4. ついに診察を受ける

文字数 1,217文字

 (1.より要約文からの引用)
 ある日、本人が、苛立ちやすくなっているのは病気のせいだ、と言い夫人に受診を勧められた。打診、聴診、問診の末、遊走腎、慢性カタル、盲腸炎の可能性を指摘され、医者は中でも盲腸炎と診断した。尿検査によっては、新しい兆候が見つかるかもしれないとも言われた。この頃の痛みは、一瞬も休むことのない、鈍い、疼くような痛みだった。尿検査の結果で、指示も薬もがらりと変わった。その後もいろいろな医者の診断を受けたが改善しない。ここで代替医療を試したり、勧められたりもした。

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 夫婦の心理的な駆け引きも面白いのですが、本稿のテーマではありませんので割愛して六十三ページです。なんと前回から二ページしか進んでいません。ここでようやく受診です。病院に行き、診察を受けたようです。往診ではないので、診察や検査はこの当時でもある程度できただろうと思います。問診の他、打診、聴診が行われたことが明記されています。
 診察による医師の診断、見立てが説明される場面も法曹家のイリイチ氏自身の仕事と比べていて面白いです。でも本文にある通り、患者が知りたいことは自分が危険かどうか。全くその通りですね。本音だと思います。そして可能性のある病名として、「遊走腎」「慢性カタル」「盲腸炎」の三つを挙げられました。こういうのを「鑑別疾患」といいます。

 現代においてはここで少なくとも血液検査、尿検査、腹部の画像検査を行うでしょうね。味覚異常もあるので、口腔内診察も丁寧にやり、場合によっては頭部の画像検査もやってしまうかもしれません。画像検査は、腹部なら超音波(エコー)とCT(コンピューター断層撮影)ですかね。特に違和感のある右側腹部は見たい。エコーは痛いところ、疑うべきところを納得いくまで観察できますが、太っている患者さんや腸のガスが多い方だと難しいです。また、検査を行う人間(医師や検査技師)によって技術に差があります。CTはそういう点を補い、しかもあまり気にしていなかったところの画像も撮れるので見逃しは減ります。もちろん被ばくします。日本における年間自然被爆量の平均からみると約五倍。発がんリスクが明らかに上がるレベルと比べると約十分の一。これをどう考えるかはそれぞれですが、イリイチ氏は四十五歳。当時のロシアの四十五歳時点での平均

などは分かりませんが、ネット検索では一九五〇年代で男性の平均

寿

が六十二歳くらい(http://honkawa2.sakura.ne.jp/8985.html)。まあ、撮りますかね、今の日本なら。そうすると、この三つの病気はたいていの場合区別がつきます。診断が出来れば、適切な治療に進むことができます。

 頭部・頸部はやるならMRI(核磁気共鳴画像法)ですかね。でも麻痺や構音障害などもないようなので、やはり優先度は低いように思います。

 さて、次回は「遊走腎」の可能性について考えてみましょう。
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