爆破、建設、戦闘
文字数 3,524文字
ブラックアイは、目黒は自分自身の装備を確認する。
フィールドはいつものビル群、障害物あり、狙撃し放題、正面から突っ込んでもよし、裏をかいて暗殺してもよし、そういう状況だった。
その環境下でブラックアイはグロック17一つ、弾10発を持ってその場にいた。
サブの武器に一撃必殺のナイフを持っているが、相手をしとめるにはこれを使うしかない。
乖離光は……同じくハンドガンに弾10発、ナイフを持った装備だった。
これはかつての世界で目黒が最も好んでいた戦い方だ。
コストが軽く動きやすく、それを突き詰めた先にこの装備がある。
乖離光とブラックアイはお互いの距離10メートルをとって陣取っている。
間に障害物はないが、長距離攻撃が心もとないのではあっても同じだ。
乖離光はその足でブラックアイと距離を詰める。
動きはほぼ剣道をやる時のすり足、慎重に近づいてくるが、その動きに一切の隙がない。
反撃をしようにも、カウンターをやろうにも付け入る箇所がない。
同じく、ブラックアイも間合いを詰め始めた。
人間の腕の長さは人それぞれだが、乖離光の腕の長さは70センチほど。
そこにナイフの長さ20センチが入ってほぼ90センチ。
その20センチの間に入っていなければナイフに切り裂かれる心配はない。
目黒はブラックアイの出方をうかがう。
少しずつ、少しずつ距離は縮まってゆく。
恐らくあと3秒以内にはお互いの間合いは詰まり切る。
お互いに一歩踏み込めば相手を攻撃できる状態になるのだ。
当たれば必死の一撃をお互いに抱えての接近戦。
目黒は緊張感の中でこそ冷静だが、それでも判断力がギリギリのところで戦っている。
歩数にして半歩、残り半歩というところで乖離光は動いた。
今までゆっくりだった歩みをいきなり早くしたのだ。
当然距離が一気に縮まることは想定の範囲内だが、乖離光の動きは早すぎる。
だがその素早い突進こそ命とりだった。
目黒は乖離光が突進してくる一直線のナイフの突きを見切り、ナイフを持っていない腕で乖離光のナイフを避け、乖離光がナイフを持っている腕を払いのけた。
そうすれば目の前には乖離光のボディ、そして目黒には有効打になりえる位置に持ったナイフ。
目黒はためらわず距離が縮まり切った乖離光にナイフを向けた。
時間にしてわずか10秒足らずの出来事だったが、目黒と乖離光の決着はついた。
乖離光はその場に倒れるかと思ったが、倒れる寸前、地面に倒れ伏す寸前ブラックアイに抱きかかえられた。
「そう言ってもらえると嬉しいぜ。俺は今まで自分のためだけに生きてきた。そしてここで倒された。だけど、お前は、目黒はどうだろうな? これからもお前は生き残るんだから、生きなくちゃいけない。それがどれだけ自分を苦しめることであってもな」
目黒は乖離光を殺さなかった。
それが会社にとってどんな不利益をもたらすのか、あるいは目黒自身が生きる上でどんな不利益をもたらすのかわからないのにだ。
不利益……黒にとっては争いがない世界が終わり、争わないことが終わり。
そうか、黒にとってはこれが最善の道なのか。
筆者が口を出すことじゃないな。