第45話 HDR画像(1)

文字数 1,776文字

1)HDR画像の定義

HDR画像合成については、標準化がなされていません。
また、HDR画像と、HDR風画像の間に混乱が見られます。

したがって、HDRについて、書くことは困難で、正確に書かれた文献はほとんどありません。

ここでは、darktableのHDR合成について書きたいのですが、その前に、現状を整理する必要があります。

厳密なHDRの定義は簡単で、「複数枚数の画像を合成して、センサーのダイナミックレンジの限界を越える画像ファイルを作成する」ことです。

HDR画像ファイルを作成しても、それを見るには、Jpegに変換する必要があります。

Jpegのダイナミックレンジは、8EVで、画像センサーのダイナミックレンジ(10から14EV)より狭いです。ましてHDR画像をファイルをJpegに変換するには困難を伴います。

一般のRAW現像ソフトは、J字型の変換ベースカーブを採用しています。darktableのシーン参照ワークフローのフィルミックRGBモジュールはS字型のカーブ変換カーブを採用していますので、HDR画像への対応はより容易です。

APS-Cやm4/3のようにセンサーの小さなカメラは、センサーにノイズがのりやすいので、暗所の撮影が苦手という誤解があります。しかし、レンズが明るく、手ブレが効きますので、暗所の撮影で困ることはありません。センサーサイズの小さなカメラの欠点は次の2点です。

(1)ダイナミックレンジが狭い。
ダイナミックレンジを拡大する方法にHDR画像があります。この方法は対象が動いている場合には使えません。晴天下のサッカーや野球の試合を、白飛びも黒飛びもなしに撮影するには、フルサイズセンサーのカメラを使うしか方法はありません。

(2)広角のレンズは設計しにくい。
望遠レンズの設計は容易になりますので、これはトレードオフの関係にあります。

センサーサイズの小さなカメラでは、ダイナミックレンジがオーバーしそうな場合には、HDRを試みるべきです。

しかし、簡単にHDR画像ができるかと言えば、問題がありますので、以下に順次説明します。

2)HDR風画像

その前に、混乱を避けるために、HDR風画像について説明しておきます。

写真1はパナソニックのLX100の「インプレッシブアート」フィルタ―を使ったJpeg画像です。これは、典型的なHDR風画像で、コントラストが強調されています。

写真2は、パナソニックのLX100の「ハイダイナミック」フィルタ―を使ったJpeg画像です。写真1よりは強調が弱くなっています。

写真3は、普通のRAW画像を、darktableのシャドウとハイライトモジュールで強調しています。この画像は、HDR風にみえるかもしれません。しかし、このモジュールは、画像を著しく劣化させています。シーン参照ワークフローでは、シャドウとハイライトモジュールは使うべきでないとされています。

以上は、HDR風画像であって、HDR画像ではありません。HDR画像のJpeg画像は存在しませんので、Jpegになった時点で、HDR風画像と考えられます。

LX100には、フィルタ―はありますが、HDR撮影モードはついていません。パナソニックのデジカメで、HDR撮影モードがついている機種もあります。この場合には、3枚の画像を撮影して、1枚のJpeg画像を合成します。出来上がった画像はJpegです。

キャノンのkiss M2には、HDR逆光補正モードとHDRのフィルタ―があります。
前者は、パナソニックと同じで、3枚の画像から、Jpeg画像を作成します。
後者も、パナソニックと同じフィルタ―です。

つまり、kiss M2のHDRでは、RAW画像は作成しないので、darktableでは、現像できません。

RAWのHDR画像を作成するには、パナソニックも、キャノンもブランケット撮影をして、露光を変えた画像を作成する必要があります。

この部分は、マニュアルには、ブラケット撮影と書かれていますが、HDRとは書かれていません。

つまり、2社とも、JpegのHDR風画像を、HDR画像と呼んでいます。

次回に、RAW画像から、HDR画像の元データをつくるブラケット撮影の仕方を説明します。


写真1 インプレッシブアート 


写真2 ハイダイナミック 


写真3 シャドウとハイライト 
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