第12話 メキシカンなタコライスとタコス
文字数 1,969文字
空には水の溜まった巨大バケツがあって、何かの拍子にひっくり返ったらすごい量の雨が降るだろう。そんな天気。土砂降りの中をランニングしている背ぇ高ノッポの男性が僕の横を通り過ぎて行った。あまりのびしょ濡れ姿にドン引きだ。
ひたすらの雨の中、どうしてもタコライスが食べたい。その一心で透明ビニール傘をさして外を歩いている。この傘は7年ほど前にコンビニで買って以来ずぅっと使用している。下ハジキが摩耗しており、放っておくと勝手に開く。ネームバンドを留めていてもバッと開くことがある猛獣だ。僕は壊れるまで物を買い替えない。けどそろそろ買い替えるか……。てか壊れてるよなコレ。
水溜りを避け、車に近寄らないようにして歩き、メキシカンな店の前へやって来た。ドアガラスの向こう、テーブル席は満員だ。しかしカウンターには誰も座っていない。独り客がいないように見受けられる。
しかし臆することなく入り口のドアを開けて店へ入る。タコライスとタコスが食べたいんやー。うぉぉぉ。
カウンターの端っこに座り、メニューを眺める。タコライスはチキンかタコミートくらいしか選択できないけど、タコスの方は種類がとっても多い。基本はおそらくミートと玉ねぎで、アボカド、ウインナー、ほうれん草、サルサ、コールスロー、ベーコン等々、組み合わせごとにポパイやらエスニックチキンやらと名付けているようだ。
バーベキューチキン・トマト・玉ねぎ入りのタコス、それから普通のタコライスを注文した。タコライスはタコミート・トマト・チーズ・サルサ・レタス・チップスが乗る。サルサはスペイン語で「ソース」の意。スパイシーソースといったところか。
注文の品が来るまで店内をぐるっと観て過ごす。壁には小さなネオンサインが3つ。カウンターから見上げる場所にメキシカンな風景のポスター。ああ、これだこれだ、こういうのが異国情緒ってやつだ。しかしBGMは藤井フミヤ、シャ乱Q、DEEN。良い曲だけどさ。やっぱココは日本だったワ。
注文からおよそ5分で品が運ばれてきた。
![](https://img-novel.daysneo.com/talk_02/thumb_63c0663c86fab4897e198d0d30d0cce7.jpeg)
タコライスの彩りが食欲をそそる。タコスは完全に包まれている。ちなみにタコライスのタコはタコスのタコだ。タコスの具をご飯の上に乗せたものがタコライスと呼ばれる。タコって何回言ったかな。
タコライスをスプーンでガッと掬い、食す。……思ったよりもあっさり感。鼻をメキシカンな香りが抜ける。サルサは多少スパイシーだがキツくはない。カウンターの上にあるでっかい瓶入りのタバスコをかけて召し上がれということだろう。
タコスをばくり。バーベキューチキン、うっま。タコスの皮について調べると小麦粉やトウモロコシで作られるとある。食べた感じは小麦粉っぽいけどはたしてどうか。昨日食べたナンとチキンカレーの相性の良さを思い出した。パン生地にチキンは良く合うのだ。辛ければ尚良し。
タバスコ瓶の蓋を開けて、タコライスへ投入す、出過ぎたッッ!!
びゅぅぅと勢いよく飛び出した赤いソースが、タコミートの色を濃くした。このミート絶対酸っぱくなったぞ。
タバスコは唐辛子、塩、ビネガー(酢)を原料とする。辛くてしょっぱくて酸っぱいものが旨いってすごいことだと思う。人間はなんでもおいしく食べちまう生き物なのだ。
ごたくは置いといて、実食。できるだけ散らして散らして……。パクリ。
酸っぱ。やっぱかけすぎじゃんか。
でも意外とイケるかも。味に複雑さが増してどんどん食べ進められる。タコスも食べる。皮のほのかな甘さに救われる。一緒に頼んどいて本当に良かった。
食べながらメニュー表を裏返す。ビールの種類が多い。アメリカ、日本、メキシコ、ブラジルなど10か国以上のビールが置かれているようだ。トルティーヤチップスに溶かしたチーズをかけたナチョスという料理をツマミにしてビールを……いいかも。昼は無理だけど。
BGMに懐かしいヒット曲が流れる。あー、これ誰だったか……忘れちまったい。そんな懐メロナンバーを背に、パクパク食べて、食べて、食べ終えた。
支払いをして店を出る。
下唇がヒリヒリして痛い。今頃になってタバスコが効いてきたみたいだ。
外はまだザァザァ降り。先週の雨降り日に立ち寄ったスパゲティ屋さんは、今日もワンオペなのだろうか。次の大雨の時に行ってみよう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
仕事が終わって帰宅。したらモッさんが廊下を駆けて来た。
「パパ! ナナナナ〜、ナナナナ〜って誰だっけ」
「……YouTubeの検索窓に花澤香菜って入力してサジェストを見てみ」
「えっ。……ジョイマンだ! ありがとーっ」
部屋へ戻って行った。
