第15話:寮の取材とティムから義捐金

文字数 2,352文字

 11月に米国からコストコ本部の方が4名がやってきた。コストコのどこが良いか聞いてきたので安くて大量で品質が良くガソリンも買えるし全部カードが使えると答えた。訪問団の団長が、今、言われたことが我が社の一番の売りなんだと言った。七郎が流暢な英語で質疑応答をするのに驚いて、米国に留学したことあるのと聞いてきたので、もちろん「オフ・コース」というと大学はと聞かれサンノゼ州立大学の電気工学科にスカラシップで入学したと答えた。

 すると、七郎の事に話題が向かいそうになったので、これ以上は秘密とウインクした。ジョークも良いねと笑い声が上がった。訪問してきた全メンバー4人と固い握手とした。帰り際、訪問団の団長さんが名刺をくれコストコのメンバーカードとクレジットカードの番号を教えてくれと言った。何故と聞くと、クレジットのポイントを常時3倍することと年に数回、無料でコストコ製品をプレゼントするからと言ってくれた。

 この申し出には驚いて軽く団長さんをハグした。みなさん、満面笑みで帰っていった。その2週間後、タイの訪問団が訪れた、タイの財閥の若手メンバー5人がやってきた。訪問の目的を七郎が尋ねると、団長と思しき人が、今後、タイでも、貧しい若者や女性を助けるための福祉施設をつくりたいと思っているので、この施設を参考にしたいと言った。七郎が英語で質問応答が先か施設見学が先が良いか聞いた聞くと見学が先と言った。

 そこで10時過ぎ、学生は1人もいないので部屋を一部見せた。するとコンパクトだが機能的に机椅子、ベッド、エアコンが揃っていて快適そうだと感想を述べた。次に料理長に調理室を案内してもらうと大きな圧力鍋と米の洗浄機を見て日本の技術は素晴らしいと言った。何人で食事を作っているのか聞かれ料理長以外に女性5、6人でやっているというと、すごい効率的だと驚いていた。

 野菜を切るための大型のスライサーを見て、これ便利そうで良いね1つもらいたいくらいだと言い笑った。写真を撮って持ち帰るのはOKだよと七郎がジョークを言うと、かなり受けたようで笑い声が上がった。その後、質疑応答が始まり七郎が、なぜ、こんな大規模な施設を慈善事業として始めたのかという本質的な質問には困った。おもむろに私が神様から多くの幸運をもらったから、そのおっそ分けをしないといけないと思ったからだと言った。

 すると君は、仏教徒かと聞かれ、残念ながらクリスチャンですと答えた、信心深いのかと聞くので、そうでもないキリストよりも自分の奥さんの方を信じるというと、また笑い声が上がった。ジョークのセンスが良いが、もしかして海外留学したのと聞かれ米国の大学で4年間、学んだと答えた。タイからの訪問団が、最後にタイで同じ様な施設をつくりたが、大事な事は何かと聞かれ継続する事と答えた。そのためには、自分の気持ちを制御して平常心でいる事が、大切の話した。

 もう一つ、こういう活動に一般市民を巻き込んでいく事、この2つが大事だと言うと団長と思しき人が近くに来て肩を叩いて握手を求めてきて、次々と全員と握手し終了した。また、わからないことがあればメールで教えてよと言うのでメールアドレスと「入間の里」のホームページを教えた。2015年2月1日に七郎にティムと言う名前でメールが届いていた。昔、世話になったリチャードの息子のティムからだった。

 ティムとは彼がアメリカの東海岸のニューヨークで働き出してから全く音信不通だった。風の便りでは、ロスチャイルド家の仕事をしてロービイスト「政治圧力団体・スポンサー」という政治家・団体を動かす仕事をしていると聞いた。いまアメリカ支部のバイス・プレジデント「副社長」No2に上り詰めたと書いてあった。七郎の事はコストコ本社メンバーが日本の慈善団体の学生寮を訪ねたという小さなニュースで知ったそうだ。

 この記事を見て、あまりの懐かしさにメールを送ったという。そこで継続的に寄付活動をして上げたいと思っていると書いてあった。ついては寄付した時の入金明細書と七郎の活動団体のサインが欲しいと書いてあり了解した。どの位、送ったら不自然にならずに都合が良いかと書いてあった。そこで寄付の送り先を団体とティム個人と2口に分けて月1万ドルずつ七郎の慈善団体の口座に入金して欲しいと書いて返信した。翌日ティムから了解、今月送ると書いてあった。

 おもわぬスポンサーがついて、天国のリチャードにお礼を言った。数日後、奥さんの恵子さんの紹介かたがたリチャードの息子のティムに助けてもらう、お礼のメールを送った。この日は曇っていたがリチャードの、お墓に出かけた。参拝を終えた直後、一瞬、雲ががきれて太陽が顔を出し、七郎と奥さん頭上に日が差した。まるでリチャードが微笑み掛けた様な気がして七郎は、運が向いてきたぞと明日からの活動に力がわいた。この出来事をティムへのメールに書いた。

 また七郎の財産でスイスの銀行のプライベートバンクに口座を開きファンドで運用したいと書いた。返信で1万ドル以上ならOKと書いてあったので、後日、送金予定額が決まったらメールすると書いた。2016年2月12日、全財産の残金が130億円、76%の100億円を米ドルに両替し約9900万ドルを送るとティムにメールを送った。この9900万ドルを投資ファンドで運用にすることにした。

 その残りの30億円を「入間の里」の運営資金に充てようと考えた。実際の費用は、給料総額が2400万円、食費2000万円、電気ガス水道600万円、その他諸費用1000万円を含めて、年間4000万円程度。残金が3億円を切った段階でスイスのファンドから日本に七郎の米ドル口座に、送金してもらうように手配した。
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