第6話 フィルミックRGBのルック・タブとゾーンシステム

文字数 1,333文字

フィルミックRGBのシーン・タブの白の相対露出(white relative exposure)と黒の相対露出(black relative exposure)は、ダイナミック・レンジ・マッピングのシーン・バーの右端と左端に対応します。

一方、フィルミックRGBのルック・タブは、ダイナミック・レンジ・マッピングのシーン・バーとディスプレイ・バーの間の対応関係を指定します。

写真1をみると、ダイナミック・レンジ・マッピングのシーン・バーとディスプレイ・バーの間に対応関係を示す線がついています。ルック・タブはこの対応関係を設定します。
写真1で赤線を入れた部分のシーン・バーの値は、ディスプレイ・バーでは、1点になっています。このような場合には、この部分のシーン・タブに対応するRAW画像のデータはつぶれています。ですから、これは、好ましい変換ではありません。この良くない変換の例をあげた理由は、S字型の変換曲線の見方を説明するためです。


写真2は、ルック・タブとルック・オンリー表示です。

X軸は、最小値が、10.0で、最大値が+5.6です。

これは、写真1のダイナミック・レンジ・マッピングのシーン・バーに対応しています。

ルック・オンリー表示は、入力(X軸)を出力(Y軸)に変換する曲線を表しています。

写真2の赤い矢印は、その関係を示しています。

ここで、写真2で、X軸に沿って赤い線を引いた部分は、出力(Y軸の値)がゼロです。
つまり、この部分は、入力に関わらず出力はゼロになります。

この部分と写真1のシーン・バーの赤線の部分が対応しています。

つまり、ダイナミック・レンジ・マッピングとルック・オンリー表示の変換曲線との間の関係を模式的に表せば、写真3のようになります。

ここで、横軸は、ダイナミック・レンジ・マッピングのシーン・バーで、縦軸は、ディスプレイ・バーです。

結局、ゾーンシステムは、変換曲線と等価になります。アダムスの場合、ゾーンという1EV幅で考えますが、これは、統計学のトレーニングを受けていない場合、連続分布で考えることが難しいので、良く起こる現象で、1EV幅には、各段の意味はありません。むしろ、アダムスの慧眼は、露光という時間スケールの減少を、ゾーンという空間(平面)分布にむすびつける点です。フィルミックRGBには、空間という概念はありません。(注1)

darktableで、空間としてのゾーンを扱うモジュールは、トーンイコライザーです。
しかし、シーン・バーの左はRAWの暗所の空間に、シーン・バーの右はRAWの明所の空間に対応している訳ですから、そのことを意識して使えば、ゾーン操作ができます。
写真3をもう一度みて頂ければ、この点が理解できるはずです。



写真1 フィルミックRGBのダイナミック・レンジ・マッピング


写真2 フィルミックRGBのルック・タブとルック・オンリー


写真3 ダイナミック・レンジ・マッピングとルック・オンリーの関係


注1:
フィルミックRGBでも、マスクを併用すれば、直接的な空間操作は可能です。この場合には、フィルミックRGBのインスタンスを2つ以上作る必要があります。かなり、高度な利用になるので、最初は考えなくともよいと思います。

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