3. 初発症状から考える

文字数 1,453文字

 (1.より要約文の引用)
 口の中に変な味がし、腹部の右側に違和感を覚えるようになっていたが、病気と名付けるほどのものではなかった。が、ある時から常にわき腹が重苦しく、気分が悪くなり、それがどんどんつのっていった。この頃、夫婦の間で口論が増えた。

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 さて、本文は六十一ページです。4章の書き出しが「家族はそろって健康だった」。含みありまくりの一文ですね。直後に上記要約における最初の症状が出てきます。ここから悪化の一途なので、これを初発症状としました。
 
 口中にへんな味。実に分かりにくいような、分かりやすいような表現です。味覚障害は新型コロナでも話題になりましたね。実はよくある訴えで、原因を挙げるとなればいろいろです。唾液の分泌障害など、口腔内の乾燥。口腔内に何か出来た(腫瘍でも化膿性のものでも)。舌の障害。これは更に、表面の問題と分布する神経の問題に分けられると思います。神経の問題は、原因として感染症や糖尿病が考えられます。もちろん舌を動かしたり(舌下神経)、味覚を支配する神経(顔面神経・舌咽神経)の経路に腫瘍ができているというのも有りです。あと、教科書的には、亜鉛欠乏。そして薬剤性や心因性ですかね。前回考察した腹部外傷が直接影響することは無さそうですが、どうしましょう。変な味、ですから圧迫されて胃液が上がってくるような味だとすれば、なんとか関連づけられそうな気もします。

 そして腹部の違和感です。右側と明記されます。右の腹部にある臓器。前回も挙げましたが、肝臓、胆嚢、十二指腸や小腸、大腸、これに虫垂が加わります。そして体の真ん中にありますが、膀胱。この右半分。右の腎臓から尿管がつながります。イリイチ氏は男性なので、卵巣や子宮は無いと断定しておきます。あ、イリイチ氏が内臓逆位だったとか、そういうオチは無しです。なんとなくの違和感。やはり外傷が影響しているのでしょうか。内臓以外にも、筋肉や軟部組織が壊れているのかもしれません。そして前回見たように、一時は気にもならない状態となったのに、ある時から常に重苦しくなってしまいました。イライラして、奥様との口論が増えてしまいました。やはり体調は大事ですね。
 問題はここまでにかかった時間が記載されていないことです。この問題は本作品を貫いていまして、やはり問診で時間的なところをしっかり聞き取るのは大事だなあ、と思います。患者の立場でも、正確でなくともよいので、大体の日数なり日付なりを言いたいところですね。少なくとも前回の話で、受傷からは一か月から二か月くらいの時点だと推測できますが。そうすると今は日の単位で悪化しているようなイメージですね。この言葉も聞きなれないかもしれません。急速に進行する状態を、時間単位で悪化する、と表現したりします。例えばコロナの急変はこれ。一方例えば糖尿病の初期などは年の単位で悪化していきますね。気付いたときには……ということで、これも怖いですが、放置しがちなやつです。

 本題に戻りますが、日々悪化するわき腹の重苦しさ。何だか、悪性新生物(癌など)が成長しているようにも思えますが、それなら普通はもっとゆっくり育ちます。むしろ膿が溜まるような場合のスピード感。腹腔内に膿胞でしょうか? だったら高熱があると嬉しい。壁が厚いと高熱は出ないかもしれません。でも、体温や排便の状態、腹部の皮膚所見、便や尿に血が入っていないかなど、知りたいことが書かれていないのです。うむむ、仕方が無いので先を読みましょう!
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