第4話 新婚生活
文字数 1,422文字
祐真が、主任に昇進し、海外事業課へ異動になった年、義叔父夫婦から縁談の話があった。
相手は、義叔父夫婦の娘真理だった。
祐真は義叔父夫婦からその話を聞いた時、戸惑ったというのが正直なところだった。
真理とは幼馴染であり、中学3年生の途中から高校まで一緒に住んでいたが、妹のようにしか感じていなかったからだった。
しかし、祐真は、子どもの頃から互いによく知っていれば、結婚生活で苦難があるときも二人で容易に乗り越えられるのではないかと考えた。
それに真理と結婚すれば、文字通り義叔父夫婦に親孝行という恩返しができると考えた祐真は、真理さえ承知ならと縁談を受けたのだった。
真理も祐真に対して満更でもなく、話はとんとん拍子に進み、めでたく結婚の運びとなった。
祐真が25才、真理は24才だった。
祐真は、竹田製薬工業に入社以来、医療を通じて人々を支える仕事に生きがいを感じていた。
さらに、主任に昇進し、高田夫妻の期待を受け、新規の事業を多く抱える海外事業課の仕事に勇躍として臨んだ。
海外出張もしばしばあり、先進国ばかりでなく、多くの、紛争地域から逃れてきた人々、貧困地域の人々、そしてそれらの人々に日々医療行為を行う医療従事者と接するうちに生き甲斐だけでなく使命感さえ持って仕事に没頭するようになった。
結婚してからは、早く出世して義叔父夫婦や真理に楽をさせてやりたいと云う欲も出て、なお一層仕事に励むようになったのだった。
真理は、結婚には祐真と同じような考えを持っていた。
祐真は、子どもの頃からよく知っているだけでなく、人柄も、仕事も申し分なかった。
それに二人が結婚すれば、両親も喜び、皆が文字通り家族になり幸せになれると思った。
二人の新居も、真理の実家のすぐ近くにあったアパートを借りた。
幸せな新婚生活のはずだった。
だが、夫の祐真は、完全な仕事人間だった。
帰宅は毎日零時を過ぎ、朝は早くから家を飛び出して行った。
休日出勤は普通であり、海外出張も頻繁にある。
二人で話す時間は、一日のうち何分だろう。
休日に祐真が在宅していることは珍しいことだった。
真理にとってその貴重な休日も、祐真は、医薬品の勉強や海外の製薬情報の収集、さらに語学の勉強に丸一日を費やしてしまうのだった。
「あなた、無理はしないでね。あなたが健康でいてくれるのが一番よ。それより偶には二人で何処かへ行きましょう」
「ああ、何処かに行きたいね。でも、やらなければいけない仕事が山積みなんだ。時間が出来たら行こうね。・・無理はしていないよ。健康診断でも全く異常なしだからね。でも、心配してくれてありがとう」
「・・・・・・」
真理は、祐真が自分や両親のことを大切に思い、頑張っていることはよく分かっていた。
だから、祐真に対して、それ以上強く望むことが出来なかった。
子どもがいず、二人だけのアパート生活では、掃除も洗濯もすぐに終わる。
真理は、日中は実家に帰り、母親と話しながら時間をつぶし、夜は一人で寂しく夫の帰りを待つ生活が一年ほど続いた。
ところが、その頃になると真理の両親は、孫はまだかと度々催促するようになっていた。
毎日深夜に帰り、朝早く出勤する夫と子作りの時間など殆どなかった。
真理は、母親にだけその事をそっと伝えたが、母親が額面どおりに受け取ってくれたのかどうかはよく分からなかった。
真理は、カルチャースクールに通い始めることにした。
相手は、義叔父夫婦の娘真理だった。
祐真は義叔父夫婦からその話を聞いた時、戸惑ったというのが正直なところだった。
真理とは幼馴染であり、中学3年生の途中から高校まで一緒に住んでいたが、妹のようにしか感じていなかったからだった。
しかし、祐真は、子どもの頃から互いによく知っていれば、結婚生活で苦難があるときも二人で容易に乗り越えられるのではないかと考えた。
それに真理と結婚すれば、文字通り義叔父夫婦に親孝行という恩返しができると考えた祐真は、真理さえ承知ならと縁談を受けたのだった。
真理も祐真に対して満更でもなく、話はとんとん拍子に進み、めでたく結婚の運びとなった。
祐真が25才、真理は24才だった。
祐真は、竹田製薬工業に入社以来、医療を通じて人々を支える仕事に生きがいを感じていた。
さらに、主任に昇進し、高田夫妻の期待を受け、新規の事業を多く抱える海外事業課の仕事に勇躍として臨んだ。
海外出張もしばしばあり、先進国ばかりでなく、多くの、紛争地域から逃れてきた人々、貧困地域の人々、そしてそれらの人々に日々医療行為を行う医療従事者と接するうちに生き甲斐だけでなく使命感さえ持って仕事に没頭するようになった。
結婚してからは、早く出世して義叔父夫婦や真理に楽をさせてやりたいと云う欲も出て、なお一層仕事に励むようになったのだった。
真理は、結婚には祐真と同じような考えを持っていた。
祐真は、子どもの頃からよく知っているだけでなく、人柄も、仕事も申し分なかった。
それに二人が結婚すれば、両親も喜び、皆が文字通り家族になり幸せになれると思った。
二人の新居も、真理の実家のすぐ近くにあったアパートを借りた。
幸せな新婚生活のはずだった。
だが、夫の祐真は、完全な仕事人間だった。
帰宅は毎日零時を過ぎ、朝は早くから家を飛び出して行った。
休日出勤は普通であり、海外出張も頻繁にある。
二人で話す時間は、一日のうち何分だろう。
休日に祐真が在宅していることは珍しいことだった。
真理にとってその貴重な休日も、祐真は、医薬品の勉強や海外の製薬情報の収集、さらに語学の勉強に丸一日を費やしてしまうのだった。
「あなた、無理はしないでね。あなたが健康でいてくれるのが一番よ。それより偶には二人で何処かへ行きましょう」
「ああ、何処かに行きたいね。でも、やらなければいけない仕事が山積みなんだ。時間が出来たら行こうね。・・無理はしていないよ。健康診断でも全く異常なしだからね。でも、心配してくれてありがとう」
「・・・・・・」
真理は、祐真が自分や両親のことを大切に思い、頑張っていることはよく分かっていた。
だから、祐真に対して、それ以上強く望むことが出来なかった。
子どもがいず、二人だけのアパート生活では、掃除も洗濯もすぐに終わる。
真理は、日中は実家に帰り、母親と話しながら時間をつぶし、夜は一人で寂しく夫の帰りを待つ生活が一年ほど続いた。
ところが、その頃になると真理の両親は、孫はまだかと度々催促するようになっていた。
毎日深夜に帰り、朝早く出勤する夫と子作りの時間など殆どなかった。
真理は、母親にだけその事をそっと伝えたが、母親が額面どおりに受け取ってくれたのかどうかはよく分からなかった。
真理は、カルチャースクールに通い始めることにした。