スマホ持ってるなら、ナナナナでググれば出てくるのに。
うーむ。まぁ、いっか。
【本日の出費】
タコライスと、バーベキューチキン入りタコス
1,080円
ひたすらの雨の中、どうしてもタコライスが食べたい。その一心で透明ビニール傘をさして外を歩いている。この傘は7年ほど前にコンビニで買って以来ずぅっと使用している。下ハジキが摩耗しており、放っておくと勝手に開く。ネームバンドを留めていてもバッと開くことがある猛獣だ。僕は壊れるまで物を買い替えない。けどそろそろ買い替えるか……。てか壊れてるよなコレ。
水溜りを避け、車に近寄らないようにして歩き、メキシカンな店の前へやって来た。ドアガラスの向こう、テーブル席は満員だ。しかしカウンターには誰も座っていない。独り客がいないように見受けられる。
しかし臆することなく入り口のドアを開けて店へ入る。タコライスとタコスが食べたいんやー。うぉぉぉ。
カウンターの端っこに座り、メニューを眺める。タコライスはチキンかタコミートくらいしか選択できないけど、タコスの方は種類がとっても多い。基本はおそらくミートと玉ねぎで、アボカド、ウインナー、ほうれん草、サルサ、コールスロー、ベーコン等々、組み合わせごとにポパイやらエスニックチキンやらと名付けているようだ。
バーベキューチキン・トマト・玉ねぎ入りのタコス、それから普通のタコライスを注文した。タコライスはタコミート・トマト・チーズ・サルサ・レタス・チップスが乗る。サルサはスペイン語で「ソース」の意。スパイシーソースといったところか。
注文の品が来るまで店内をぐるっと観て過ごす。壁には小さなネオンサインが3つ。カウンターから見上げる場所にメキシカンな風景のポスター。ああ、これだこれだ、こういうのが異国情緒ってやつだ。しかしBGMは藤井フミヤ、シャ乱Q、DEEN。良い曲だけどさ。やっぱココは日本だったワ。
注文からおよそ5分で品が運ばれてきた。
![](https://img-novel.daysneo.com/talk_02/thumb_63c0663c86fab4897e198d0d30d0cce7.jpeg)
タコライスの彩りが食欲をそそる。タコスは完全に包まれている。ちなみにタコライスのタコはタコスのタコだ。タコスの具をご飯の上に乗せたものがタコライスと呼ばれる。タコって何回言ったかな。
タコライスをスプーンでガッと掬い、食す。……思ったよりもあっさり感。鼻をメキシカンな香りが抜ける。サルサは多少スパイシーだがキツくはない。カウンターの上にあるでっかい瓶入りのタバスコをかけて召し上がれということだろう。
タコスをばくり。バーベキューチキン、うっま。タコスの皮について調べると小麦粉やトウモロコシで作られるとある。食べた感じは小麦粉っぽいけどはたしてどうか。昨日食べたナンとチキンカレーの相性の良さを思い出した。パン生地にチキンは良く合うのだ。辛ければ尚良し。
タバスコ瓶の蓋を開けて、タコライスへ投入す、出過ぎたッッ!!
びゅぅぅと勢いよく飛び出した赤いソースが、タコミートの色を濃くした。このミート絶対酸っぱくなったぞ。
タバスコは唐辛子、塩、ビネガー(酢)を原料とする。辛くてしょっぱくて酸っぱいものが旨いってすごいことだと思う。人間はなんでもおいしく食べちまう生き物なのだ。
ごたくは置いといて、実食。できるだけ散らして散らして……。パクリ。
酸っぱ。やっぱかけすぎじゃんか。
でも意外とイケるかも。味に複雑さが増してどんどん食べ進められる。タコスも食べる。皮のほのかな甘さに救われる。一緒に頼んどいて本当に良かった。
食べながらメニュー表を裏返す。ビールの種類が多い。アメリカ、日本、メキシコ、ブラジルなど10か国以上のビールが置かれているようだ。トルティーヤチップスに溶かしたチーズをかけたナチョスという料理をツマミにしてビールを……いいかも。昼は無理だけど。
BGMに懐かしいヒット曲が流れる。あー、これ誰だったか……忘れちまったい。そんな懐メロナンバーを背に、パクパク食べて、食べて、食べ終えた。
支払いをして店を出る。
下唇がヒリヒリして痛い。今頃になってタバスコが効いてきたみたいだ。
外はまだザァザァ降り。先週の雨降り日に立ち寄ったスパゲティ屋さんは、今日もワンオペなのだろうか。次の大雨の時に行ってみよう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
仕事が終わって帰宅。したらモッさんが廊下を駆けて来た。
「パパ! ナナナナ〜、ナナナナ〜って誰だっけ」
「……YouTubeの検索窓に花澤香菜って入力してサジェストを見てみ」
「えっ。……ジョイマンだ! ありがとーっ」
部屋へ戻って行った。
スマホ持ってるなら、ナナナナでググれば出てくるのに。
うーむ。まぁ、いっか。
【本日の出費】
タコライスと、バーベキューチキン入りタコス
1,080円