第7話  家事

文字数 900文字

 なかなか異世界へ渡ることが出来ませんが、もうしばらくご辛抱ください。

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 竹田製薬工業は、社員の海外赴任については、本人の意思を尊重した。
 芦屋祐真のフランスへの赴任についても、会社は、ぎりぎりまで祐真の承諾を待つつもりだった。
 それほど祐真に対しては期待が大きかったのだ。
 だが、祐真は回答が出来ず、とうとう年が明け、2021年(令和三年)となった。
 しかし、いつまでも会社への回答を引き延ばすことは出来ない。
 祐真は、新年の初出社の日、部長に新年のあいさつをした後、赴任を辞退したいと告げ、退職届を提出した。


 祐真は、妻の真理に海外赴任の打診があったことを話した日から、宣言したとおり、家庭を最優先するよう努力した。
 残業は、極力しないようにし、休日は家族と一緒に過ごすようにした。
 さらに、祐真は、幼い茉紗子の面倒を見、皿洗いや掃除、洗濯、買い物と云った日常の細々とした家事の手伝いを進んでした。
 いや、最初は努力してしていたのだ。
 だが、祐真が、スーパーでの買い物に一人で行ったとき、妻の真理は、食材の一つでも家計や家族の健康を考えていたのだと身に染みて気付いたのだった。
 子育てはもちろん、日々の家事の大変さもよく分かった。
 祐真は、改めて妻に感謝し、その後は、茉紗子の子育てはもちろん、家族のためにする家事に、より積極的になり、喜びさえ感じるようになったのだった。

 真理が夫の祐真に告げた決意は、悩みに悩んだ末の決断であり、祐真が、宣言どおり早く家に帰るようになり、育児だけでなく家事も手伝うようになっても、すぐに変わることは無かった。
 しかし、夫がする家事には心がこもっており、妻の自分に対する感謝の気持ちがあることは容易に分かった。
 半年後、真理は、自分のおそらく唯一と言っていい才能であろういけばなではなく、幸せな家庭を選ぶべきだと考えるようになっていた。

 そのような時、カーリー屋崎から真理にある提案がなされた。
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