第12話:苦学生の寮の完成

文字数 2,292文字

 七郎は木元さんに電話して入間の地元で料理経験のある人を募集したいので探すのを手伝って欲しいと伝えた。わかりました。期間は、と聞くので半年間というと、それだけあれば探せるかも知れないと言った。6月を迎える頃には入居の学生の選択も決まって通知した。中には、ご両親から感謝の手紙も多く含まれた。梅雨になり、それが、あけると暑い夏、工事現場に冷たいものを持参で出かけた。

 ビルの外観がほぼ完成して、実際に間近で見てみると大きな建物で驚いた。現場監督が順調に仕事が進んでいて今年は建設会社もそれ程、忙しくないので10月には完成する可能性が高いと話してくれた。もう少しでビルが完成し全員でビルの外構と一緒にアスファルトで駐車場をつくる。部屋や簡単な間仕切りなので簡単、水回り、電気関係、エレベータ会社の連中もビルができ次第、一斉に工事にかかれるようだと言っていた。

 10月初旬に入間の木元さんの所へ行きビルの2、3、4階の男女の学生72人が決定。1階の調理室で、できるだけ多くの食事を提供する事、その時、この地のシングルマザーを中心とした収入の少ない女性達に手伝ってもらうことを提案した。女性達が働いている間は1階の遊戯室で、お母さんが働いている間、子供達の面倒を見てくれる女性を雇い少しでも多くの給料を出したいと言った。

 確かに貧困のお母さん達が、この地域でも問題になっているので、それは助かると言ってくれた。もう一つ料理人の件を聞くと見つけたよと言った。24歳で、今、修行中の料理屋の息子、鈴木良三さんで、専門学校を出て栄養士と衛生管理者の資格を取得したそうだ。将来は実家の料理屋を継ぐつもりらしいが、それまで手伝ってくれるという。七郎さんが来るというので今晩、彼の実家の料理屋で会う手はずになっていると言った。

 夜18時、料理屋で食事を終わった時、修行中の料理屋の息子の鈴木良三さんがやってきた。がっちりとした体格の好青年といった感じ。紹介してくれた木元さんにお礼を言って失礼した。涼しい風が吹き出した2013年10月下旬、遂に地上5階建ての学生寮が完成した。11月10日に入居できることを入居予定の学生達に通知した。11月1日に工事完成の地鎮祭を行い、木元さんや鈴木良三さんや役場の関係者をお呼びして開催した。

 近くの人が来られていたので、この施設のパンフレットを渡した。その後、地鎮祭みたいに、前途を祝して餅まきみたいに、せんべい、お菓子、チョコレート、餅をまいて終了した。11月10日の10時前に鈴木良三さんが既に来ていて、調理器具、電化製品の具合などをチェックした。その後、七郎が来た時に、挨拶後、衛生管理者の看板をどこにつけるか聞かれ、調理室の入り口のよく見えるところに、貼ることにした。

 料理担当チーフの鈴木良三さんが七郎に今日の昼飯はどうしますかと聞かれたので、簡単なものでいいよと言うと具だくさんおむすびと寿司めしをいれたいなり寿司でもつくりますかと言われたので、それで十分だと答えた。一応、味噌汁もつくりますと言い発泡スチロール食器も用意しますと言った。長テーブルと折りたたみ椅子と白いシーツは1階の倉庫に入っていますから宜しくと言った。すると彼の車で彼女と思われる美人さんと買い出しに出かけた。

 少しして帰ってきて2人で料理の用意を開始。木元さんや建設会社の職員と三保さんと山下洋一さんが11時に手伝いに来てくれた。そこで倉庫に入っている長テーブルと折りたたみ椅子で学校の教室の様に2列に並べて78人の席を作り一番前のテープルにマイクを設置し反対向きに椅子を置き対面で話ができる様にした。その他、壁の前に長いすを8つ48人分用意。

 11月10日の11時の開場の時間には入居学生の名前と部屋番号を入り口の近くの壁に貼りだした。それを見て、続々と2階の男子寮と3階の女子寮にわかれて入った。その後、七郎と三保さんと山下洋一さんが、具入だくさんおにぎりと、ちらし寿司いり、おいなりさんを大きな皿に分けて長テーブルの方へ運んだ。すぐ後、味噌汁の入った大きな鍋2つを持ってきた。ウーロン茶や紅茶、お茶などをおいて、ご自由に食べて下さいと大きな声で言った。

 開場してから30分で一通り手が空いた人から順番にテーブルにつき食事を食べた。その後、簡単な自己紹介をしてもらった。学生は東北、北海道、九州、四国、山陰、沖縄など地方出身者が多い。自己紹介が終り七郎が学生寮のみなさんに学生生活に慣れた後から地元の中学、高校生の家庭教師を斡旋したいと思っています。それで得られた、お金で自転車や本などの購入したり見聞を広めるための国内、海外旅行に使ってもらいたいと考えていると話した。

 すると学生からは是非、宜しくお願いしますとの声が上がった。その他、食事も安く提供しますので利用して下さいと伝えた。今日、おにぎりと、おいなりさんと味噌汁のサービスがありますので食べていって下さいと言った。次に料理担当の鈴木良三さんが頑張って手軽で、うまい料理を提供しますので宜しくと言った。学生達から拍手があがった。その後、木元さんが地元で農家をしている木元です。

 何か困ったことや悩み事があれば、近くに住んでいるから、相談にのるよと挨拶した。学生達からも宜しくお願いしますとの挨拶があった。最後に学生寮の中の備品で問題あったら、料理人の鈴木良三さんか、私、木下七郎に電話して下さいと言った。週に1回は、顔を出すつもりですので宜しくと言って終了した。その後、みんなで食事を残さず全部平らげ開所式が終了した。
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