第13話 ママごっこ

文字数 1,482文字

 いつも読みに来てくれてありがとう。
 うれしいよ。

 前回の続きをお話するね。

 あの後、私は新しく手に入れた魔道獣をテストしてみたんだけど、いろんな形に変形出来るから本当に便利だったわ。
 あいつがやったみたいに木の幹みたいに伸ばすと私の思った以上に伸びるから楽しいの。

 そうやって魔道獣を伸ばしてしばらく遊んでいたら、王宮から伝令役の女性が私に会いにきたわ。

 彼女は諜報員としてローゼンブルク国内だけじゃなくて海外でも活動しているんだけど、昔日太刀王の身の回りの世話なんかもしていたことがあったから、日太刀王の情報をこっそり教えてもらったりもしているの。

 ちょっと変わった人だけどね。

「ごきげんようママ。もう女神様は見つかった?」

 この人は相変わらずね。

「あなた、いい歳してまだ私とママごっこなんてするの?いいかげんうんざりなんだけど?」

「そんなこと言わないでママ。ボク、何でもいうこと聞くからさ」

 彼女は私をママにして勝手にママごっこを始めてしまうの。
 困った人だわ。

「私は今、各地に伝わる叡智の女神の神話を追っているんだけど、まだ収穫はないわね。それで、あなたは何か情報持ってきたの?」

「うん、ママのために、ボク、いっぱい頑張ったんだよ。聞いて」

「東の国で、叡智の女神関係の儀式をやってるのはママも知ってるよね?叡智の女神が、戦争に行く兵隊たちに自分の力を分け与えたって伝説を今でも再現しているっていうやつ。久しぶりに、その儀式で女神役をやり遂げた女性が出たみたい。しかも、その子はまだ女の子なんだって」

「へえ、あのヤバい儀式を女の子がねえ。それはすごいけど、私と何か関係があるの?」

「えへへ、その子がね、ママが探しているエリシャっていうエルフの人と知り合いみたいだよ。ボクの魔道獣の力で確認したから間違いないよ」

「ふーん、あなたの魔道獣の能力は確か他人の生体エネルギーから記憶を読み取るものだったわね。彼女の持ち物から辿ったの?」

「うん。東の国に、彼女が着ていた服が残っていたんだ。そこに彼女の生体エネルギーが残っていたからね。服に残ってた生体エネルギーが少なかったから少ししか記憶を辿れなかったんだけど」

「そうなんだ。それはよかったわ。それで、エリシャの住んでいるところはわかったの?」

「正確にはわからなかったんだ。ごめんママ、ゆるして。でも、大体のところはわかったよ。ボクのスマートボードの地図をみて。この辺りにいるよ」

 ローラシア大陸の帰らずの森か。
 たずねびとのエルフさん、あなたそんなところにいたのね。

「ねぇ、ママ、ボクがんばったでしょ。だからいっぱいぎゅうして。お願い」

「仕方ない子ね。ほら、ボクちゃんおいで」

「わあ、うれしいママ。ありがとう。いっぱいハグして。ぎゅうして。あぁ、ぎゅう気持ちいいよママ。ふわぁ、ママの身体柔らかくて気持ちいいよ。もっとして。もっときつく抱きしめて」

 とろんとした目で私を見上げておねだりしてきたから、頭をなでなでしてあげたわ。
 かわいい顔してるけど、この人結構いい歳したおばさんなのよね。
 まあいいか。

「ありがとう。今日は特別にキスしてあげます」

 ちゅっ。

「わあああ、ありがとうママ。大好きだよ」

「うふふ、そしたらボクちゃんはまた情報を集めなさい。私はエリシャに会いに行くわ」

「うん、ボク、がんばるよ。そしたら、またボクのこといっぱいいっぱいハグしてねママ」

 何で私がママなのかよくわからないけど、私の味方なら許してあげるわ。
 味方なら、ね。
 うふふ。

 今回も読んでくれてありがとう。
 また読みに来てね。
 絶対よ。
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