第19話  初代の隠し部屋

文字数 900文字

 祐真は、リョータに案内されて初代芦屋祐一郎の部屋まで来た。
 芦屋祐一郎の部屋は魔法による隠し部屋になっていた。
 二階の廊下の途中でリョータが立ち、そこの壁を見つめるとドアが現れ、リョータが先に中に入り祐真を招き入れたのだった。
 部屋は、かなり広く様々な家具や机椅子、書棚、応接セットにベッドまであった。
 それらは質素であるが、全て上質な物ばかりであった。
 リョータは、祐真にソファーを勧める前に、壁に飾ってある絵の前に祐真を連れて並んだ。
 その絵は、先ほど階段の踊り場で見た初代夫婦の絵と同じであったが、リョータがパチンと指を鳴らすと、二人の茶髪碧眼は黒目黒髪に変わり、祐真が忘れられない人がそこに描かれていたのだ。

「?!・・お父さん、お母さん!!・・・」

 祐真は、思わず口に出してしまった。

 祐真の父祐一郎は祐真が5才の時、33才の若さで亡くなった。
 母の茜は、祐真が15才の時、心臓発作で他界した。43才だった。
 描かれている男性は、33才の祐一郎であるし、女性は43才の母の姿そのものだったからだ。
 祐真は、睨みつけるようにリョータを見た。
 真実を知りたい、その一心だったのだ。

 リョータは、祐真の気持ちに応えるかのように、優しく落ち着いた声で、

「妻が紅茶を持ってきます。妻を交えて紅茶を飲みながらお話ししましょう」

 と、祐真にソファーを勧めたのだった。

 部屋の外からノックの音がし、リョータが入るようにと答えると、妻のソフィアが紅茶のセットを持って一人で部屋に入ってきた。
 紅茶は、ハーブティーのような良い香りがして、祐真はその香りだけで心が落ち着いたのだった。

「取り乱してしまいました。申し訳ありません」

「いえ、お気持ちは十分ではなくともよく分かるつもりです。混乱させ不安にさせてしまったのではないかと反省しています。心からお詫び申し上げます。これからお話することは(にわ)かには信じられないかもしれませんが全て真実です。聞いていただけますか」

「はい、よろしくお願いいたします」

 リョータとソフィアによって語られた祐一郎と茜の物語は、翌朝まで続いたのだが、それでも語り尽くすことが出来なかった。
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