第29話 喫茶店ウィークの終焉
文字数 2,260文字
春の嵐ぃぃぃ!!
ザァザァ好き放題降り散らかしてやがるぜ、まったくもう。
暑いし蒸すし、夏ですか? 3月最後の平日は夏なんでしょうか。
散々、雨に濡れて、汗もいっぱいかいた状態で、朝の喫茶店。
ほぼ満員、一つだけ空いていた四人掛けテーブル、ピンクのダイニングチェアに座る。僕の後で入店した人はどうするのかなと眺めていたら、店の奥へと吸い込まれていった。見える範囲だけでも割と広い空間だが、奥にも幾つかテーブルを用意してあるっぽい。テーブルは20卓弱か。そんな広いお店を店員さんふたりで回している。そんな急いで動いている様子もなし、プロって凄いなぁ。
モーニングはサンドウィッチ、ホットドッグ、ハムエッグ……は昨日食べた。さて、どうするか。
「えっと……、チーズトーストと、コーヒで」
水を置きに来た店員さんへ告げる。
提供を待つ間、ぼうっと天井を眺める。天井一面に、ステンドグラス風の絵画? 女神様的な絵が飾られている。ここは元々喫茶店ではなかった、とかかな。バーにしては広すぎるし、喫茶店の天井に絵画を嵌め込む理由とは。しかし面白い内装ではある。こういうのが見たくて今週は色んなコーヒーショップを回ったわけだ。
![](https://img-novel.daysneo.com/talk_02/thumb_1e625520de2cc81e480844d6a620b096.jpeg)
チーズトーストは、一人暮らしを思い出させる。とろけるチーズをパンに乗せて焼いていた。あれから何年経ったのだろう、あんまりよく覚えてないや。
チーズとパン、コーヒーはテッパンの組み合わせで、たんぱく質と炭水化物をコーヒーの苦味で胃の中へ送り込めば幸せな朝食になる。チーズとコーヒーだけではダメ、パンとコーヒーでは物足りない。コーヒーが欠けるのは論外だ。
……ってまったりしている時間はなかった。通勤しなきゃ。
パクパク、ズズッと早回しで食べ終え飲み終えて支払いを終えドアを開けて傘をさし、また春の嵐の中へと飛び出していくのであった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
喫茶店ウィーク最後の店は、コーヒー豆を売っている専門店併設のレストランにした。何度も店の前を通っているのに、見るたび待ち客が外まで溢れていて入ることのなかったお店である。
カウンターが空いてるな、そう思って店の中へ。しかし名前を書いて待ち客用の席に座り、8分ほど待った。この時点でちょっと後悔。今日は遂に休憩時間をぶっちぎることとなるか、どうか。
呼ばれて、四人掛けテーブルの壁側席に着座。焦茶色レザー座面にベージュファブリックな背もたれのロングソファ。毎日激混みなのにもかかわらず店内には清潔感がある。白を基調とした明るいシンプルな景色。店の入り口すぐ右側と店のど真ん中をカウンターが占めており、テーブルはL字に10卓ほど並ぶ。お客さんは常に20人〜30人といったところで、朝の喫茶店と同じくらいの客数に対し、ホールスタッフは4名。厨房にも数人を確認済み。客単価の違いと、こちらはレストラン業態ゆえ客一人あたりにかかる手間が多いのだろうと思われた。
「トリオランチお願いします。これってコーヒーはつかないんですよね?」
「はい。コーヒーは別になります」
「じゃあ、コーヒーも……普通のブレンドコーヒーで」
「コーヒーは先にお持ちしますか? 後にお持ちしますか?」
「えっと……。先で、お願いします」
食後にしたらランチの提供が遅れた時、アツアツコーヒーを一気飲みする羽目に陥る。食前にチビチビ飲んでおこう。時間が経てば冷めるから、最後にグイッと飲み干せる。
![](https://img-novel.daysneo.com/talk_02/thumb_608795d0b424b00b7b596f12e9d2f75b.jpeg)
コーヒーを飲みながら、メニューを眺めて待つ。
