第18話:母の老人ホーム入所と激動の経済

文字数 2,242文字

 次に、七郎が、実は、この近くに私が開設した「入間の里」と言う名の学生寮があって週に何回も通っていることを話した。この近くの老人ホームなら恵子を連れて毎週、来ることができるんですよと伝えた。本当それなら寂しくないわと言ってくれた。七郎さんの「入間の里」学生寮を見せて下さると言うので行く事にした。学生寮に連れて行くと、お母さんが、立派で新しい建物ね、お金かかったでしょうと笑いながら言った。

 その日は、ちょうど老人ホームを紹介してくれた木元さんが来られていて母を紹介した。木元さんが七郎が自費でこの施設を立ち上げて全国からの苦学生に安く部屋を提供して地元のシングルマザーに仕事を与えてくれたんですよと話してくれた。お母さんが、すごい本当と七郎に聞くので、照れくさそうに、まーねと言った。お母さんが、この人、娘の旦那さん、何だけど、どんな仕事をしてるのか生い立ちのことなども、全然、教えてくれないのよと言った。

 でも素晴らしいことをしていたんですね見直したわと笑った。オープンカフェで料理長の鈴木良三さんが、お母さんに挨拶して、せっかく、お見えになったんですから、おいしい狭山茶と名産のまんじゅうと、お団子を食べていって下さいと言ってくれた。少しして持ってきてくれた。お母さんは、実は、私、お茶には、うるさいのよと言い、狭山茶の香りをかいで、ゆっくりと味わうように飲んだ。おいしい本当に美味しいと言った。

 料理長が喜んで、お口に合って光栄ですと笑いながら言った。すると回りの連中からも笑い声が聞こえた。母は、すっかり機嫌を良くしてくれ、いろんな人の挨拶に答えてくれた。30、40分後、七郎と奥さんと、お母さんが、みなさんにお別れを言って帰路についた。帰りの車中で、お母さんは上機嫌で恵子、良い旦那とめぐり逢って、よかったねと言った。恵子さんが、お母さんの子だから良い男を見つける才能があるのよと笑って返した。

 母が、すっかり元気になって入間に連れてきて良かったと思い母に入間の施設に入居して良いのですかと聞くと景色も良いし気に入ったわ。それに、あなたたちが毎週来てくれるというのだから入間の老人ホームに入りますよと言ってくれた。その後、お母さんは旦那さんの死を乗り越えて元気を取り戻し、若い頃の様に元気な、お節介さんに戻る事ができた。その後、恵子にも秘密にしていた「入間の里」学生寮の仕事やスイスのプライベートバンクの話も打ち明けた。

 特にスイスのプライベートバンクでの投資について七郎が忙しい時、恵子さんが代わってメールを打ってプライベートバンクの職員にいろんな指示をしてくれた。七郎は入間での仕事に専念できるようになった。また約束通り、毎週1、2回、お母さんの施設への訪問は欠かさず行う様にした。次に世界の情勢に目を向けてみると2016年、17年の2年で悪い方へ向かった。

 2016年7月のイギリスのEU離脱に始まり、翌年、勝つはずのなかったトランプ氏が大統領になった。オバマ前大統領の融和路線から強硬路線に転換しアメリカンファーストと言う孤立主義に突き進んだ。実際に就任直後のTPPからの離脱、2017年6月の地球温暖化対策・パリ協定からの離脱と時代に逆行した施策をとり続けたが株価は上昇し続けた。

この原因は5年前から景気低迷の対策として各国が金融緩和して大量に大金を刷って市場にばらまいた緩和マネー、低金利が原因だろうと想像された。巨額の借金低金利で借りて機関投資家、ヘッジファンドなどが株を買い続けたためだろうと言われた。米国株などは株価の天井知らすの上昇だった。2017年7月の九州北部豪雨や8月のバルセロナでの車を使ったテロ事件と自然災害やテロが世界で多発し混沌とした時代が続いた。

 しかし2018年4月に入り、ダウ指数が大きな下げのを見せ始めマイナス3%下落するが日が、あらわれた。世界中の緩和マネーが米国株に流入していたので大きな下げが起きると下げ足を速める悪循環が起きた。加えて中国の引き締め政策により中国経済の成長率が5%代に落ちるだろうと予測された。七郎も米国発のバブル崩壊を恐れて投資資産を現金化したいと思った。

 2016年2月にスイスの銀行に預けた9900万ドルが米株の急上昇で投資開始から約2年、2018年1月24日までに40%も上昇してきた事で、この急上昇がバブルだと感じ換金する事にした。9900万ドルが13900万ドルになった。その1億3900万ドルのうち3900万ドルを円に両替して41億円を日本の七郎の口座に振り込んでもらった。

 残金29.5億円と41億円で計70.5億円となった。スイスの銀行に残した1億ドルを現金のまま利子はつかないがおいてもらう事にした。この事を知った恵子は、その金額に驚いた。こんなに持ってるんだったら、もっと豪華な結婚指輪もらうんだった。これからでも遅くないから宝石でも買ってねと笑った。わかりました必要なものは買いましょうでも不必要で華美なものはいりませんと言った。

「入間の里」学生寮は10億円以上の費用がかり今後も毎年数千万円の費用が必要なんだからと説得した。でも本当に驚いたわ、まるでジェームズボンドみたいと言った。恵子が言うので、それなら君はボンドガール、どおりで美人な訳だと、七郎が、おどけて言うと恵子さんが、ふざけないでよと頭をたたかれた。この事があって夫婦の中も、お母さんとの信頼関係も強固なものになった。
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