第22話  芦屋祐一郎~竜人国国王との会談 1

文字数 1,505文字

 ユーイチロー一行は、王都へ着くとすぐにエルフ王と竜人国の国王とも云うべき最長老のトージューロウとの面会に臨むこととなった。
 面会は、王の応接間で行われ、出席者は6名、ユーイチローら三名とエルフ王レギール・フォン・グワデアン、竜人国からは最長老のトージューロウと副使のセンジューロウという若者であった。
 
 竜人にも姓はあるのだが、対外的には公にされておらず、竜人同士の意思疎通もほぼ思念によるものが多く、実際に名前で呼び合うことさえ少ないのだ。
 だから、わざわざ姓まで名乗る必要がないのである。
 また、竜人国は賢人国とも云われ、争いがなく独裁や権力の集中による弊害もない。
 このように竜人国では、特に王政を採用する必要もなく10人の長老を中心として運営されているのであるが、その中でも最長老と云われるトージューロウは人望が厚く能力も長老の中で最も高いと云われており、度々国の最終決定を委ねられていた。
 そのため竜人を始め諸国は、トージューロウを竜人国の実質的な王とみなしていた。

 ユーイチローらを代表してシンセラがレギール王と竜人国使節への挨拶の後、人払いがされ早速会談へと移った。
 最初はレギール王が改めてシンセラら3名をトージューロウらに紹介し、シンセラらがそれぞれ挨拶をし、トージューロウとセンジューロウも挨拶をすると、それからは思いもかけずトージューロウが語り出し、その内容に出席した皆が息をのみ言葉を失って聞き入ったのだった。 

 「我がこれから話すことは、今では竜人でさえ経験した者は我を含め長老と云われる10人だけになってしまった。
 レギール殿、なぜそなたらが「ノアの民の末裔」と呼ばれるのか、そもそも「ノアの民」とは如何なる者か、今はどのように伝わっておるのか教えてくださらんか」

 「はい、(いにしえ)の昔、数多の星の光がこのエスタムンドの地に降り注ぎ、光と共に降り立った方々が自らを「ノアの民」と名乗ったと伝わっております。
 その方々は森羅万象を司る超常の力を有し、その子孫は「ノアの民の末裔」として魔法が使えるようになったと云われております。
 また、外見的には、「ノアの民」は全ての人が黒目黒髪、「ノアの民の末裔」は目または髪のどちらかが黒いと言われております。
 ただ、どちらかが黒くても魔法を使えない者が多く、それらは「ノアの民の末裔」ではなく、元々のエスタムンドの民であると考えられています。
 現在「ノアの民」はすでに死に絶え、「ノアの民の末裔」の資質を最も強く受け継いでいるのは、竜人の皆さん、次に我ら森の民(エルフ)と獣人さらに山の民(ドワーフ)と言われています。
 人族の「ノアの民の末裔」は、草原の民と言われていた元々のエスタムンドの人族との混血が最も進み「ノアの民の末裔」の血も薄くなり、魔法が使える者も少ないと言われています。
 ただ最初のころの人族の「ノアの民の末裔」はその強力な魔法で古の国家を形成し、その子孫が貴族として今でも続いていると云われています。」

 頷きながら聞いていたトージューロウは、
 「大体はその通りなのだが、訂正したり補足する箇所もある。今日は、我が経験したことを話そう。そろそろ真実を語り伝えた方が良いほどに時が経っていたようだ。先ほど人払いをしたが、口の堅い書記であれば入室を許可し、記録を取ることに(やぶさ)かではない」

 レギール王は、最も信頼できる書記を入室させ、記録を取らせることにした。
 書記が入室し、会談が再開されると、トージューロウとセンジューロウは一瞬目を(つむ)り再び(まぶた)を開けると、先ほどまで銀髪黒目だった二人の容姿は、黒目はそのままに髪は漆黒へと変わっていた。
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