おそらく昼休憩に訪れるのはこれが最初で最後になるから、参考とするためスマホでメニューをパシャパシャ撮った。めちゃくちゃ情報量の多いメニューだ。カレー、グラタン、パスタ、今回頼んだ定食風、ブレッド、デザート、フローズン、フロート。コーヒーは種類多く、何回も足を運ばなければこのお店の全貌は、いや、何回かではそれを垣間見ることすらできないはず。深すぎるぜレストラン。
![](https://img-novel.daysneo.com/talk_02/thumb_a96d85ed60ec0794c1345311516835d6.jpeg)
三元豚のジンジャー、つまり生姜焼きと、エビフライ、ヒレカツのトリオランチ。味噌汁がカップで提供されるのとっても面白い。ご飯の盛り方がレストランだなぁ。とか言ってる時間、ないんですよねまたしても。
ちゃっちゃと食べる。美味いけど、あんまり噛み締めている時間もないわけ。あと20分しかないんですわ。食べる時間じゃなくて休憩時間がネ。
ジンジャーが柔らかくて、噛むたびジョワって……だからそんな時間ないってば。サラダが多いのは嬉しいけど、高速で口の中へ放り込んでいると「オイラは華金の昼間に何やってんだ」感に襲われる。来週はノンジャンルで空いている店にパッと入ろう。そう誓った。誰に誓ったのかは神様も知らない。だって僕が知らないんだからネ。
エビフライもヒレカツも、タルタルとともに食べてアラおいし。ご飯も味噌汁もおいしい。これはあれっスね。休みの日、時間のある時に来るべきっス。今日は無理しすぎましたワ。
コーヒーがとってもフルーティー。口をつけた瞬間、鼻は果実味を捉える。それから遅れて良質な苦味のお出まし。今週飲んだどのコーヒーとも違う不思議な味だ。酸味も雑味も少なくて飲みやすい。フライとかカツとかに良く合う。1週間の〆としては良い店を選んだと思う。
支払いを済まし、あと10分で……。
考えるより先に、僕の足は素早く回転し始めていた。
以上、喫茶店ウィークでした。
【本日の出費】
朝
チーズトースト、ホットコーヒー
440円
昼
トリオランチ、ブレンドコーヒー
1,610円
計2,050円
ザァザァ好き放題降り散らかしてやがるぜ、まったくもう。
暑いし蒸すし、夏ですか? 3月最後の平日は夏なんでしょうか。
散々、雨に濡れて、汗もいっぱいかいた状態で、朝の喫茶店。
ほぼ満員、一つだけ空いていた四人掛けテーブル、ピンクのダイニングチェアに座る。僕の後で入店した人はどうするのかなと眺めていたら、店の奥へと吸い込まれていった。見える範囲だけでも割と広い空間だが、奥にも幾つかテーブルを用意してあるっぽい。テーブルは20卓弱か。そんな広いお店を店員さんふたりで回している。そんな急いで動いている様子もなし、プロって凄いなぁ。
モーニングはサンドウィッチ、ホットドッグ、ハムエッグ……は昨日食べた。さて、どうするか。
「えっと……、チーズトーストと、コーヒで」
水を置きに来た店員さんへ告げる。
提供を待つ間、ぼうっと天井を眺める。天井一面に、ステンドグラス風の絵画? 女神様的な絵が飾られている。ここは元々喫茶店ではなかった、とかかな。バーにしては広すぎるし、喫茶店の天井に絵画を嵌め込む理由とは。しかし面白い内装ではある。こういうのが見たくて今週は色んなコーヒーショップを回ったわけだ。
![](https://img-novel.daysneo.com/talk_02/thumb_1e625520de2cc81e480844d6a620b096.jpeg)
チーズトーストは、一人暮らしを思い出させる。とろけるチーズをパンに乗せて焼いていた。あれから何年経ったのだろう、あんまりよく覚えてないや。
チーズとパン、コーヒーはテッパンの組み合わせで、たんぱく質と炭水化物をコーヒーの苦味で胃の中へ送り込めば幸せな朝食になる。チーズとコーヒーだけではダメ、パンとコーヒーでは物足りない。コーヒーが欠けるのは論外だ。
……ってまったりしている時間はなかった。通勤しなきゃ。
