第18話 リョータの屋敷
文字数 1,538文字
リョータ・フォン・アシヤの屋敷は、深い森の中にあった。
ざっとだが、1km四方ほどが切り開かれ、中心部にアシヤ家の屋敷と思われる建物があり、その周辺に様々な家が立ち並んでいる。
一つの町と云った様子であった。
「最初は、屋敷だけだったのですが、使用人の家族が増えたので日用品などの需要が多くな
り、商人や鍛冶職人も屋敷の周辺に住むことを願い出て許されたと聞いています。
代々の領主が常住しているので来訪者もあり、食堂や酒場それに宿屋と云ったものまで出来て今ではちょっとした町になってしまいました。」
とリョータは言ったのだが、やはりエルフの森の中の町らしく通りの脇や家々の周りには木々が多く、建物も石造りではなく全て木造のようであった。
建材は全てエルフの森から採れた良質の木材が使われ、建材や家具などの木製品はエルフの国の重要な輸出商品であるとのことだった。
町にはいろいろな人が働いているようだが、耳の長いエルフはもちろん人族や獣人と思われる人たちまで雑多な種族の住民を見て、祐真はまるでお上りさんのようにきょろきょろと見回して歩いたのだった。
屋敷の前まで来ると、玄関前にはずらりとメイドや執事と思われる人たち、それに軽装であるが騎士のような者たちが出迎えていたことに祐真は驚いた。
また、あからさまではないものの心なしか全員が祐真に注目しているのではないかと感じたのだった。
祐真は、
(・・やはり、ここでは俺の服装は変わっていると思われているんだろうな・・・)
などと思いながら招かれるまま屋敷の中へ入ったのだった。
玄関に入ると数人の侍女を従えたエルフの貴婦人がリョータと祐真を出迎えた。
「祐真さん、これが私の妻でソフィアと言います。ソフィア、こちらが芦屋祐真さんだ」
いつの間に祐真のことを伝えたのか分からないが、リョータがその貴婦人を祐真に紹介すると、彼女はカーテシーによく似た優雅な所作をし、
「リョータ・フォン・アシヤの妻でソフィア・フォン・アシヤと申します。ようこそおいでくださいました」
と、にこやかに名乗り、祐真に挨拶をしたのだった。
西洋で17世紀に始まった女性のカーテシーは、元々身分の高い相手に対する挨拶である。
祐真は、もしこれがカーテシーと同じような意味を持つのかもしれないと思い、慌てて頭を下げると、
「芦屋祐真と申します。ご丁寧なご挨拶恐縮です。今ご婦人がなされた挨拶の所作は、私のいた所では身分の高い相手にするものです。もし同じような意味があるのであれば、私は平民ですので、どうぞお気遣い無いようにお願いいたします」
と、応えたのだった。
ソフィアと名乗った婦人は、一瞬驚いたようにリョータを見たのだが、リョータは、
「祐真さん、妻の挨拶は、そのカーテシーというものと同じ意味ですが、ご心配はいりません。説明しますのでこちらへお出でください。ソフィア、初代様の部屋に紅茶を持って来てくれないか」
と、祐真を二階へと続く階段へ案内したのだった。
階段の途中に広い踊り場があり、リョータはそこで立ち止ったのであるが、踊り場の壁には、夫婦と思われる男女の等身大であろうか大きな絵が飾られていた。
男女とも茶髪碧眼で二十歳ぐらいに見える。男性は人族で女性はエルフである。
「この絵は、初代芦屋祐一郎とその妻の茜 です」
(!!??・・・)
リョータの説明に、祐真は一瞬固まった。
茜は、祐真が15才の時に亡くなった母の名前だったからだ。
そういえば、描かれた二人の絵はどことなく両親の若いころに似ていた。
絵を前にして呆然とする祐真に、
「これから初代様の部屋にご案内します」
祐真は、リョータの声に上の空のまま頷き、彼の後に続いたのだった。
ざっとだが、1km四方ほどが切り開かれ、中心部にアシヤ家の屋敷と思われる建物があり、その周辺に様々な家が立ち並んでいる。
一つの町と云った様子であった。
「最初は、屋敷だけだったのですが、使用人の家族が増えたので日用品などの需要が多くな
り、商人や鍛冶職人も屋敷の周辺に住むことを願い出て許されたと聞いています。
代々の領主が常住しているので来訪者もあり、食堂や酒場それに宿屋と云ったものまで出来て今ではちょっとした町になってしまいました。」
とリョータは言ったのだが、やはりエルフの森の中の町らしく通りの脇や家々の周りには木々が多く、建物も石造りではなく全て木造のようであった。
建材は全てエルフの森から採れた良質の木材が使われ、建材や家具などの木製品はエルフの国の重要な輸出商品であるとのことだった。
町にはいろいろな人が働いているようだが、耳の長いエルフはもちろん人族や獣人と思われる人たちまで雑多な種族の住民を見て、祐真はまるでお上りさんのようにきょろきょろと見回して歩いたのだった。
屋敷の前まで来ると、玄関前にはずらりとメイドや執事と思われる人たち、それに軽装であるが騎士のような者たちが出迎えていたことに祐真は驚いた。
また、あからさまではないものの心なしか全員が祐真に注目しているのではないかと感じたのだった。
祐真は、
(・・やはり、ここでは俺の服装は変わっていると思われているんだろうな・・・)
などと思いながら招かれるまま屋敷の中へ入ったのだった。
玄関に入ると数人の侍女を従えたエルフの貴婦人がリョータと祐真を出迎えた。
「祐真さん、これが私の妻でソフィアと言います。ソフィア、こちらが芦屋祐真さんだ」
いつの間に祐真のことを伝えたのか分からないが、リョータがその貴婦人を祐真に紹介すると、彼女はカーテシーによく似た優雅な所作をし、
「リョータ・フォン・アシヤの妻でソフィア・フォン・アシヤと申します。ようこそおいでくださいました」
と、にこやかに名乗り、祐真に挨拶をしたのだった。
西洋で17世紀に始まった女性のカーテシーは、元々身分の高い相手に対する挨拶である。
祐真は、もしこれがカーテシーと同じような意味を持つのかもしれないと思い、慌てて頭を下げると、
「芦屋祐真と申します。ご丁寧なご挨拶恐縮です。今ご婦人がなされた挨拶の所作は、私のいた所では身分の高い相手にするものです。もし同じような意味があるのであれば、私は平民ですので、どうぞお気遣い無いようにお願いいたします」
と、応えたのだった。
ソフィアと名乗った婦人は、一瞬驚いたようにリョータを見たのだが、リョータは、
「祐真さん、妻の挨拶は、そのカーテシーというものと同じ意味ですが、ご心配はいりません。説明しますのでこちらへお出でください。ソフィア、初代様の部屋に紅茶を持って来てくれないか」
と、祐真を二階へと続く階段へ案内したのだった。
階段の途中に広い踊り場があり、リョータはそこで立ち止ったのであるが、踊り場の壁には、夫婦と思われる男女の等身大であろうか大きな絵が飾られていた。
男女とも茶髪碧眼で二十歳ぐらいに見える。男性は人族で女性はエルフである。
「この絵は、初代芦屋祐一郎とその妻の
(!!??・・・)
リョータの説明に、祐真は一瞬固まった。
茜は、祐真が15才の時に亡くなった母の名前だったからだ。
そういえば、描かれた二人の絵はどことなく両親の若いころに似ていた。
絵を前にして呆然とする祐真に、
「これから初代様の部屋にご案内します」
祐真は、リョータの声に上の空のまま頷き、彼の後に続いたのだった。