリブ全体の乾燥地帯に生息 / 現実世界にも存在する。地方で若干、種が異なる / 暑さと寒さ、そして乾燥に強い上、成体は最大300キログラム弱まで荷を積むことが可能。とても穏やかな性格で、キャラバン達のよきパートナー。 / ――フォア~。


★『アクス王国、行商篇』より登場

 ウテナ / 20歳 / メロ共和国のキャラバン、フィオナ商隊の一員。ラクトに入浴姿を見られたことで不和だったが、共行を通して徐々に和解。お酒を飲むとキャラが変わる。 / ナックルダスターによる打撃 / 「……チッ、仕方ないわね。次、入ってきたら、そこの連れごと、2人とも殺すからね」


★『アクス王国、行商篇』より登場

 ルナ / 20歳 / メロ共和国のキャラバン、フィオナ商隊の一員。かつて一度、マナを取り込もうとしたが、身体が受け付けずに失敗する。能力者であるマナトと出会い、もう一度、マナを取り込む決意をする。 / ダガーによる剣術 / 「ウテナ。騒ぎ起こすと、フィオナさんに……」


★『アクス王国、行商篇』より登場

 フィオナ / 25歳 / メロ共和国のキャラバン。隊長。ケント商隊のアクス王国交易に共行。落ち着いた大人の女性。戦う姿はケントいわく「かっこエロいぜ」 / レイピアによる剣術 / 「でも、ウテナ、とっても乙女なのよ。かわいいでしょ?」


★『アクス王国、行商篇』より登場

 ジン=マリード / 見た目50歳くらい / アクス王国に潜伏していたジン。普段は料亭の亭主として振る舞っており、『秘境の亀肉』と称して別の肉を提供していた。マナト達と交戦となり、圧倒的な力を見せつけ、マナト達を瀕死に追い詰める。 / 小包丁、後に炎と?の能力 / 「はいはーい!」


★『アクス王国、行商篇』より登場

 ジン=グール / 見た目5、6歳くらいの子供 / アクス王国と西のサライの間にいたジンで、ケント達と激しい戦いを繰り広げた。ジン種の中で、死にゆく人間のもとに訪れ、喰らうという習慣があり、普段はあまり人前に姿を現さないとされる。 / 伸縮自在の触手 / 「楽しかったよ、お兄ちゃんたち」

★『アクス王国、行商篇』より登場

スナネコ / ヤスリブ全体の乾燥地帯に生息 / 現実世界にも存在。ネコの中でも特に小さい。 / ケント商隊がアクス王国帰還時、立ち寄ったオアシスで遭遇。ラクトに捕まえられ、食べられようとしたのをマナトが庇い、ラクダに乗ってキャラバンの村へ。マナトとステラに懐いている。ラクトには警戒している。愛称は「コスナ」 / ――ニャッ!ニャッ!


★『アクス王国、行商篇』より登場

 ステラ / 20歳 / キャラバンの村の伝報担当。交易会議で取り引きの決まった交易国へとあらかじめ伝報を送っている。ミトに好意を抱いている。 / 特になし / 「ウフフっ、かわいいコ。それじゃ、行ってらっしゃい……チュッ」


★『キャラバンの村/ムハドの帰還編』より登場

 ルフ / ? / 茶色い羽毛、白と黒の翼の、巨大な鳥 / 成体になると、グリズリーをも丸呑みにしてしまうほどで、ヤスリブの空を飛ぶ生物の中で、最大級の大きさ。翼を羽ばたかせるだけで、激しい風が起こる。伝書鳥として、各所に書簡を届ける。伝報担当のステラに懐いている。 / ――ピュアァァ!!


★『キャラバンの村/ムハドの帰還編』より登場

※名前 / 年齢 / 簡単な人物紹介 / 異能力や使用武器 / 「作中のセリフや一言」

※設定とアイコンに多少相違がございますが、ご了承くださいませ。


 ムハド / 25歳 / 大商隊を率いて遠征交易を行うキャラバンの村の英雄的存在。村人みんなから好かれている。長老とは義孫の関係で、実の両親は行方不明になっている。 / ? /  「俺、ムハド。この村の、キャラバンだ。よろしくな」


★『キャラバンの村/ムハドの帰還編』より登場

※設定とアイコンに多少相違がございますが、ご了承くださいませ。


 セラ / 25歳 / ムハド大商隊の、3人の副隊長の一人。男も女も見とれてしまうような美しさ。妹に、伝報担当のステラがいる。 / ? / 「ウフフっ、これから大変よ。まあでも、一緒に、頑張りましょうね」


★『キャラバンの村/ムハドの帰還編』より登場

※設定とアイコンに多少相違がございますが、ご了承くださいませ。


 ジェラード / 30歳 / ムハド大商隊の、3人の副隊長の一人であり、もっとも古参。大衆に紛れ込んで人間観察していたり、いきなり脱いで筋肉を披露したり。背中の大きな切り傷は、セラにつけられたもの。 / ?(ムシュマのマナを取り込んでいる) / 「これ、やるよ。笑わせてもらった、お礼だ」


★『キャラバンの村/ムハドの帰還編』より登場

 リート / 26歳 / ムハド大商隊の、3人の副隊長の一人。村にいるときは、長老の家の書庫にいることが多い。向学心が強く、ジンやマナなど、いろいろと興味を持っている。かつてのムシュマ交易の際、出現したジン=グールと戦い、撃退している。 / 炎を操る能力 / 「ジンのいない世界って、どう思います?」


★『キャラバンの村/ムハドの帰還編』より登場

※名前 / 生息場所・区域など / 簡単な生物紹介 / 作中における顛末や活躍など / 「作中の鳴き声、セリフなど」


 クラシックコウモリ / 鉱山の村、洞窟内 / 美しい音色を発するコウモリ / マナト達が鉱山の村の洞窟探検をし、その奥で出会った。女性の、高音の美しい声のような超音波を発した。 / ――アアアアアアア~。


★『鉱山の村、交易編』より登場

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