パクパク、ズズッと早回しで食べ終え飲み終えて支払いを終えドアを開けて傘をさし、また春の嵐の中へと飛び出していくのであった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
喫茶店ウィーク最後の店は、コーヒー豆を売っている専門店併設のレストランにした。何度も店の前を通っているのに、見るたび待ち客が外まで溢れていて入ることのなかったお店である。
カウンターが空いてるな、そう思って店の中へ。しかし名前を書いて待ち客用の席に座り、8分ほど待った。この時点でちょっと後悔。今日は遂に休憩時間をぶっちぎることとなるか、どうか。
呼ばれて、四人掛けテーブルの壁側席に着座。焦茶色レザー座面にベージュファブリックな背もたれのロングソファ。毎日激混みなのにもかかわらず店内には清潔感がある。白を基調とした明るいシンプルな景色。店の入り口すぐ右側と店のど真ん中をカウンターが占めており、テーブルはL字に10卓ほど並ぶ。お客さんは常に20人〜30人といったところで、朝の喫茶店と同じくらいの客数に対し、ホールスタッフは4名。厨房にも数人を確認済み。客単価の違いと、こちらはレストラン業態ゆえ客一人あたりにかかる手間が多いのだろうと思われた。
「トリオランチお願いします。これってコーヒーはつかないんですよね?」
「はい。コーヒーは別になります」
「じゃあ、コーヒーも……普通のブレンドコーヒーで」
「コーヒーは先にお持ちしますか? 後にお持ちしますか?」
「えっと……。先で、お願いします」
食後にしたらランチの提供が遅れた時、アツアツコーヒーを一気飲みする羽目に陥る。食前にチビチビ飲んでおこう。時間が経てば冷めるから、最後にグイッと飲み干せる。
![](https://img-novel.daysneo.com/talk_02/thumb_608795d0b424b00b7b596f12e9d2f75b.jpeg)
コーヒーを飲みながら、メニューを眺めて待つ。
おそらく昼休憩に訪れるのはこれが最初で最後になるから、参考とするためスマホでメニューをパシャパシャ撮った。めちゃくちゃ情報量の多いメニューだ。カレー、グラタン、パスタ、今回頼んだ定食風、ブレッド、デザート、フローズン、フロート。コーヒーは種類多く、何回も足を運ばなければこのお店の全貌は、いや、何回かではそれを垣間見ることすらできないはず。深すぎるぜレストラン。
![](https://img-novel.daysneo.com/talk_02/thumb_a96d85ed60ec0794c1345311516835d6.jpeg)
三元豚のジンジャー、つまり生姜焼きと、エビフライ、ヒレカツのトリオランチ。味噌汁がカップで提供されるのとっても面白い。ご飯の盛り方がレストランだなぁ。とか言ってる時間、ないんですよねまたしても。
ちゃっちゃと食べる。美味いけど、あんまり噛み締めている時間もないわけ。あと20分しかないんですわ。食べる時間じゃなくて休憩時間がネ。
ジンジャーが柔らかくて、噛むたびジョワって……だからそんな時間ないってば。サラダが多いのは嬉しいけど、高速で口の中へ放り込んでいると「オイラは華金の昼間に何やってんだ」感に襲われる。来週はノンジャンルで空いている店にパッと入ろう。そう誓った。誰に誓ったのかは神様も知らない。だって僕が知らないんだからネ。
エビフライもヒレカツも、タルタルとともに食べてアラおいし。ご飯も味噌汁もおいしい。これはあれっスね。休みの日、時間のある時に来るべきっス。今日は無理しすぎましたワ。
コーヒーがとってもフルーティー。口をつけた瞬間、鼻は果実味を捉える。それから遅れて良質な苦味のお出まし。今週飲んだどのコーヒーとも違う不思議な味だ。酸味も雑味も少なくて飲みやすい。フライとかカツとかに良く合う。1週間の〆としては良い店を選んだと思う。
支払いを済まし、あと10分で……。
考えるより先に、僕の足は素早く回転し始めていた。
以上、喫茶店ウィークでした。
【本日の出費】
朝
チーズトースト、ホットコーヒー
440円
昼
トリオランチ、ブレンドコーヒー
1,610円
計2,050円