第3話 ゾーンシステムについて

文字数 1,411文字

アンセル・アダムスという風景写真の神様のような写真家がいました。ロバに機材を積み込んで、米国の国立公園の風景写真を撮影しています。フィルム時代の写真家は、モノクロームをメインに仕事をしていました。その理由は、モノクロームであれば、自分で、現像と焼き付けが調整できること、カラーよりモノクロームはダイナミックレンジが広い上に、粒子が細かく、感度も広く選べたからです。アダムスは、ネガフィルムのダイナミックレンジが10EV あるのに対して、ポジの印画紙のダイナミックレンジが8EVなので、この間の対応をどうつけると良い写真ができるかという点を工夫しました。アダムスの結論は、ネガ、ポジを露光の大小で、1EVの幅のゾーンにわけ、ネガとポジのゾーンの対応関係を調整して、問題解決が一般化できるというものです。


デジタルカメラの場合には、最終画像を紙に印刷する場合と画面でみる場合があります。darktableでは、最終画像は、画面のJpegファイルであるとして、印刷する場合は、次のステップとして切り離して議論しています。


Jpegファイルのダイナミックレンジは8EVです。これに対して、現在のデジカメのRAWファイルのダイナミックレンジは、10から14EVあります。したがって、アダムスの場合と同じように、広いダイナミックレンジのデータのどこにウェイトをおいて、8EVに圧縮するかが課題になります。


フィルミックRGBは、このゾーンの対応関係を調整するモジュールです。


写真1は、フィルミックRGBのダイナミック・レンジ・マッピングを示しています。
ゾーンをしめす2本の水平な棒が見えます。


上の棒が、Jpegのゾーンを表します。上の棒は、ゾーンが12個あり、単純に考えると12EV あることになりますが、ここでは、8EVと考えて下さい。(注1)あるいは、ゾーンの数は気にしないで、8EVを0から100に分割した棒であると考えて下さい。この棒の18という数字は、Jpeg上の反射率が18%のグレーを表しています。


下の棒は、RAWのゾーンを表します。下の棒は、ゾーンが17個あり、17EVに相当します。しかし、写真1の上のヒストグラムを見ればわかりますように、ヒストグラムの右に、空きがあります。つまり、17EVはデータの入ってないところも含んでいます。したがって、RAWファイルのダイナミックレンジが17EVある訳ではありません。下の棒の+0.0は、上の棒の18に対応しています。これは、RAWの露光のゼロ点が、Jpeg上の反射率が18%のグレーに対応していることを示しています。

darktableでは、フィルミックRGBが非線形の変換曲線(非線形変換)を、トーンイコライザ(または、露光)が定数をかける線形変換を分担しています。露光を変更すると、写真1のヒストグラムは、露光の変更に合わせて左右に移動しますが、ダイナミック・レンジ・マッピングの形は変化しません。ダイナミック・レンジ・マッピングの形は変換曲線の形に対応しています。つまり18%と+0.0の対応は、便宜的なものです。


注1:
12EVは、正確には、ディスプレイのダイナミックレンジです。したがって、このゾーン数は、正しいです。しかし、Jpegを使う限りは、8EVを越えないので、今のところ8EVと考えて問題ありません。


写真1 フィルミックRGBのダイナミック・レンジ・マッピング
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